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墜ちる白き都



「聞きたいことって?なに?」


「ルージュちゃんの記憶を見させてもらったんだけど、テトラ様が言った言葉、これに間違いは無い?」


「他種族と争うのはダメだよってあの?」


「そう、それだわ。」


「間違いは無いと思うんだけどどうして?」


「私がお母様から預かった手記には全く逆のことが書き記されていたの。」


「お母様、、、って!!あなたがレイラなの!?」


「え、あ、そうよ。紹介が遅れてごめんなさいね。」


「はぁ。そゆこと。それにあなたはミナトよね?」


「はい、メア様お久しぶりでございます。」


その会話にシャルの身体がピクっと反応する。


「それで、レイラ、その手記にはなんて書かれているの?」


「この世界には他種族、エルフやドワーフ、人間がいる。けどこの三種族は精霊の功績にあやかって自らの領土を手に入れたことが後々わかった。だからいずれプレリュードにも手を出してくるかもしれないから十分に気を付けるようにと。そう書かれているわ。」


「全く違う。」


「記憶の操作、だろう。そんな魔法が存在すると禁書に書かれているのを見たことがある。ただし使用するには膨大な魔力と魔法に詳しくないと出来ないとそうも書いてあった気がするが。」


「シャル!もう起きて平気なの?」


「ああ、だいぶマシになった。それよりも説明してもらおうかミナト、それに魔女。」


「そう、そう呼ぶということは私の存在は聞かされていたのね。説明、どこから説明すればいいかしら?」


「全てだ!お前たちはここで何をしている。ここには許可した精霊しか入れないはずだ。魔女お前は許可されていないはずだ、それにその鎌はなんだ。」


「私たちは、」


「ミナト。私から説明するわ。私たちはここで今起きてはならないことを防ぐため行動をしている。許可はミナトが臨時で出してくれてる。そしてこの鎌はミナトの創造主であるメイル・クロノス様が私用に調整してくださった魔鉱具のマルファンクション。これで説明は十分かな?」


「起きてはならないことだと?もうすでにこんなことが起きているだろ!」


「それは。裏切り者が誰なのか分からなくて対処が遅れてしまったことは謝るわ。でもここであなたたち守護精霊を誰1人失うことはそれ以上の惨事を招きかねないとお母様の手記には書かれていたの。だからあなたたちを救った。」


「ここには、ルージュと俺らしか居ないが。っ!ウルは!!」


「私の魔力拡大感知で追っている、今は東の門を抜け森を走っているわ。」


「早く連れ戻せ!ウルにはヴェールを探すように言ったがさっき一人強い魔力を持った奴を逃してしまっている!」


「なんですって!?今すぐウルのところに転移魔法を!!」


「なりません。私の転移魔法は設置型ですので移動させると術式が解けてしまいます。それに。」


「まさかっ!セレスが危ない!!ごめんなさい、シャル、ウルは後回し!ヴェールに任せるしかない!」


「なぜだ!セレスは守護精霊の統括だろう!まだ魔力も感じられる戦えるだろう!」


「だめ!セレスの治癒能力がなければ助けられる命も助けられない!!」


「お兄ちゃん!今はセレスを!ミナト、レイラさん姫様の詳しい位置情報が分かれば障壁魔法を飛ばせるかもしれない!」


「分かりました。特定してみます。その前に、、、。」


「くそっ!ウル、無事でいてくれ。」





ーーーーーー


南の門


「だめ、やめて。虹の癒し手(オーロラヒール)


