魔女の意志を継ぐ者
主要登場人物
精霊都市 プレリュード
●ウル・フリューゲル
プレリュードの王女。光の魔力を持つ。少し弱気な性格の女の子。
●セレス・ウォーターベル
ウォーターベル家当主兼守護精霊統括。水と治癒の魔法を使うお姉さん気質の女性。
使用武器・・・水琉硝華という名の槍。
●ルージュ・スカーレット
スカーレット家当主、守護精霊の一人。火と身体強化の魔法を使う。
使用武器 ・・・焔と神楽、2本のレイピア。
●ヴェール・シルフィード
シルフィード家当主、守護精霊の一人。風の魔法を使う、誰に対しても喧嘩腰であるがウルに対しては甘々。
使用武器・・・深空霧塵、2本の短剣。
●シャル・クロノス、メア・クロノス
時の守護精霊、シャルが主に攻撃魔法を使い、メアが防御魔法を担当している。二人で守護精霊をしている。
●レイラ
宝物塔最上部に監禁されていた闇属性の魔力を持つもう一人の王女、ウルの姉にあたる。
●ミナト
時の神殿の守護を任されている魔法人形。レイラとは深い関係。謎が多い。
敵陣営
●ノエル
血と魂への干渉を行う魔法を使う上位の悪魔の一人。
●バルゴス
炎を扱う上位の悪魔の一人。
時は進み、あの悲劇から100年余りが過ぎ廃れた都を囲うように各々の種族の住処は発展していった。
そしてここは北の山と東の森のちょうど真ん中にある一つの家があった。
「おーい!ミナトさん!さっさの修行しようぜ!」
「そんなに慌てると危ないですよ、ミハル様。」
「ふふっ、今日はミナトを負かせることが出来たら特別にこの私が相手をしてあげるわよ。」
「母さんが!?よぉーし頑張るぞ!!」
「ミナト、もうミハルもだいぶ強くなった。手加減はなしで大丈夫よ。」
「レイラ様がそうおっしゃるなら。本気で行きますよミハル様!」
ミハルと呼ばれる少年が自身と同じくらいの長めの棒を片手に戦闘態勢を取り
「身体強化」
「身体強化ですか、いいですよ!チェインバインド!」
「残念!それは何回も見てるよ!これならどうだ!アクアライン!」
「っ!水の糸をこうも無数に複雑に。これで私を止めたと思うなら甘いですよ!!」
「サンダーレイ!」
「安直ですね、それでは当たりは。っ!くっ!」
「勝負ありだ、ミナト。」
ゴッとミハルの棒がミナトの腹を捉え、身体をねじった脚が顎に一発入る。するとパチパチと手を叩く音が聞こえる。
「流石だわ、ミハル。あれは外したと思われる雷をアクアラインに走らせてミナトの動きを一瞬止め、強化で強化された棒と蹴りで一蹴なんて凄いわ。ね?ミナト」
「はい、してやられました。」
「よっしゃ!!じゃあ母さん!」
「ええ、久しぶりの運動だから間違って殺しちゃったらごめんね?」
「いや、それはダメでしょ。」
「そこまでしないとダメよ、私を超えるということはそういうことだもの。ミハル、私に勝てたらこのマルファンクションをあなたにあげる。それから大事なお話もあるの」
「いいぜ、その鎌をくれるならなんだってやってやるぜ!」
「よぉーい、はじめ!」
「身体強化!」
「いいわ、一旦は打ち合いを楽しみましょう。」
数十手の打撃をいとも簡単にいなして再び距離をとるミハル。
「はぁ、はぁ。さすがだな、母さん。」
「私の反撃を傷一つ作ることなく躱したのは偉いわ、だけどもう少し体力をつけるべきじゃないかしら?」
「俺のが若いのにそれ言われるのキツいなー笑」
「私はミナトと色々旅をしていたからね、今のミハルよりは体力あるわよ。」
「なら、見せたことないの見せてやるよ!」
「(ん?ミハルの周りの魔力が異質だわ。魔力が高められている?)何を見せてくれるのかしらね!」
「(あれはミハル様の固有魔法。さぁ、レイラ様はどう対処するのでしょうか。楽しみですね。)」
「身体強化!」
「それはさっき見たわよ!ミハル!!」
「ならこれでどうだ!」
そう言うと、ミハルの周りに数十本の氷の刃と同数の雷の矢が出現する。
「!?アイシクルランスとサンダーアローをあんなに、、、」
