第44話 第4回HESKAL杯の開幕
さて、やりますか。
そう思い俺はパソコン画面を付ける。
今日はいよいよHESKAL杯当日だ。
夜音も流石に参加するということで家に戻って行った。
HESKAL杯は朝から昼過ぎまで長く行われる。
間ごとに練習したりインタビューをしたりする。
配信画面を付けながらでもいいが、敵の位置などを視聴者が教えるのはNGだ。
一番効果的なのはコメント欄を読まないという選択肢だった。
俺ももちろんコメント欄は読まないが、配信画面は付ける。
試合中以外は見ても良いということで、俺はそうする。
まだ朝10時なのに配信待機している人は3万人とすごい人数だ。
やはり注目が集まっているのだろうか。
開会の時間まで少し時間があるので、最初だけコメント欄を読む。
「こんしろ~!HESKAL杯4.5期生の白海ネスイです!」
ーきたああ
ーついに来てしまった
ーがんばれ!!
ーこれは応援するしかない
視聴者が皆応援してくれているようで俺はうれしい。
「ちょっと時間あるし練習するか」
今回一番新規なのが俺だ。
だからこそここで輝いてもっと注目を集めたい。
「エイム調子いいかなあ……」
ーいいねえ
ー良すぎる
ー全部当たってる
ーすげえ
ー絶好調
今日はそこまで悪くない。
エイムが結構な頻度で当たるのはいいことだ。
「さて、勝ちに行きたいな」
確かHESKAL杯で前回top3に入った人はPAD、いわゆるコントローラーでやらないといけない。
だがコントローラーにも良さがあるため、あまり縛りになってないような気もする。
現に1位連覇中の氷さんなんかが例だろうか。
「初戦から頑張りたいな」
今回のHESKAL杯は前年と同様のルールらしいが、
俺は初めて参加するということもあり事前にマネージャーさんから聞いていた。
HESKAL杯
競技種目は【end world】
マッチ数は6
キルポイント、順位ポイントの累計で順位が決められる
最終試合はキルポイントが二倍
まあざっとこんな感じだろうか。
規約なのもあったので目を通したが特に気にするようなことはなかった。
「あ、そろそろ始まるかも」
俺は横のモニターでHESKAL杯の配信を見る。
ただ、俺らのようなプレイヤー側の配信ではなく主催者側の配信だ。
『どうも皆さん?こんにちは!!』
司会はどうやらこの前コラボした光マナさんだった。
『司会の光マナと』
『実況兼解説のルナです』
実況側の方はルナさんというらしい。
テロップで2期生と出ていたので、夜音たちの同期だろうか。
『いよいよですよ。マナちゃん』
ルナさんが聞く感じで進行は始まった。
『やっぱり注目選手だよね』
『というわけでこちらです』
なんだか司会の立場が変わっている気もするが気にしたら負けだろう。
俺は黙って配信を見ている。
主催者側の配信画面では、注目選手がまとめられていた。
そして視聴者による予想ランキングもあった。
『一位はやっぱりネスイちゃんだね!』
マナさんが先に反応したようだ。
遅れてルナさんが
『急な1位上昇ですね。』
俺が1位に選ばれた理由としては
・エイム命中率鬼高い
・立ち回りがキレイ
・普通に無双してる
などと好き勝手に書かれていた。
まあ褒められて嫌というわけではないので素直に喜んでおく。
『そして2位が風山 氷 3位が春陽と続くね』
『やはり前年からの強者も居ますね』
そんな二人の雑談を聞いていると、
HESKAL杯用の鯖からカスタムコードが配られた。
いよいよ始まるようだ。
「さて、そろそろ始まりますか」
ーきたか
ー見せつけてやれ!
ーいけるいける
ー私の最強の推し
俺はコメント欄を最後に見てから、閉じた。
自分の画面では見れないようにしたのだ。
「勝ちます」
俺はそう宣言してカスタムコードを入れる。
もちろん視聴者にはばれないように入れた。
『ではそろそろ1戦目が始まりそうですね』
主催者側の配信でもルナさんが切り出した。
『だね。そろそろ始まるよ!!』
マナさんもそれに続く。
『ではカウントダウン!』
彼女らは息をそろえてカウントダウンを始めた。
『5』
『4』
『3』
『2』
『1』
俺はマウスをにぎりなおす。
どんなことにも緊張は付き物だ。
だがそれでも突き進む。
何があってもあきらめず前を向こう。
『スタート』
HESKAL最大規模の大舞台が幕を開けた。