「これは、広域回復魔法。セレス様!危ない!!」


「えっ。」


セレスに迫る魔獣の牙


「ふん!」


「あ、お父様?」


「無事か!セレス!!おい、そこの二人!セレスを連れて下がっておれ!」


「「はい!」」


「待って!お父様!!だめ!!離して!」


「いけません、セレス様!」


「お主らの相手はこのわしがしてやろう。かかってこい!」


「はっ!老いぼれが何を言ってやがる!この数だぞ!!やっちまえ!」


「ふん!この程度軽いのぉ。わしは倒れておらんぞ!!」


《とる、トル様、ガストル様、聞こえますか?》


《誰だ!?》


《ミナトです。魔獣の数が減って念話が届くようになりました。今からお伝えすることをしていただけますか?》


《ふ、魔法人形か。何用だ。》


《セレス様を指定した位置まで連れてきて欲しいのです。今の我々にも今後の我々にもセレス様の存在は必須なのです。どうかお願いします。》


《それでセレスは必ず助かるのだな。》


《はい、必ず。》


《なら、連れていくようにしよう。恐らく魔法での転移だろうが発動までに時間がかかるのであろう。わしが残ってやろう。これは貸しだ。絶対にこの状況を打破する策を講じ勝ってみせよ。これがわしからの願いだ。》


《かしこまりました。必ず守護精霊様の皆様と共にプレリュードを復興させてみせます。それではどうかお願いします。》


「ぼうっとしてんなよ!おっさん!!」


「ぐふっ、大事な話をしておるのにせっかちな奴らだ。おい!セレスを門の近くへ持っていけ!!」


魔獣に足を噛まれ爪で身体を切り裂かれてもなお立ち続けるガストルはセレスを連れる兵士に指示を出し、それ以上先には誰も行かせることはなかった。


「お父様!!いやです!!お父様も一緒に!!」


「セレスよ、お前は私たちの自慢の娘だ。だから生きろ!お主が生きていれば未来で精霊や協力してくれるもの達の役に立つ。だから生きろ!愛しているぞセレス。」


「いやぁぁぁぁぁぁ!!!!」


「最後の遺言は終わったか?おっさん。ならそろそろくたばってくんね?」


「その前に一つ、貴様らから魔力を感じるのはなぜだ?」


「あーそんなことか?それはな!これだよ!!」


服をグイッと引き上げると心臓の位置にキラキラと光る石が埋め込まれていた。


「それは。精霊石なのか?!」


「ご名答!俺らは最初の実験体、精霊石を埋め込むことによってその精霊が持つ魔力や身体能力を自分のものにできるようになるって代物だ!ごふっ、もう限界が来たみたいだけどな。だからさっさと死ね!精霊!!」


「ふ、なるほどな。そういう事か。あのジジイそんなことまでしておったのか。あやつもお前たちも精霊に喧嘩を売ってタダで済むと思うなよ、いずれわしの娘たちがお主らに鉄槌を下すだろう。後悔する準備をせいぜいしておるのだな!!ハッハッハッ!」


