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X DAY 1

 そうしてやってきたコンラート様との街歩きデートの日。

 アルベルトとの時とは違って、年相応に見えるようにストレートの髪はそのままで。服も普通の平民の女の子が着ていそうな普通のワンピース。あの時のようなルンルンとした気持ちになれないのは……きっと相手がアルベルトではないから、少し緊張してしまっているのだろう。


(大丈夫よ。だって初めのうちは距離を取ってくれるって言ってたし、きっとロマンチックな発言を聞いている間にデートも終わってしまうわ)


 そう自分を鼓舞しながら、屋敷まで迎えにきてくれた……平民の格好にしてはやけにキラッキラして、貴族感を隠しきれていないコンラート様と街に出た。


「ユリア様。今日は敬称をつけて呼べ無いので、私の事はどうぞ『コンラート』とお呼びください。そして私はユリア様の事を『マイエンジェル』とお呼びしますから」


 はい、出ました。早速エンジェル1回目。


「私の事も『ユリア』とお呼びいただけると嬉しいですわ。流石に天使様は恐れ多いですから」


 思わず顔が引き攣りそうになりながらも、なんとか呼び名の変更を図る。


「そうですか? ではユリア、行きましょうか」


 コンラート様はそう言いながら私に手を差し出そうとして……引っ込めた。


「失礼、つい癖で」


 王子と呼ばれファンクラブがある程の人なのだから、きっとエスコートにも慣れているのだろう。でも私が男性恐怖症だと知って、極力そこを考慮し行動してくれようとしている点には好感が持てた。街中でのエンジェル呼びはごめんだけど。


 街に出ると、先日アルベルトと一緒に歩いた時の倍以上の人出があった。人の波に飲まれそうという程ではないが、気をつけて歩かないと人とぶつかってしまいそうな混雑具合だ。


「ユリア見て。今日は何かイベントでもあるのかな? やけに人が多いね」

「そうですね。いつもは通行人もこの半分くらいなのですが……キャッ、お婆さんごめんなさい!」


 すれ違う時に見知らぬお婆さんに手が当たってしまい、頭を下げる。そのお婆さんは親切にも「今日は犬伯爵様がチャリティーイベントをしているからねぇ。人が多いから気を付けなされ」と教えてくれた。


(お父様がチャリティーイベント? 初耳なんだけど)


 違和感を覚えた。だってお父様はそういう類のイベントを開催する際には必ず私にも声をかけて教えてくれる。何故ならば……忙しくて100匹の愛犬の世話をする時間が取れなくなるから。私はそのサポート要員としていつも招集されるのである。


(あ……そっか。私がコンラート様と街にデートに行くから遠慮したのかも)


 自分で自分の考えに納得する。だから私の代わりに優秀なアルベルトが招集されて、忙しそうにしているのかもしれない。


「人が多くて危ないね。……ユリア大丈夫?」


 コンラート様は恐らく私の男性恐怖症の事を心配してくれているのだろう。

 確かに至近距離を見知らぬ男性がすれ違っていくのは……怖い。


「えっと……正直に申し上げますと、少し怖いです」

「そっか。なら少しでも見知った私が手を繋ぐ方がマシかな?」


 コンラート様はそう言いながら優しくその両手で、私の右手を包み込む。一瞬だけビクッと体が跳ねてしてしまったが……失神してしまうような拒絶感は無い。


(だ……大丈夫だったわ! アルベルト、私特訓の成果がちゃんと出ているわよ!!)


 心の中でアルベルトに感謝しながら、感動で身を震わせる。


「ユリア、怖い?」


 コンラート様が、青空の瞳を曇らせ心配そうに見つめてくる。どうやら感動で身を震わせたのが、勘違いを生んだらしい。


「いいえ、大丈夫ですわ。気を遣っていただいてありがとうございます――コンラート」


 問題なく敬称抜きで呼べたし、私達は手を繋ぎ並んで歩き出す。


「何かあったら私がユリアを守ってあげるからね。出来るだけ周りを気にしないように歩くといいよ」

「ありがとうございます、心強いですわ」

「なんたってユリアはマイエンジェルだからね。当然さ」


 ――はい、出ました。エンジェル2回目。


 せっかくのロマンチックな雰囲気(?)もぶち壊しかもしれない、心の中でのツッコミを繰り広げながら……私は何か他の話題がないか探す。


「――あ。あちらにアップルパイのお店があるようですよ? コンラートは林檎がお好きでしたよね」


 手を繋いでいない方の手で指差したのは、アップルパイを売っている屋台。先日アルベルトと来た時には無かったので、きっとお父様のチャリティイベント関連で出展しているお店だろう。


「まさかユリアは私の好きな食べ物まで調べてくれているのか? 確か私のファンクラブには入っていなかったように思うが、どこでそんなに……?」


 まさか執事が情報収集してくれて一緒に勉強していました、なんて言えないので笑って誤魔化す。もしかしてアルベルトは、ファンクラブメンバーから情報を集めてきたのかしら……?


「それよりも、一緒に食べませんか? 私が買ってきますので、ベンチにでも座っていてくださいな」

「では私は飲み物を買ってこよう。購入後にそこのベンチの前で待ち合わせで」


 そう約束して手を離し、また後でと手を振る。そして離したばっかりの手をじっと見つめた。


(平気、ではあったけど。……アルベルトと手を繋いだ時のような安心感は――無かったわ)


「……いけない。早くアップルパイ買ってこないと」

明日最終回まで投稿します!

よろしくお願いします(๑>◡<๑)



いつも読んでくださる皆様ありがとうございます(*´꒳`*)♡

閲覧数と評価を励みに、糖度高めハッピーエンドを目指し日々執筆頑張ります(๑˃̵ᴗ˂̵)♪

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