今日は。 1
特訓7日目。
今日は……舞踏会に向けてのダンス訓練のはずだったのに。私が風邪で熱が出て寝込んでしまい休養日となった。
昨日街でデート中に倒れてしまった私は、アルベルトによって屋敷まで運ばれた。心臓の調子が悪かったのも、やけに暑いと思っていたのも恐らく風邪だったのだろう。
(私が倒れた瞬間のアルベルトの表情……心配かけちゃったな。)
あの時はまるでこの世の終わりを見てしまったかのような表情だったが、今ベッドの横で介抱してくれている彼は至って普通の表情である。ただいつもと違い、街歩きデートをする為に剃ってしまったので口髭は無い。
「ごめんなさいアルベルト。こんな時に風邪を引いて寝込んでしまうなんて」
「いいえユリアお嬢様。私の方こそ、ペース配分を早めすぎてしまったようです。申し訳ございませんでした」
デートの訓練は終わったので、呼び方は当然執事モード。
……ユリアって呼んでくれたの、嬉しかったなぁ。なんて、今になって喜びを噛み締めながら布団を口元まで引き上げる。
アルベルトはいつもつけている手袋を脱いで。そしてベッドサイドに置いた水桶に薄いタオルを浸してギュッと絞り、私の額に乗せてくれた。一瞬冷たさを感じて体がぴくっと反応したが、タオルはすぐに私の熱を拾ってじんわり同じ温度になっていく。
いつだって私の傍にいてくれた愛犬アルベルト。それは私が熱を出しているときも同じで、傍で寄り添うように見守ってくれていた。
「ねぇアルベルト……いつもみたいにぎゅってして寝たいの。ダメ?」
私がそうお願いすると、執事のアルベルトは少しだけ困ったような顔をして。「少しだけですよ」と一言呟いてから光に包まれ、犬の姿になった。
「ワフ」
犬の姿になったアルベルトは私のベッドの上での定位置に寝転がり、私に寄り添う。どうぞと言わんばかりのその態度に私は少しだけ笑って擦り寄った。その拍子に額の上のタオルがずり落ちる。
「ふふふ。アルベルト、大好き」
アルベルトは特に返事をせず、ただ私の額からずり落ちてしまったタオルを咥えて引き上げていた。
切れ目の関係で短いですが、次回は糖度高い回になります。本日19時予約投稿です!
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