人間の振り下ろした剣がガストルの身を切り裂き、辺りが血の海となる。


「セレス様!どうかお元気で!!我々も少しでも時間を稼ぎに行きます!!」


「だめ!やめて!みんな助からないとだめ!嫌だよ。お父様。」


そう言い意識を手放した。



ーーーーーー




街中を走り、門へと手を付き息を整えるウルの姿があった。


「はぁ、はぁ。運動はしておくべきだった。ここから抜けれるかな?」


「誰だ!?」


「ご、ごめんなさい!でも通してください!!」


「あっ!そっちは危な、って!ウル姫様!?ダメですよ!」


「危ないのは分かってる!でもヴェールを連れてくるようにって言われてるからお願い!!」


「ヴェール様を?誰からです。」


「シャルよ!シャル・クロノス!」


「時の守護精霊様が。しかし外は魔物で溢れております!この辺りはヴェール様が一掃してくれましたがどんどん数が増えてます!ここでお待ちになられてはどうですか?」


「それじゃ間に合わない!」


「では我々も!!」


「あなたたちはここでみんなの避難誘導を!これは命令です!私を行かせて!」


「わ、分かりました。いつもは優しいウル様にもそういった一面があるのを確認できて嬉しいです。ではお気を付けて。」


「ありがとう。私は大丈夫。みんなに支えられてるもの。頼りにしてますね!」


一礼をし、門の扉を開き見送るシルフィード家の一人は真っ直ぐこちらを見ていた。


「ヴェール!どこにいるの?早く戻ってきて!」






「ちっ!うぜぇな!!」


二本の短剣、風の魔法を駆使し目の前に溢れる魔物を倒しながら進むヴェールは一旦戻るべく奔走していた。


「あぶねっ!」


キシャアアアと虫の魔物に囲まれてしまい立ち止まってしまった。


「くそっ!こんなにどっから湧いてきやがる!!」






「はぁ、はぁ。ん?この音。誰か戦ってる?!ヴェール!!」


彼の姿を遠くで見つけるが、魔物が彼を囲っているのをみて


「うそ!だめ!!でも私にはなにも、できな、、」


ここに来るまでに渡された弓を手に持つも、ガタガタと手が震え照準も合わない。


「やらないといけないのに、だめ。勇気が、誰か!みんな。助けて。」


すると、弓が白く輝きだし頭に声が響いてくる。


《ウル、キミはウルだよね。ぼくの名前は、■■■よく聞いて落ち着いてキミは一人じゃない。必ずぼくが会いに行く。待ってて、でも今は彼を助けないといけない。弓を構えて、自分の中の魔力を矢のイメージにして、ゆっくり弓を引いて放つんだ。》


「でも当たらないよ。」


《大丈夫、キミの魔力は悪しきものを撃ち貫く。絶対に、そう言ってたんだアーサーが。だから自分を信じて!!》


「お、とうさまが。うん!わかった、やってみる!ありがとう。」


「おらっ!くそっ!やべっ!!まだ一匹残ってやがっ!」


「行って!!」


その瞬間、振り返ったヴェールの目の前で魔物が貫かれその場に倒れる。


「え、誰が。」


「ヴェール!!こっちに早く!!」


「え!?え!?えーーーー!?姫さん!?何やってんだこんなとこで!!」


「シャルたちが危険なの!お願い!!一緒に戻って!!」


「わーったから!こっちに!走るぞ!!」


「え、あ。うん。って!速ーい!!!」


ヴェールはウルを抱え全速力で森を駆けていく。





北の門に着く二人だが


「あれ?いない??どこに、」


「あっちから複数の魔力を感じる。行ってみるぞ!」


ヴェールは神殿のある方角を指差す。


「ええ、分かった。」






ーーーーーー


時の神殿 内部



「え?み、みんな?」


「おい!姫さん!どこにって。なんだよこの状況は!ルージュ!セレス!おい!なにがあったんだよ!シャル!!」


「うるさいのが来た。ウル姫様無事だったか。」


「私は大丈夫だけど、メアは?何があったの?」


「また後で話すよ。それよりも」


キッとある二人に目を向ける。


「ミナト。お願い。」


「分かりました。発動。」


ウルを含め守護精霊全員の下に大きな魔法陣が展開される。


「ヴェール!!その二人を止めろ!!」


「あ?ちっ、わーったよ。っ!!なに!?」


レイラの胸元でヴェールの剣が弾かれる。


「レイラ!」


「レイラ様、そろそろ、」


「ごめんなさいね、ここであなたたちは封印させてもらう事にしたわ。ミナト、時空停止まではあとどれくらい?」


「詠唱終了後すぐにでも。」


「わかったわ、ありがとう。」


「レイラ、どうしてこんなことを。まだ外には助けを求めてる人たちがいるのに!」


「ウル、今この状況をよく見て。この国で一番強いとされている守護精霊がこの有様。今まともに動けるのはあなたとヴェールのみ。この事態を引き起こした悪魔たちは傷一つ負っていない、そんな奴らに今のあなたたちを送り出してみすみす失う訳にはいかない。それなら私たちはお母様の意志に従ってウル、あなたと守護精霊たちを未来へ残す選択を取る。ここへの道は残っているかもしれないけど辿り着けるものはいないと思う。多くの精霊の生命が奪われてしまう、それでもあなたたちはこんな所で失われていい存在じゃない。遠い未来、きっとあなたたちを導く者が現れるその時まで待っていて。ミナト。」


