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第91話 新しい生活

 キッチンに立ち朝食の準備を行う。

 肉がやたら入っているがそれにきっちりと野菜も加え栄養を考慮。


「えーと後は……」


 呟きながら次の動きに入ろうとすると不意に後ろから抱きしめられる。


「おはようございます、リンシアさん」

「………タイガ君。料理してる女の子の背後に立っちゃダメってお義母さんから教わらなかった?」

「いや、教わりましたけどあまりにも綺麗だったんで」

「…………はぁ。まぁ、いいけどさ」


 あれから2年とちょっと。

 私は無事タイガ君と正式に結婚した。

 ちょっと子どもっぽい雰囲気だった彼も今じゃすっかり大人の男性だ。

 低音ボイスがまたかっこいいんだよね。


 タイガ君は私の背中に張り付いたまま離れない。

 仕方なくそのまま作業を続けると、今度は首筋に息がかかる。


「ちょっ!ちょっとタイガ君!?」

「なんですか?」

「な、なんでそんなとこに顔近づけてるの!?くすぐったいよ!」

「嫌ですか?」

「い、いやじゃ……ないけど」

「じゃあいいじゃないですか。もうちょっとこのままで」


 そう言って彼は更に顔を近づけて来る。

 耳元から首筋にかけて彼の吐息を感じ、背筋がゾクゾクした。


「そ、そろそろ離して……」

「ダメです。もう少しこのまま」


 そしてとうとう彼は私にキスをする。

 それは触れるだけの軽いキスだったが、それでも私にとっては十分な破壊力だった。


「リ、リンシアさん大丈夫ですか?顔が真っ赤ですよ?」

「う、うるさい!年下なのに生意気だよ!」


 とりあえずちょっとたらしっぽくなっちゃってるのよねぇ。

 ついでにちょっと胸の方に伸びていってる手は撃墜しておく。


「はい。そういうのはダメだからね。時と場所を弁えて行動しなさい」

「つまり時と場所を弁えてるならしてもいいって事ですね!」

「揚げ足取らない!!」


 ヤバイ!大分この子に翻弄されてる気がする!!


「お、お前ら、朝から熱いな……」

 

 私達の様子を見ていたアル君は若干引いていた。

 隣ではホクト君が鼻を押さえて震えていた。


「タ、タイガぁ。そのままへたれず目一杯イチャついてくれたら朝からいいもの見れたのによぉ」

 

 やれやれ、と嘆息する。

 私とタイガ君の新婚生活は今までに引き続き彼の実家で行われている。

 タイガ君は成人になったばかりだし私だって警備隊の仕事をしているとはいえ下っ端。

 やっぱりお金の問題は付きまとう。

 ノウムベリアーノはこの国の中では商業の中心でもあるし、その分お金もかかってしまう。

 かといってどこか物価の安い所に移住するかと言えばそれは無理な話。

 タイガ君はいわゆる生まれつきのシティボーイだし、私だって元日本人。

 こういうところで暮らす方が結局楽なんだよね。


「あんた達、弟夫婦をからかってんじゃないよ。悔しかったら自分達も結婚しろって」


 正式に義母となったフリーダさんが長男君と次男君をしかりつけ、そしてタイガ君を睨む。


「だけどタイガ、あんたはあんたで朝からやり過ぎだぞ?」

「うっ……」

「そうやってイチャついてばかりいると後々だな……」

 

 そこで手伝いに来てくれたナギさんがぼそっと呟く。


「よく言うよ。フィリーだって新婚の時あんな感じだったじゃん」


 その言葉に義母さんは固まり顔を赤らめながらうつ向く。


「そ、それを言うならナギだって」

「そりゃ新婚ならイチャイチャしたいもん。だから何かふたり見てると若返った気分だなー」


 優しい笑顔を向けてくれるナギさんは既に50を超えているのだが未だに30代でも通じるくらい若々しい。 


「新婚時代かぁ。あの頃はあたし達も若かったですねぇ」

 

