五 奇跡の惑星
「空はとても暗かった。一方、地球は青みがかっていた」
ユーリイ・ガガーリン
太陽は巨大で高温の恒星であり、その強大な重力によって周りの惑星などを引き寄せ、太陽系を形成してます。地球もこの太陽系に属し、太陽の周りを公転しています。
太陽系が属する天の川銀河には、太陽のような恒星が他にも無数にありますが、地球以外ではまだ生物が見つかっていません。天の川銀河のような銀河は宇宙に約二兆個もあり、その数は地球上の人類の数よりも多いのです。
太陽は他の恒星と比べて特別に大きいわけではなく、平均的な大きさの恒星です。このことから考えると、地球も宇宙において特別な惑星ではないように思えます。それにもかかわらず、なぜ地球以外で生物が発見されていないのでしょうか?
生物が生存するためには、水が液体の状態でし存在する環境が必要です。惑星が太陽に近すぎると、水は熱で蒸発してしまい、逆に遠すぎると、水は凍ってしまいます。しかし、地球は太陽から適度な距離に位置しているため、水が液体のままで存在することが可能です。そのため、地球には広大な海があり、生命が生存できているのです。
太陽と地球の誕生について見ていきましょう。約46億年前、宇宙に漂っていた塵やガスが集まり、それが重力で押し縮められて「原始太陽」と呼ばれる天体が生まれました。やがて原始太陽の中心の温度と密度が高まり、水素が融合してヘリウムを作る「核融合反応」が始まりました。この反応によって、大量のエネルギーが放出され、現在の太陽が誕生しました。
その後、太陽の周りに残った塵やガスが集まり、微惑星と呼ばれる小さな天体ができました。これらがぶつかり合って合体を繰り返し、約46億年前に地球が誕生しました。当時の地球は激しい衝突のエネルギーによって表面が溶け、マグマに覆われた状態でした。その中で重い鉄やニッケルは地球内部に沈み、地球の中心に核が作られました。
地球の中心部にある核の温度は、太陽の表面温度とほぼ同じで、その熱によって地表の水分が蒸発し、水蒸気となって空に上がります。水蒸気は空気中で冷やされて、小さな水の粒になります。これは、寒い日に窓ガラスに水滴がつくのと同じ現象です。そして、その水の粒が空中の塵にくっついて雲ができます。雲の中の水の粒が大きくなると重くなり、雨として地上に降ります。こうして、水は地球上を循環するのです。
水は蒸発するときに周りの熱を奪います。 地球の表面に降った雨がマグマに触れることで、その熱が奪われて地表の温度が徐々に下がっていきました。冷えたマグマは固まって地殻となり、その上に降り続いた雨によって海ができました。
地表が固まった後も、地球の内部では放射性物質がエネルギーを放出しいるため、内部は高温のまま保たれています。この熱によって地球内部のマントルがゆっくりと動いていて、この動きが地球の地形や地質活動に大きな影響を与えています。
誕生したばかりの海は酸性で、生物が生きられる環境ではありませんでした。これは、地球内部から吹き出した塩素ガスが雨と一緒に海に溶け込んだためです。しかし、地表の岩石に含まれていたナトリウムやカルシウムが徐々に溶け出して、酸性の海を中和していきました。これは、理科の実験で塩酸と水酸化ナトリウムを混ぜて中和する現象によく似ています。
その後、大気中の二酸化炭素や窒素が海に溶け込み、雷や太陽の紫外線のエネルギーが加わったことで、アミノ酸や核酸などの有機物が生まれました。この時期の海は、アミノ酸が豊富な「生命のスープ」と呼ばれる状態でした。アミノ酸はタンパク質のもととなり、核酸は生物を作る設計図となります。
やがて海中に生物が誕生しましたが、当時は地表に有害な太陽の紫外線が降り注いでいたため、生物はまだ地上に進出することができませんでした。しかし、海中の植物は光合成を行い、光のエネルギーを使って二酸化炭素と水から有機物と酸素を作り出しました。この光合成によって、空気中の二酸化炭素が減り、酸素が増えました。さらに、この酸素が太陽の紫外線と化学反応を起こしてオゾンを生成し、やがてオゾン層が形成されました。オゾン層は有毒な紫外線を吸収するため、ついに生物が陸上に進出できる環境が整ったのです。
地球の海には多種多様な物質が存在していたため、生物が誕生し、進化することができました。そして、長い年月をかけて生物は進化を続け、ついに私たち人類が誕生したのです。生物が地球に存在しているのは、地球が多くの条件を偶然にも満たした結果であり、奇跡的なことなのです。