貴方が私を裏切ったから
それは寒い雪の日だったわ。
隣国との国境を守る辺境伯の娘として、私は十五歳でデビュタントを迎えたの。
王家主催の夜会で、当時若くして崩御した国王に代わり、同じく十五歳で即位した新国王ザマナイネは私を見初めた。
私の両親の反対を押しきり無理矢理私を王妃に迎えて乱暴に純潔を奪う。
それでも貴方に愛さえあればと我慢していたのに、5年後貴方は私を裏切り侍女に手を出して側妃に据えた。
そこで私は何もかもどうでも良くなったわ。
予め、私は蔑ろにされた場合を考慮して家族と連絡を取っていたの。
享楽や散財に溺れ、王の役目を果たさないザマナイネは貴族達から見放されていた。
王位継承権を持つ私の父に、民を真に思う全ての貴族が集まっていたのよ。
そう父は先代国王の腹違いの弟だったの。
女好きだった先々代国王が辺境伯家の令嬢だった侍女に手を出し、王妃にバレた挙げ句に身籠った侍女を始末しようとしたの。
先に当時の先々代辺境伯が動いて、娘である侍女を助け領地に匿っていて難を逃れた。
出産の際に、産後の疲労で父を生んで直ぐにお婆様は亡くなってしまったけれど、お祖父様が父を孫として引き取り辺境伯へと引き立てた。
父は成人を迎えた日に、お祖父様から出自を聞かされてからも奢る事なく己を鍛え磨きお母様と結ばれ私が産まれた。
私はザマナイネと婚約しなくても、始めから生まれが高貴だったの。
ザマナイネは元々、先代国王と男爵令嬢との間に出来た卑しい身分。
男爵令嬢は側妃になって今も、我が儘に散財しているわ。
先代王妃ではないのになったつもりなのよ。
あぁ、だからこそ私は貴方と子を為したかったのに為せないのが悲しい。
貴方は子種がない不能だから。
だから運命も貴方の命も終わりにして上げる。
三日後。
王都は貴族達の軍に包囲され、民達は喜んで受け入れた。
速やかに国王ザマナイネと側妃クソアマは捕縛され、私は今……公開処刑の執行人として剣を構える。
「嫌だ!!死にたくない!!」
ザマナイネは叫んで私から顔を背けた。
「駄目よ、貴方が私を裏切ったからいけないの」
私は無表情で彼に言うと、剣で彼の首を撥ね飛ばした。
「ひいいっ!?」
クソアマは青ざめた顔をして叫ぶ。
彼の首をクソアマの隣に私は置いた。
「大丈夫、直ぐに会わせてあげるよ」
笑って私をはクソアマの首も、遠慮なく剣で撥ね飛ばす。
並んだ二つの首は、苦痛と恐怖に歪んでいた。
だって貴方が行けないのよ?貴方が私を裏切ったから。
私は二人の身体を何度も何度も剣で突き刺す。
殺しても、恨みは消えないし憎いの。
気付いたら、私の着ていた純白のドレスが真っ赤に染まっていた。
まだよ、私を虐げた貴族や侍女が残っているもの。
ぐちゃぐちゃになった死体を見て、私は次の処刑が楽しみで微笑みを浮かべるのだった。