「はい。」


「「母なる大地よ、聖善なる星々よ今ここに集いて我らの力となれ。悠久の時を越え彼等を導く(しるべ)となり時を、空間をその全てを停止せよ。」」


「ミナト!!お前は時魔法を扱えないはずだ。その詠唱は無駄になる。」


「なりませんよ、シャル様。」


「我、ミナト・クロノスはメイル・クロノスの名に乗っ取り魔法の行使を宣言する。この時、この瞬間を軸とする時空を停める。」


「メイル・クロノスだと!?あの女が生きているのか!」


そう言われ、ミナトの口元がフッと笑みをこぼす。


「ウル、あなたがまた笑顔でいられるように。」


「レイラ!!だめ!会えたのにまた離れるなんて嫌だよ!!」


「時空間停止魔法、クロノス・フィリア!!」


大魔法が発動したのを確認するとその場を離れるレイラとミナトだった。徐々に停止していく中残された者たちは意志を語る。


「みんな、聞いて。私たちは無力だった。民を救うことすら出来なかった。それでも私は!またみんなが笑い楽しく過ごせるような未来を望む。そのためにプレリュードを襲った奴らの事は許さない!それに加担したエルフ、ドワーフ、人間も同様に。私は全てを取り戻すために未来で立ち上がる!この国の。いいえ、精霊の希望の光として!」


少しの沈黙の後、震えた手でレイピアを握り掲げ


「わ、わたしは。お父様とお母様の焔に誓って、ウル様をお守りします。」


「我らは時に誓おう。ウル姫様、その意志我らにも。」


「俺はこの力と風に誓う。お前らだけじゃ危なかっしいしな。」


「私は、今の私は何をどうすればいいのか分からない。」


「セレス、今は大丈夫。ありがとうみんな。何がどうなるかは分からないけどこんな未熟な私に付いてくれてありがとう。今できることはもう無くなるけどこの歌を。〜〜~♪」






ーーーーーー


時の神殿入り口


「魔法の発動、確認できました。」


「ありがとう、ミナト。あともう一つお願いね。」


「はい、よろしくお願いします。アクア様。」


『これで手伝うのは2回目、メイル様から託された願いはこれで終わり。あなたの言うことはもう聞かないでいいんだよね?』


「はい。」


『わかったわ。それで願いはこの神殿を隠すこと。違いない?』


「はい。お願いします。」


精霊の霧(ファントム・ミスト)これは精霊ですら認識が難しくなる、ほかの種族は認識、感知が完全に出来なくなる。これでいいかな?』


「ありがとうございます。アクア様。」


『これはメイルの願いだから感謝されなくていい。以降契約に乗っ取り、私はメア・クロノスの召喚精霊として行動する。それじゃあ。』


そう言い残すと虚空へ消えていくアクア


「これで大丈夫。その時が来るまで彼らが見つかることはないわ。それじゃあ私達も行きましょう。」


「はい。レイラ様。」




ーーーーーー


プレリュード地下領域


「これです。ロザリエ様。」


「ほう、これが。美しい。よく裏切ったわね。あの方より最大級の褒美が与えられることを喜びなさい。」


「はい、ありがたき幸せ。では行きましょう。」





「きゃははは、あの人はこれを欲していたんだ。この溢れ出す魔力、精霊石自体には干渉は出来ないみたいだけどこれだけの魔力が溢れていれば運用はいくらでもできる。きゃははは!」















この日、数時間の内に精霊は敗北し

東の森はノエルに支配され、西の坑道はバルゴスに

南の街を覆う闇も徐々に勢力を広げていき、プレリュードは闇に堕ちた。


だが、レイラの働きにより希望の光は未来へ託された。

彼らは再びこの地に光を取り戻すことはできるのだろうか。



























第一章完結しました。

物語はまだ続きますので今後のエピソードも楽しみにしていてください。


拙い文章ですがここまで読んでいただきありがとうございます。


次回の展開もお楽しみ頂けるように頑張りますので


これからも応援のほどよろしくお願いします。

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