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第11話 夜音と外へ


この一週間の学校生活は、まともに送れなかった。

そして、そんな中土曜日が訪れた。




今日VTuberになるために必要な機材を確認しに行く。

正直、家にそのまま送ってくれても良かったが顔合わせは必要かと思ったので何も言わなかった。




ちなみに、確認しに行く場所は夜音が所属する事務所だ。

俺ももうすぐ所属することになる。


企業名 HESKAL


VTuber界では有名な事務所らしいが女性VTuberが多いだとか。






当然かもしれないが、場所は知らないので夜音と行く。

久しぶりに二人で行く。

最後にどこか一緒に行ったのは夏休みにボウリングをした時だ。


彼女は朝ご飯を食べに来たときにそのまま荷物もってきた。


俺はしっかりとした服装に着替えると、部屋を出た。


「よし、行くか」


「そうだね」


最低限必要な物をカバンに入れて、持つ。

ちなみに、斜め掛けのカバンだ。


彼女も青い手提げカバンを持った。






「明日の配信に何をするか考えた?」


少しづつ肌寒くなるような季節の中、二人で駅まで歩いていると彼女は聞いてきた。


「最低限は考えた」




名前、ファンネーム、挨拶などは考えた。

そこまで悩んだわけではないが、良いかなと思うのが決められた。


「本当かな…」




俺と彼女は色々話ながら電車に乗って事務所へ向かった。




「大きいな…」


HESKALは大きなビルのなかにあるようだ。

ビルを見上げながら、感じた事をそのまま口に出した。


「そりゃ、大手だからね」


なぜか彼女が誇らしげに言った。

そして、そのまま自動ドアを抜けて中には行っていった。

階層は5~8らしい。


広いな…


エレベーターのドアが開き、


「あ、岩佐さん!」


彼女は声を出して走り出した。

走っていった方向を見ると、

一人、白い髪の清楚な女性が立っていた。


「夜音さん、お疲れ様です。」


おそらく何か関係がある人なんだろうが、全くわからない。

俺一人が取り残されて突っ立っていると、


夜音はそれに気づいたらしく


「この人は私と海斗のマネージャーだよ!」


「え!?」


思わず驚いて声が出た。




今回顔合わせするのは夜音のマネージャーさんだと聞いていた。

つまりこの方と今日やるのだろう。


「あ!こんにちは…」


思わず人見知りが入ってしまった。

仕方ないが、少し顔がひきつってしまう。


「こんにちは、君が夜音さんの言っていた人かな?」


「は、はい、坂峰 海斗です」


緊張しながらも顔は冷静だ。

頭の中は緊張で少し震えているかもしれない。




「とりあえず部屋で話しましょう。」


岩佐さんに案内されて部屋の椅子に座った。

横には夜音が座る。

岩佐さんは、何やら資料のようなものを俺の机の前に置いて、向い合わせで座った。


「じゃあ、とりあえず色々説明しよっかな」






「資料の最初にカッコいいイラストがあるでしょ?」


「あ、ありますね…」


配られた時から少し透けていたので見えていた。

すごくカッコいいイラストだなと思っていた。


「それが海斗くんのVTuberとしての絵」


つまり、VTuberとして動く時のイラストということだ。


顔は全体的にカッコいいという印象に尽きる。

髪色は白髪なのが謎だが結構似合っている。


服は、半袖に近く真ん中に赤いクリスタルがはめらていて、全体的に黒く、少し赤色が混じっている。


ズボンも黒色だ。


だが背中にスナイパーを背負っているのが気になった。


「あのー何でスナイパーが背負われてるんですか?」


俺がプロゲーマーだったということがバレたのだろうか。

まあ、夜音の配信に出てしまったことで、

ゲームがうまいというイメージが定着したのだろうか。


もし、そうだったらアサルトライフルの方が良いだろう。




「あ、それは私が参考程度に言ったの」


夜音が横から声を出して、俺はそっちの方向に向くと顔をかしげた。


「あの配信切り忘れた時にゲームしてたでしょ?あれをそのまま言ったの」



「なるほど、それにしても岩佐さんは絵が上手いですね」


事前に聞いていたが、マネージャーさんはイラストレーターでもあった。

すごいクオリティだった。



そういやblancとしての活動時にたくさんのファンアートが届いてた。

どれもカッコ良く印象に残るものが多かったがその中に入れても上位を競えるくらいに上手いなと思った。




「そ、そうですね」


謎の間が出来て、不思議に思った。

きょとんとしていると、


「あ、岩佐さんはイーサという名で活動しているんだよ」


夜音が素早く説明してくれた。

おそらく、普通はイーサという名で呼ばれるので困惑したのだろう。


「では、こちらが海斗さんのアカウントです。名前は決めましたか?」


俺は一通り伝える。

ファンネームと設定などもしっかりと…


「分かりました。少し面白いですね。では公式から明日の告知を出しますね」


HESKALに登場することはサプライズにしている。

だから皆がどんな反応をするのか楽しみだ。








「あとは資料をよく読んでおいてください。」


全ての話が終了した。

そこまで長くは無かったが、横で夜音はほぼ寝てた。


「ありがとうございます」


「あ、あとは機材ですが、こちらですね」


岩佐さんの手元の資料の一つを見せてもらった。

えっと、ノートパソコンがこれで…モニターが…




(全部持ってたわ…)




いつも配信に使っているものと同じだった。

まさか同じ物を引き当てるとはすごいなと声には出さないが思った。




「では、こちらを今日送りますね」


いつの間にか話が終わっていた。

手元のスマホを見ると12:00を越えていた。


「配信頑張ります!」


俺は立ち上がってバッグを手に取る。

夜音も意識が戻ったのか急いで荷物を整えた。



「初配信、期待してますね」


すごいプレッシャーを感じた気がするが大丈夫だろう。

俺達は岩佐さんと別れてビルを出た。

お腹が空いたなぁ思っていたので、


「どこか食べに行く?」


そう提案すると、何かニヤニヤした顔で




「このままデートでもしない?」






そう聞き返してきた。

俺は正直どっちでも良いので何も言わずに居ると、

照れたと勘違いしたのか、


「ふーん、手を繋ぐ?」


何か上から聞いて左手を差し出してきた。

俺はそれをしっかりと右手で払った。


「別に大丈夫」




そう言って俺は家の方向へ歩き出した。

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