「いくぞっ!」
勢いよく地面を蹴り、一気に距離を詰める。
「それだと、このマルファンクションの前では意味を成さないことを教えてあげr」
「なにもさせないよ!スクリムストーム!!」
レイラの足元から風の竜巻が巻き起こる。
「くっ、風で前がっ。」
「流石ですミハル様、レイラ様の持つマルファンクションは目に映ったものに対しての効果を発揮する魔法なので、その対処は素晴らしいです。」
「それなら!」
鎌に魔力を乗せ風を切り裂き、体勢を整えるも
目の前に無数の氷の刃と雷の矢が迫る。
「誤りを正せ!マルファンクション!!」
目の前の魔法が跡形もなくなるもその瞬間、懐にミハルが見える。
「魔法の射出の瞬間に身体強化で突っ込んできたのね!それでも惜しいわね!」
振り上げた鎌を勢いよく振り下ろす。
ミハルを捉えたと思った鎌は木の枝によりミハルには届いておらず止まっていた。
「武器強化!?けどマルファンクションで魔法は消したはず!!うわっ。」
ミハルは鎌の斬撃に強化した木の枝を滑り込ませ、自身は身を低くしレイラの足を掬い、予め用意していたもう一つの棒を突き出し
「チェックメイト!どうだった?母さん。」
「やられた、私の負けよ。強くなったわね、と言うよりあれはなんなのよ、身体強化に武器強化、スクリムストーム、アイシクルランス、サンダーアローって五つのそれも属性も違う魔法を同時に展開するなんて。」
「あれはですね、ミハル様の固有魔法であります。五星魔法です。効果的には同時に五つまでの魔法の行使が可能になるというものですね。」
「それ、反則じゃない?」
「維持には魔力を消費しないんだよ、発動時にごっそり魔力を持ってかれるくらいで。」
「それだとミハルの魔力量はかなり高いことになるけど。」
「はい、そういった修行もしておりましたので必然だと思いますよ。」
「あなた、一体息子を何に育てる気なのよ。はぁ。それよりミナト、少しいいかしら?ミハルは先に帰っててくれる?」
「はーい。」
「どうかしましたか?レイラ様。」
「ミハルの成長も見れた、マルファンクションも継承する。それに伴って時は動き出すものだと思ってる。だから私が動けなくなる前に行かないといけないところに行こうと思ってるのだけど、今日の夜からいける?」
「行先は、ティアハート領ですか。」
「そうよ。明後日はミハル誕生日だからそれまでには帰りたいってとこね。」
「それなら一回だけ往復の転移魔法陣がありますのでそれで参りましょう。」
「ええ、わかったわ。そろそろ戻りましょう。」
「遅くなってごめんなさいね、ミハル。今からご飯の用意するわね。」
「あーい、洗濯畳んでおいたらからー。」
「ありがとうね。」
「今日か明日、どっか行くの?」
「んー?どうして??」
「いや、そんな感じがしたのと、なんかいつもよりご飯が豪華っぽいから?」
「え!?あ、これは今日ミハルが勝ったご褒美だから!」
「ふーん、で、ミナトどうなの?」
「明後日のミハル様のお誕生日には帰るって言ってましたよ。」
「やっぱり。」
「ちょっと!ミナト!!なんで先に言っちゃうのよ!!」
「どうせバレますもん。」
「まぁ、そういう事だからお留守番頼める?ミハル。」
「ん、別に大丈夫だよ。行ってきなよ。」
「急だけど、今から行ってくるわね。行きましょミナト。」
「え、飯も食べてかないの?」
「少しばかり時間がかかるかもだからね、ミハル、ご飯食べたらちゃんと寝なさい。明日起きたら」
「ちゃんと歯を磨くことー、ご飯を食べることー、危険な遊びはしないことー、東の森には入らないことーでしょ?」
「もう、ミハルったら。でもそういう事わかった?」
「分かってるよー。じゃあ行ってらっしゃい母さん。明後日の誕生日期待してるよ。」
「それは任せて、じゃあ行ってくるわね。行くわよミナト。」
ーーーーーー
北の山脈、一角
「こちらです、レイラ様。」
「さぁ、参りましょう。」
ーーーーーー
廃都、プレリュードより南西に位置する小さな村