 セシルさんがしみじみと言いながら私の横に立って料理を手伝ってくれる。

 彼女は最近、ちょっと元気が無い。

 ひとり娘であるユズカちゃんが居なくなってしまったので常日頃。『ユズカ、またですかぁ!!』と怒っていたのが無くなり寂しいらしい。


「リンシアお姉ちゃん、おっきしたなり!!」


 リビングの方からベルちゃんが呼ぶ。


「ここは私が変わっておくから行ってきなさい」


 クリス母さんが笑顔で肩に手を置く。


「ありがとうございます」

  

 礼を言い、リビングの方へ行くとベビーベッドの中でぐずる赤ん坊をベルちゃんがあやしつけているところだった。


「ベルちゃん、ありがとうね」


 にひひと笑う彼女に微笑み、赤ん坊を抱き上げる。

 これが私がタイガ君の実家で暮らしているもうひとつの理由。

 先月生まれたばかりの愛娘、レム・ティアモ。

 まあ、結婚したてでこの子がいるってことはあまり公言出来ないことがあったからなんだよねぇ……

 すいません、色々やらかしました。私の方が!!

 

「はーいママぴっぴだよ。ティア、どうしたのかな?おむつ?それともお腹空いちゃった?」

「ねぇ、お姉ちゃん。いつも思うけどその『ママぴっぴ』って」

「うーん、私もよくわからないけど昔のメモに子どもが生まれたらしっかりママぴっぴを教育する敵な事書いてたんだよね。きっと意味があることだろうからそうしてるの」

「そのメモ、大丈夫かな……」


 何だかベルちゃんが呆れているのであった。

挿絵(By みてみん)

【ユズカ視点】


「ふんふーん♪」


 鼻歌を歌いながら窓を拭いていると下から声がする。

 見ればメイド長さんがこっちを見上げ手を振ってる。


「やっほー。ここもう少しで終わるよ」

「やっほーじゃありません、奥様!お願いだから降りて来てください!何かあったらワタシが若様に叱られます!!!」


 メイド長さんはいい人なんだけど心配性だなぁ。


「はーい」

 

 壁への吸着を解除して3階から飛び降りる。


「ひぃぃぃぃ、奥様ぁぁぁ!!!」

「大丈夫だよー」


 私は空中で回転し華麗な着地をしてみせる。

 メイド長さんの悲鳴が上がるけど、これくらいなら余裕だよ。


「上の方は掃除しにくいと思ったからやっておいたよ」

「そ、それはワタシたちの仕事です……奥様はそんなことはなさらなくても……」

「いいのいいの。あたしがやりたくてやってるんだから気にしないで」

「……あぁ、し、心臓に悪い」

「え?どこか病気とか!!?」

「ち、違います!その、奥様の無茶な行動がです!」


 心配性だなぁ。

 あんな程度の高さでケガするわけないのになぁ。


「ユズカ、それくらいにしとこうね。そろそろメイド長が倒れちゃうから」


 オージェ君が苦笑しながら言う。


「えへへ、ごめんねー」


 あたしは学校卒業と同時にオージェ君と結婚した。

 どっちの姓を名乗るか最後まで悩んだが結果として嫁入りしてアルスター・レム・ユズカと名乗ることにした。

 これで実家の方はタイガと結婚したリンシアさんに継いでもらう事になるんだよね。

 だけど何か使用人がいる家ってのも慣れないんだよねぇ。

 実家じゃ何でも自分達でやってたから……


「メイド長、大変です!フーカお嬢様がぁぁぁぁぁ!!!」

 

 メイドさんのひとりが血相を変えてやってくる。

 彼女は2階の壁を指さして叫んでいた。

 見上げるとあたしとオージェ君の娘、フーカが外壁を這って移動していた。

 うんうん。あたしの小さい頃に似て元気な子に育ってるなぁ


「お嬢様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 メイド長が叫び白目をむき気絶してしまった。

 そんなに驚く事なのかなぁ……

挿絵(By みてみん)

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