撃退、悪役令嬢
【サイド:高峰七ノ花】
意気込んだ私は物陰から出てご令嬢達の元まで歩いていく。半泣きになっている亜麻色髪の少女がそれに気づき、その少女に注目していた悪役令嬢ズもこちらに気づいて振り返ると、何人かは怯んだような表情を見せた。
同世代の身分の高い生徒。ならば当然フリューが避けられる原因にもなった例のお披露目にも何人かは同席していただろう。フリューは家の噂と相まって、相当触れにくい人間というわけだ。
冷静に分析しつつ、早速この場をなるべく丸く納めるための一手を打ち込む。
「失礼、たまたま通りがかったのだけど、殿下のお名前が聞こえたものだから気になって来てしまいました!」
両手を胸の前で合わせ、なるべく明るい声で、ニッコリと笑顔を浮かべ、イジメの現場など何も見ていないかのように近づく。
普段誰とも話さないフリューがこんなに陽気に話しかけてくるのだ、皆ビックリするだろう。
予想通り驚いて何も言えないご令嬢達に話しかけ続ける。
「ここにいる皆さんで殿下のお話をされていたのですか?これだけのご令嬢を惹きつけるだなんて、流石ですわね!大勢で想い人の話で盛り上がるのも楽しそう!
出来れば是非私もそのお話をお聞きしたいのだけれど、混ぜて頂いてもよろしいかしら?」
身振り手振りも交え可愛い女の子を演じつつ話す。これは以前、窓際に追いやったセクハラ上司から後輩を守るために一度使ったテクニック、『空気読まない明るい闖入者作戦』である。
相手からすれば、そもそも話していた話題もすり替わっているし、(いやお前と話すつもりねえよ…)となるので高確率で相手が言葉を濁し撃退する事が出来るし、もし会話が続いても私が代わりにヘイトを受けられるという必殺技だ。
私はそのセクハラ上司に対して普段から厳しい態度で当たっていて怖がられていたので、明るい声色で話しかけることにより困惑ダメージ上乗せで尚の事撃退率を上げていたと思う。以降ビビって私がいる可能性がある場所で女性社員に声をかけることは無くなった、雑魚め。
今回であればフリューが怖がられているし、撃退率はかなり高い筈だがどうだろうか?
「…いえ、申し訳ないけれど私達がしたい話はちょうど今終わった所だからお暇させて頂くわ。皆様もそれでよろしいですわね?」
目論見通り、恐らく最も身分の高いであろうエリム様?が取り巻きに同意を求める。それに取り巻き達は動揺しながらも賛同し、その場を去る。
「あら、それはとても残念ですわ…。機会があれば是非お聞かせ下さいね!」
「えぇ、その時がくればお相手させて頂くわ。それでは」
冷ややかな視線を私に向ける金髪悪役令嬢。その視線に気づいていないかのようにニコニコ笑顔で手を振ってお見送りする。
取り残されたのは亜麻色ショートヘアーの女の子と私、あとは空気読まない女の姿を見て共感性羞恥で身悶えしてるフリューの三人。
私は手袋を口に当て、交代して、とフリューに伝える。
約束通り二人で話してもらおう。