ティアハートの名を冠する貴族の現領主、ユキ・ティアハートが今日も村の人々と共に何の変哲もない日々を暮らしていた。
「すまない、ヨチを知らないか?」
「ユキ様、ヨチルク様なら村の外回りの警護しているんじゃないですかね?この時間は。」
「ありがとう!行ってみるよ。今日も平和だな、魔力も満ち溢れている。これもあの方のおかげだな。」
人族には無縁の魔力がここには溢れている。所々に魔石が埋め込まれた箇所があり、手をかざすと水が溢れ出していたり、魔石の火を使って料理をしていたりと、小さな村でありながら活気に溢れていた。
そんな日常の風景を眺めながら外の方へ向かって歩いていると門の方から一人の青年が走ってくる。
「ユキ様!いい所に!!」
「どうした?」
「先程、侵入者の反応ありと外の監視者から連絡がありましたので対処を開始したいと思います!」
「わかった!君は村の戦えるものを出来るだけ集めて正門へ!僕は先に行く!(ヨチ、あまり動かないでいてくれよ。)」
「それじゃあ、手筈通りに。」
「御意。」
「ヨチ!!」
「ユキちゃん、なんでここに!」
「ヨチに会うために歩いていたら敵襲の話を聞いたから来たってとこ。」
「なるほどね。」
「あとで数人援軍が来るよ。僕も戦うしヨチ援護よろしくね。」
「あんま無茶しないで欲しいけどな。まぁ、なんかある時は俺が守る。」
「頼もしいなぁ。」
「来たぞ、足音は二人。だが一人は村の後方へ移動中だ。」
「おい!ニョリネ!いけ!それから塀にいる数人に援護に向かうよう伝えろ!」
「了解にょり!」
「さぁ、行くよ!」
「あぁ、ロードオブ・ティアハート!!」
ヨチルクが片手の盾に剣を叩き当てると魔力の波動が広がり周囲の人々の能力が向上する。
ユキが背に背負った大剣を抜くと周りと腰にぽわんと狐尾と火の玉が浮かび上がる。
歩いてくるその人物は大きな鎌を振り上げ駆け出してくる。
「ユキ!!」
「任せろ!」
「一人だと厳しいんじゃないかな?」
「なにっ!力負けした。」
「大丈夫か?」
「あぁ。」
周りに浮かぶ火の玉の光源が一段階小さくなると共にユキの身体の傷が癒えていく。
「ストレングスエッジ!」
「ありがとう。」
「弓矢部隊、ユキの攻撃に合わせて矢を放て!!」
「防衛ってのはそうでなくっちゃね!ウォータープリット!!」
「隙ありだ!!」
「ここで来るのはバレてるよっと!」
鎌の柄の部分で大剣の面を弾き、体勢の崩れたユキの頭上に鎌を振るう。
「させるか!」
ヨチが盾で攻撃を防ぎ、反撃に出る。
「俺が立っている限りユキにも誰にも手は出させない!」
「言っていることだけ立派でも行動で示さないといけないんじゃないかしら??」
「くあっ!!」
「ユキ!!」
ヨチの盾を足蹴に隣のユキへ強い打撃が入る。
「ちっ、やっぱり強いな。」
木々の隙間を縫うように走る影。
「追っ手は、五人程ですか。さて、一番手は。」
「これより先は行かせないにょり!!」
「ニョリネさんですか。素晴らしい采配ですね。こちらは合格ですね。」
「え?どういうことにょりか?」
「私の方は戦闘をする予定ではなかったので、それにヨチルク様のバフを受けた上後続に四人程連れてこられてますよね?ニョリネさんの固有魔法があれば随分と長い継続戦闘が可能になりますので消耗戦になります。それではジリ貧ですのでここで合格を出させて貰うことにしました。」
そう言うとミナトはフードを取り顔を見せる。
「っ!!師匠だったにょりか!」
「師匠呼びはやめてくださいっ、恥ずかしいので。」
「ん?ならミナト様、ようこそにょりよ!!向こうに戻るにょりか?」
「はい、恐らく向こうは戦闘になっていると思うので見に行きましょう。」
そう言ってニョリネを含めた六人で歩いてもう一人の方へ戻るのであった。
「ユキっ!」
「妖艶で半妖の力よ!俺に力を!!うおぉぉぉ!」
「無作為に接近するのは死を意味するわ、よっ!」
「策なしじゃない!!」
