第90話 リンシアには『シスコン』の概念が無いかもしれない
【リンシア視点】
まさか隣国のお王子様がユズカちゃん達の異母弟だったとは……まあ、この一族らしいかな。
ちなみに隣国の宰相家にもレム一族の血が混じっているとか。
「えへへー姉上―」
エイス君はベルちゃんの膝枕を堪能しながら至福と言った表情だ。
「それにしてもよくウチに来るの宰相さん達が許してくれたね。ボク達に会うのってあんまいい顔されないでしょ?」
「バーカ、いいかベル。こいつの事だから勝手に飛び出してきたに決まってんだろ。今頃、大騒ぎだ」
ベルちゃんは次男君の言葉を聞きエイス君を見る。
彼は誇らしげに胸を張っていた。え、マジで勝手に飛び出してきたの?
「あのさー、エイス。そういう事したらあれだよ、何だっけコックさんがどうの……」
マリィちゃんが何か言葉が出て来ない様子で唸っている。
「国際問題かな、マリィ」
「そう、それ!流石カノン姉ちゃん」
うーん、マリィちゃん割と脳筋だからなぁ。
「ふふっ、兄上。まさか我が勝手に出てきたと思うのですかな?」
「違うのかよ?」
「きちんと『姉上の所にって来ます』って置手紙は残しました」
「それを勝手に出て来たって言うんじゃねぇか!」
長男君が頭を抱えていた。
「てかお前、流石に一人で来ちゃいねぇだろ。家臣はちゃんと連れて来てるよな?」
「無論です。機動力に優れるアメリアを連れて来ました」
「あー、あのケンタウロス女かぁ」
物凄く生活レベルが高くて便利だからたまに忘れるけどこの世界って私にとってはいわゆるファンタジー世界なんだよね。
ケンタウロスって言うと馬の頭に人間の身体の……
あーいや、逆だね。
それだとただの災禍魔人になっちゃう。
「ケンタウロス族と言えば地上最速の誇り高き狩猟民族だよな。確か、認めた相手しか背中に乗せないって」
「へぇ。つまり王子様はそのケンタウロス族を認めさせて背中に跨って来たわけなのね」
「いや、普通に引きずられたけど……」
全然認められてなかったよ!!
しかも王子様なのに引きずられたって!!
「あ、あのそれでそのアメリアさんは……」
「美味しそうな屋台の匂いに釣られて我を街中で放って何処かへ行ってしまった」
暴れ馬すぎるよ!!
主君としてそれでいいの!?結構問題ある気がする。
というかそのケンタウロスの子、ぬちゃくちゃすぎる辺りレム関係じゃないよね?
そんな事を考えていると長男君が心でも読んだのか言った。
「アメリアはウチの一族じゃねぇぞ?単に頭のネジが何本かぶっ飛んでるだけだから」
それはそれでヤバイ。
「ていうか心読むの止めてよ」
「心っていうか心音だよ。それでどんなことを考えてるとか大体わかるっていうかな。例えばお前が妙にドキドキしてたらこれはタイガとなんかやったなぁとか」
うわっ、それってもしかして今朝ちょっとタイガ君とハグしたのバレてるってこと!?
「お兄ちゃん、エロい。何かキモい」
マリィちゃんから侮蔑の視線を送られて長男君が崩れ落ちる。
ナイス、マリィちゃん。
「ところでエイス。まだ聞いていないと思うんだけどリンシアさんはウチの養女になったんだ。つまり……」
カノンちゃんの言葉にエイス君は私をじっと見る。
「つ、つまり我が姉が増えた!?」
「その通りさ。そして何よりも、タイガの婚約者でもあるからすごいよね」
「正にっ!!」
エイス君が目を輝かせながら私を見る。
「養姉様であり、義姉様!こ、これはポイントが高すぎる!!!」
「えーと………」
いや、ポイントって何!?
「しかも兄上の婚約者とは!!ああっ、何と美しい方なんだ!兄上やるなぁ……」
凄くこそばゆい感じがするなぁ。
「あのさ、マリィちゃん。エイス君って」
「うん、そうなんだよね。お父さんやお兄ちゃんと似ていて……」
「凄く家族思いなんだね」
教育がよろしい証拠だね。
「だから何でウチの男共の性癖に対して絶対的なポジティブ思考なの!?」
いや、性癖って……
まあ、男の子だから多少なりともあるとは思う。
タイガ君もきっとそう。だけどそこはある程度受け止めていってあげようと思うんだよね。




