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降霊!二重人格令嬢  作者: 豆腐
18/19

二重人格説明会【ギルシア家】

【サイド:高峰七ノ花】


「にじゅうじんかく?聞いたことないあたし。お父さんある?」

「いや、私も無いな。ケウスはどうだ?」

「私も無いわねぇ。どういうものなの?」


 どうやらこの世界にはまだ二重人格というのは認知されていないらしい。もしくはいないのだろうか。


 まぁよくよく考えれば世界最古の国が四百年前に興ったばかりだ。いくら魔術という圧倒的なエネルギーとパワーがあるとはいえ、魔獣という外敵と戦いながら法律や建築などの文明がここまで発展していることがむしろ驚異的だと言えるかも知れない。

 もしかしたら、もっと昔に私のような異世界人が来ていたのか。


 まぁ今考える事では無いので一端頭の隅に追いやる。


「簡単に言えば、一つの体の中に二人の魂が存在する状態とでも言いましょうか。

 今は私が体を操作していますが、任意でフリューに切り替わることが出来ます」

「えっ!?なんか昨日と今日学園で会った時と全然雰囲気違うなーって思ってたけど、やっぱりフリューちゃんじゃないんだ!?」

「そんなに違うのね。では、今話してる貴方のお名前は?」

「申し遅れました、高峰七ノ花と申します。最初からその話をしてしまうと、こんがらがるかと思いまして」

「…まぁそれはそうだな。今も十分に混乱してはいるが。

 タカミネ君だったか、フリュー君と話をする事は可能か?」

「えぇ、勿論です。フリュー、代わってくれる?」


 そう言うと主導権がスッとフリューに切り替わる。

 私が姿勢良く背筋を伸ばして座っていた状態から、フリューに切り替わった事で若干俯きがちになり縮こまってしまった。座り方一つでも分かりやすいものだ。


「ぇ、えっと、初めまして、フリュー・ケルニトスです…」


 か細い声で自己紹介をするフリュー。あまりの変わり様にギルシア夫妻は目を丸くしているが、ティスはフリューの事を知っていたからか動揺は少ない。なんなら座っているフリューの隣に腰掛けて抱きついてくる。


「ぅわっ…!?」

「あたしの知ってるフリューちゃんだ!ほんとに一人の中に二人いるんだ、面白いね!」

「そ、そんなに違い分かっちゃう…?」

「うん!フリューちゃんはカワイイ兎さんって感じだけど、タカミネさんはカッコイイ狼って感じ!全然違う!

 そういえばあたしを助けてくれたのってナノカさんなの?それともフリューちゃん?」

「それは…」

『フリュー、先に私の声も聞こえるようにしてもらえる?』


 恐らく全て私が助けたことにしようとしているのは予想出来るので、返事をする前に私に喋らせてもらおう。

 お願いするとフリューがすかさず【第二のお口】を発動する。


「あー、もしもし。聞こえてますか?」


 確認のために声を発するとティス一家全員がギョッとした顔になる。ちょっと面白い。


「…聞こえてそうですね。

 ティス。さっきの話、助けに入ったのは私だけど、助けようと決めたのはフリューよ。

 私は基本フリューの意志を尊重して動くことにしてるから、今回についてのお礼はフリューに多めに言ってくれると嬉しいわ」

「そうなんですね!ありがとうフリューちゃん!タカミネさんもありがとうございます!」

「えと、その、どういたしまして…?」

「えぇ、どういたしまして」


 私達が言うことを何でもかんでも飲み込んでしまうティスは、この状況に既に疑問も違和感もあまり感じていないらしい。普通に私達と談笑し始める。

 普通の感覚を持っているアスクとケウスはまだ馴染めていないが、二重人格になった経緯や今後の具体的な計画などを話している内にある程度は慣れてきた様だ。



 ケウスも農業改革計画について同意してくれたので、本格的に私達と協力してくれることが決定した。

 そして最初に用意してもらっていた契約書に、農業改革計画の協力内容も追加してもらった上でフリューにサインしてもらう。


「か、書けました…!よろしくお願いします…!」

「あぁ、こちらこそ宜しく頼むよ、フリュー君、タカミネ君。」

「えぇ、お互いに実りある事業になるよう尽力させて頂きます」

「あら、タカミネさん、そんなに畏まらなくて良いわよ。これから一緒に色々やるのだから、堅苦し過ぎるとやりにくいもの」

「そーですよ!タカミネさん凄い大人っぽいしお父さん達とももっと気楽で!

 …ていうか、タカミネさん?ナノカさん?あんまり聞かない感じの変わった名前だけど、家名ってどっちですか?」


 …そういえばその辺りを考えて自己紹介してな無かった。ティスは思考がちょっと奔放だが、その分色々な事に目が向くのかも知れない。


「あぁ、タカミネが家名で、ナノカが名前よ。好きな方で呼んで大丈夫」

「えっ!?」


 ずっと家名で呼んでいたつもりだったフリューが驚きの声を上げる。


「ぇ、えっと、すいません…。気づかずに名前で呼んじゃってて…」

「謝らないで。私はこれからも名前で呼んでくれる方が嬉しいわ、フリュー」

「!…はい!」


 そんな感じで会話していると、治療室の扉がノックされる。


「旦那様、機密統括室から担当者の方がいらっしゃいました。こちらにお通しいたしますか?」

「む、随分と早いな。…いや、私がそちらに行こう。応接室まで案内しておいてくれ。

 すまない。フリュー君、ナノカ君。私は来客に対応しなければならなくなった。本来なら夜に来る予定だったのだが…」

「いえ、重要な話はもう済みましたからどうかお気になさらず。もう時間も遅くなってしまいましたし、私達もあと少しだけティスとケウス様とお話したら帰らせて頂きます」

「そうか、ではまた近いうちに会おう。

 それと、私かケウスのどちらかは基本この家にいる。困ったことがあればいつでも来なさい」


 そう言って部屋を出るアスク。

 困ったこと、とはフリューの両親の事だろう。相当な厄介事なのは理解した上で面倒を見てくれると言っているのだから、本当に善人だと思う。


「それで、まだ私達にしたい話があるのよね?何かしら?」

「はい。

 私達が巻き込んでしまったせいで、ケルニトス家から何かしら厄介な圧力などが加えられてしまう可能性も考えておりまして。

 それに対抗…というほどの物ではありませんが、一つお渡ししておきたい道具がございます。

 出来ればアスク子爵も交えて使い方を説明しておきたかったのですが、お忙しい様ですので後程お二人から伝えて頂きたいです」

「道具?」

「えぇ。ランさん、出して下さい」


 私が合図すると、脇に控えていたランがフリューから預かっていた鞄の中から六枚の用紙を出す。

 それをフリューが受け取り、相変わらずフリューを抱き締めたままのティスとケウスが用紙の内容を覗き込む。


「? なにこれ?」

「ぇ…これってまさか…」

「これが私達が、用意出来る万が一の時の対抗策になります。今からこれの用途と使い方をご説明いたします」


 その後五分ほどかけてその道具について説明し、私達は帰路についた。出来れば使われないことを願うばかりだが…。

ぼーっとしてたら五ヶ月も投稿していない事実に震えた。

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