横に薙ぎ払った大剣の刃の向きを縦に変え面の部分で女を弾き飛ばす。
打ち合わせをしていたかのように飛んだ先にヨチルクが待ち構えていた。
「おらぁっ!!」
「いい連携!だけどっ!」
鎌で剣を抑え体勢を整え、形勢を逆転させたかのように見えたが後ろからユキが大剣を振り下ろす。
「っ!味方ごと行く気か!?」
「ヨチーー!!」
「くっ、剣で私の鎌を!!」
「これで終いだ!!」
するとちょうど、その場面にミナト達が現れ、女はそちらをギッと見つめると大きな声で
「誤りを正せ!マルファンクション!!」
そう叫ぶとパリンと音と共にヨチ、ユキ、その場にいたもの達の力が大幅に落ちるのを感じ剣から鎌を抜き、ユキの大剣での攻撃に応じる。
「バフが解けようが、このままの勢いで叩き潰す!!」
「させない!!」
一瞬押し返し、鎌と柄の部分を切り離し、柄の部分で大剣を横から押し流し軌道を変えた。
ドゴンと音を鳴らし地面へ大剣が突き刺さる。
「はぁ、はぁ。これで終わり。」
「くそっ!負けた!!」
「いや、でも。」
とユキが女の肩へ指を差す。
「傷、付けられちゃった。私の負けだわ。強くなったわねヨチルク、それにユキちゃんも。」
「お疲れ様です。レイラ様。それで合否は?」
「もちろん、合格よ。当たり前じゃない。私をここまで追い詰めたんだもの、それよりあなたの方の戦闘してない状況に疑問を抱くわね。」
「それに関しては説明しますよ。それより」
「かったぁぁぁ!レイラに勝った!」
「やった!俺たちがやったのか!!」
「最後のはすごく良かったわよ。けど、ここからはアドバイスと言うより反省タイムね?」
「容赦ないですね。」
「まず初めに、ヨチ。バフをかけるならもっと多くの人にかけなさい、抑えていたでしょう?相手が私だったから?今回はそうだったかもしれない、けど次は私じゃないのよ?それで手を抜いていたら意味が無いでしょ。次にユキちゃん、ヨチのバフがなくても自身の半妖の力をもっと扱えるようになって長時間での戦闘が出来るように心がけなさい、まずは筋トレして体力をつけること!ここの領主で守られる立場かもしれないけど戦場に一度でてしまえばそうもいかないことを心に留めておいて。じゃあ、はい、ミナトそっちの説明をお願いできるかな?」
「はい、まずユキさんの采配でロードオブティアハートを受けたニョリネさん以下四名が私の方へ来ました。その時点で消耗戦になり私の方が分が悪いと思いました。理由はニョリネさんの固有魔法にあります。彼女の固有魔法は魔力簒奪です。その効果は全ての魔法攻撃に乗り、与えたダメージの30%を魔力へ変換し自身の糧とするものです。発動にはそれなりの魔力を持っていかれますが、ロードオブティアハートのバフの影響で使用する魔法の必要魔力を半減させるという効果のおかげで継続的な戦闘が可能となるわけですから時間をかければこちらが不利になると考え戦闘せずに合格にしたというわけです。」
「なるほどね。」
「そんなことより!レイラ!今回はいつまでいるんだ!?一週間か?それとも一ヶ月か!?ユキ!宴の準備を、」
「…。」
「すまないな、ヨチ。今回は長居はしない。居ても夕刻くらいだな。今回はお前たちに伝えないといけないことがあってきただけだし、明日は私の息子の誕生日だからな。」
「え、うそだろ。なんで!!」
「それは止まっていた時間が動き出すピースが埋まり、事態は動き出すからだ、お前たちからしたらずっと動いていた時間かもしれないが我々精霊からしたら今はまだ100年前と同じなんだ。」
「それじゃ、レイラが俺たちをあの街から救ってくれたのも、一緒になって修行したのも全部、全部!レイラたちにとっては止まっていたも同然なのかよ!!」
「ヨチ!!」
「そう言われても仕方ないかもしれない。けどお前が思うよりこの世界は闇に満ちていていつ呑まれるか分からない。そこで私の息子に全てを託すんだ。随分と重い想いを託すことになるが。それでもそうしないと本当の平和は訪れない。それにお前たちにも手伝って欲しい。いつか私の息子が仲間を連れてここに来る時がある。その時、手を貸してやって欲しい。」
