友情2
昼時を少し過ぎたファミレスに入ると、まばらに入った客がめいめいに談笑している。日当たりのいい窓際の通路の突き当りに、紫亜が座るテーブルがあった。
「ごめん、待った?」
紫亜の向かいのシートに腰を下ろすと、彼女が軽く首を振った。私たちはドリンクバーを注文し、私はメロンソーダを、紫亜はアセロラジュースを注いだグラスを手に再び向かい合った。
グラスに浮いた水滴を指先でなぞりながら、紫亜は口を開いた。
「澪はあたしじゃ駄目なんでしょ」
私は焦って身をのりだした。
「駄目なんかじゃないよ。私には紫亜も慶も必要なだけ。それだけだよ」
紫亜の爪は大粒の水滴をのせ、透明に光った。
「だって、あたしには澪のこと、本当には分かってあげられなかった」
私はグラスを握っていた手を離し、湿った手を握り込んだ。
「違う。私が紫亜との間に線を引いてたの。紫亜は私と違うから、きっと分かりっこないって最初から諦めてた。私が紫亜から逃げてたの」
私は紫亜の方へ手を伸ばした。濡れた肌の温度が混じり合う。
「……あたし、澪のこと本当に好きで、同じクラスになれて、友達になれて、本当に嬉しくて……」
「うん。ありがとう」
「澪、何も分かってないでしょ」
紫亜が大きな瞳を瞬かせた。白目の縁が薄紅に染まり、下睫毛に光がわだかまる。私は紫亜と指を絡め、二人の手のひらを合わせた。
「そんなことないよ。私も紫亜のこと好き」
「嘘。絶対伝わってない」
頑なな彼女の心をほぐすように、私は繋いだ手をゆったりと揺らした。
「私ね、紫亜のこと羨ましかったの。わざとじゃないのに、私いつも自分を偽ってるような気分でさ。紫亜は自分に嘘を吐かないでしょ」
盛り上がった光の膜が決壊し、紫亜の頬に透明の筋を引く。
「それは……あたしのこと好きってこと?」
「だからそう言ってるじゃん」
思わず私が笑うと、つられて紫亜も相好を崩した。笑っているのに、水晶玉のような紫亜の双眸からは光の粒が次々に零れ落ちる。私たちは注文したスイーツで腹を満たすと、カラオケに入って滅茶苦茶に歌った。呼び出した侑真と暁人も合流して、笑い疲れて涙が出るほど歌い明かした。
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