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第2話 トレンド

どうしようか。

VTuberに急になってほしいと言われた。


俺はまだ配信者としてやっていける。

高校もあるので、VTuberと配信者の両立は少ししんどい。

正体を明かしてVTuberをやるならまだ、出来るかもしれないが…



(正体をバラすのは少し嫌だな)



なんとなく夜音に配信者なのを知られたくないという気持ちのほうが大きかった。

今まで配信してたとか言うのはちょっと恥ずかしいからな。


そんなこんなで夜までずっと考えた結果、


とりあえず、配信しながらゲームでもするか。

そう思ってパソコンの前に座り、ゲリラ配信を始める。

視聴者と絡むと心を落ち着かせられる気がする。



「こんちゃー!」


アイコンは白い狼。

とある方から頂いたファンアートを使わせて貰っているのだが自分でも気にいっているくらい良い絵だ。

配信がついたのを確認して、俺が元気よく挨拶すると、


―よっす!

―こんちわー

―ゲリラ!?

―ゲリラ配信なんて珍しい

―雑談配信?

―そんなわけ



「今日も【world war】やるわ」


いつもどおりにVRゴーグルを付ける。

最近のVRゴーグルは視界の端にコメントが出るので

配信向けにも対応していてやりやすい。

別にゴーグルが無くてもプレイできるし、現役時代はまずゴーグルを付けてない。

ただ、最近は付けてやってる方が楽しいのだ。


「さて、雑談しながらランクしますか〜」


俺の配信の主流は、裏でゲーム配信をしながら最近のことについて話す。

まあ、よくある雑談配信にゲーム配信を裏付けしただけだ。


―何話しますか?

―やっぱあれやろ

―fpsといえば?

―トレンド出てたし

―あれ、上手かったよな

―ワンちゃんblancさん抜くかもね



やっぱり話題は夜音のことだった。

いや、プリームというべきか?

俺のチャンネルはFPS配信者についてよく話すので情報もよく飛び交う。


「見た見た。あの人、上手かったよね」


とりあえず、何も関わりがない感じで視聴者と話す。

ここで悟られたら即終了だ。


―あれはプロだろ

―正体知りたい

―プリームさんの部屋乱入事件ね

―乱入w

―あれ誰だったんだ?

―考察えぐいよね

―メンバー説はある

―でも声が違う

―声作ってる人なら地声でわんちゃん


やっぱりこんな反応なんだ。

俺はコメントを横目に見ながら、プレイに集中する。


今持っているのはリボルバー。

DPS、まあ言わば1弾目と2弾目の間の時間が結構長い。

そして、反動が若干大きい。だがダメージが高く、お気に入りだ。

前に敵がいるのが見えたので、しゃがんで物陰から狙う。


「居た!」


声と同時に撃たれた弾は相手の頭に当たる。

そして相手が下がるタイミングで一気に詰める。

さっと武器をサブマシンガンに切り替える。

そして照準を敵に当てて倒す。


「よし、残り4人か」


―さすが元王者

―あそこ頭当たるんだ

―サブマシンガン弾すべて当たっているし

―もはやチーターだな

―最強だ

―この世界に敵居ないやん

ーもともと居ないわ


「ん?」


キルログを見ると急に敵二人がやられていた。

そして残り人数が2人になる。

今銃声は全くしなかったのでサイレンサー武器だろうか。だが明らかに早い。


「相手、上手そう」


とりあえず、武器を構えて安全地帯まで移動する。




「わ!」


結構ダメージを食らってしまった。

でも、どこから打たれたかが分からない。


―え?

―どこ?

―わからん

―相手、強くね?

―相手エイムよすぎ


視聴者も同じ反応をする。


「あ、あれか?」


目の前の石の裏に少しだけ敵が見えた。。

俺は急いで近くの岩に隠れて、リボルバーを構える。


「よし、頭を出せ」


すると想定外の事態が起きた。


「は?」




―え?

―浮いてね?

―これもしかしてC?

―チーターやん

―浮くとか反則すぎ

―初めて見たw


「飛んでるんだけどwwwww」


「チーターかあ、流石にツイてないな…」


でも諦めずに最後まで戦う。

奇跡が起きて勝てるかもしれないからだ。


相手が持っているのは、今シーズン最強と言われるサイレンサースナイパーだ。

俺は射線を遮断しながら、リボルバーをもう一度構える。


「いちかばちかやるしか無いか…」


そう思い、リボルバーで照準する。


「頼む」


そう言って、岩から出てきて撃つ。

そしてすぐにサブマシンガンに切り替える。


「当たれ!」


そう言いながらもサブマシンガンを乱射する。

チーター相手はもはや運ゲーだろ。

神にでも祈りながら、撃つしかない。



敵側はチーター。

エイムツールも使っているのだろうか、しっかり全弾頭に当ててくる。


俺もひたすらエイムを頭に当てることに集中する。

ダメージを見る余裕すらない。

一発でも外れたら即死だろう。


ただ一瞬。

長いように感じた。

そして俺の画面に現れたのは1位の表示。




―は?

ー嘘だろ?

―世界王者はチーターに勝ったw

―えぐ

―全部当たるとかチータがどっちかわからん

―何で勝ったw?

―ばけもん

―誰も勝てない


チーターに勝ってしまった。

いや勝てると思わないんじゃん!

なんで勝ったの!?



ネットの世界では急激にblancがトレンド入りした。



3秒くらいだろうか。

そんな短時間の戦いだったが、

俺がチータに勝ったことがすごかったらしい。

勝てると思わなかったから自分も驚いたが、


「チーターって負けるんだね」


俺はただ無意識的にそう呟いた。


ー最高の煽り

ー草

―まじそれな

―いや、チーター負けんのかい

―技術があれば勝てる…

―と信じたかった

―少なくとも俺らには無理。



「一戦しかしてないけど疲れたから終わるね」


チーターに勝った満足感で今ならすぐ寝れそうだ。


―はや

―まあクリップよかったしいっか

―おつかれ

―おつかれ〜

―おつです

―バイバイ





切れたのを確認して、ため息を付きながら、布団に体を投げる。


今日のクリップよかったな~と思いつつスマホを触っていた。





VTuber



ふと夜音が言っていたことを思いだした。

特に目指していたわけでもない界隈。

だが、案外ありかもしれない。


凄いプレイで皆ともっと繋がりたいな…


流石にこの1戦で決めるには安直すぎるだろうが、

それでもここでさっと判断しないと永遠に悩みそうだった。






明日、 夜音に相談してみようかな。

そう思いながら、ベッドに身を投げて、


夢の中に落ちた。

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