「なんで、俺たちが。」
「それはあの子が私の意志を継ぐものだからだ。魔女と呼ばれた私の未来へ賭けた意志を!だからって訳じゃない、納得がいかなければその身を持って試して貰ってもいい。お前たちよりは確実に強いだろうからな。」
「なんで俺がそんなこと。」
「人間も、精霊も、いやどの種族も手を取り合わなければ闇には、厄災には手も足も出ないだろう。それほどまでに奴らは強大だ、だから手を取り合え!背中を任せろとはまでは言わない、だが目標を同じに据えて共に戦え!100年前の我々には出来なかったことを今度はお前たちがこなすんだ!自分たちの手で未来を掴み取れ!そのためにここまでやってきたんだ!」
「だが!!」
「ヨチ、頭を冷やせ。レイラ様の言うことに一々反論するな。分かりました、レイラ様。少し考える時間をください。」
「チッ!!」
と誰もいない方へ走り去るヨチルク。
「時間は有限だが、ない訳では無い、よく考えて私の息子を信じてやってくれ。」
「それではレイラ様、少し休んだら戻りましょう。」
「そうだな。ユキちゃん、ヨチの事を頼んだよ。」
「はい、お任せ下さい。」
「私は当分来られない、こんな別れ方をしようとは思ってなかったんだがな。まぁ仕方ない。それもヨチの選択だ。お前たち、迫害されてきた者たちを導いたのはこの私で選択肢を決めて投げてきたのも私だ、だが今回はお前たちでその選択を決める時だ。手伝うもよし、自分たちの力で平和を勝ち取るという未来を取るもよしだ。そこはお前たちに任せるよ。」
「はい。」「にょり。」
ーーーーーー
数時間後
「では我々は帰るとするよ。」
「少しの間ですがお世話になりました。」
「こちらこそ、聞きたいこといくつも答えてくださいありがとうございました!」
「ではな、次会うときは私の息子とだろうからな。」
「お元気で、レイラ様。」
ミナトが手をかざすと足元の魔法陣が浮かび上がり、光に包まれる二人。その時、ザッと二人の前に現れる影。
「レイラ!俺は自分の選択を信じる!レイラの息子とは剣を交えて確かめるよ!今まで本当にお世話になりました!ありがとう!さようならだ!レイラ!!」
「全く、お前のことは結構好きだったんだぞ、ヨチルク!!ユキ!ニョリネ!お前たちも日々の鍛錬忘れないでね!!バイバイ!」
ヒュンと二人の姿がその場から消える。
「行っちゃったね」
「そうだな。でもこれでよかったんだろ?」
「そうだね、俺たちがやることは今までもこれからも変わらないだろう。だから待とう。その時が来るまで。」
「あぁ、」「にょり!!」
ーーーーーー
「結構遅くなっちゃいましたね。」
「もうミハルは寝ちゃってるかな?」
ガチャ
「っ!レイラ様、これ。」
「ふふ、ありがとうねミハル。」
微笑むレイラの目の先にはテーブルに並べられた食事があった。
「ミナト、これを食べたら引き継ぎ作業に入るから一人にしてね。」
「はい、分かりました。ではお休みなさいレイラ様。」
「ええ、お休みなさい。マルファンクション、私の意志ごと貴方の想いはミハルに託すわね。今までありがとう。」
鎌が紫色に輝き始め、その光がミハルへ飛んでいき定着し、鎌自体もミハルの隣へゴトッと移動する。
その瞬間、バキバキバキと音と共にレイラの身体は老いが進み、顔も身体もしわしわになっていた。
「み、ミハル。私の想い、そして母様の想いはあなたに託したわ。あとは任せたわよ。」
その様子をミナトは目撃し、魔法人形にはあるまじき瞳からすうっと雫が流れる。
「レイラ様。ミハル様のことはお任せ下さい。我がお守りします。」
そんな出来事があったのも知らずにすぅすぅと深い眠りにつくミハルだった。
拙い文章ですがここまで読んでいただきありがとうございます。
次回の展開もお楽しみ頂けるように頑張りますので
これからも応援のほどよろしくお願いします。




