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第78装 身近な理解者

前回に引き続きデート中のユズカ。

割とティーン女子です。

 あたしはオージェ君と感謝祭を回っていた。

 落ち着くのよ、あたし。これは年上のお兄ちゃんとお祭りを楽しんでるだけなんだから。

 

 とはいえこういう風に男性にエスコートしてもらっている時は相手に恥をかかせぬ様、淑女らしい行動を心掛けないとダメだよね。

 それが小さい頃からお母様に口ずっぱく言われてきた事。基本的に守れてないからしょっちゅう怒られてたんだけどね……

 そう、淑女らしく、淑女らしく……


「ユズカちゃん、あれユズカちゃんの好物だったよね?あれ食べようか?」

 

 オージェ君が指さしたもの。それは『激肉麺』という大量の肉が乗っている麺料理だ。


「うわぁぁっ!『激肉麺』だぁぁっ!!!」

 

 あれ大好きなのぉぉ!!!

 そして……


 ゾボボボボボッ!!

 10分後、あたしは豪快な音を立てながら激肉麺をすすっていた。


「うん、やっぱり美味しいぃぃっ!この味!細胞の一つ一つに染みわたっていく肉と麺のハーモニー!!これぞまさに私が求めていた食べ物っ!」


 一心不乱に食べていたがふと視線を感じて顔を上げた。

 オージェ君が微笑みを浮かべながらこちらを見つめているではないか。

 

 あっ!?しまったぁぁっ!ついはしたない食べ方をしてしまったぁ!

 よく考えなくてもおおよそ淑女らしからぬ行為である事は間違いないだろう。

 だが彼は穏やかな表情でこう言ったのだ。


「本当、美味しそうに食べるね、ユズカちゃんは」


 優しい口調で言う彼を見て思わず顔が熱くなるのを感じた。


「ご、ごめんなさい。あたしったらつい……」


 するとオージェ君は首を横に振って微笑んだ。


「いいんだよ、だってユズカちゃんは小さい頃からいつもそんな感じだったじゃないか。それが普通なんだから気にしないでいいよ」

「あぅ……」


 そうなんだよねぇ。オージェ君は小さい頃からあたしの事を知ってるんだもんねぇ。

 まあ、それもあって話しやすいし結構あたしの事を理解してくれているんだよね。

 

 というか凄くヤバいんだけどさ。彼の瞳を見て気づいちゃったんだよね。

 時間経過で記憶が薄れつつあるが未来から会いに来たあたしの娘、フーカ。

 父親が誰かは教えてくれなかったがあの子の瞳はあたしと違い確か水色。

 そしてオージェ君の瞳も……水色だった。


 えぇぇぇぇっ!?ま、まさかオージェ君が未来の旦那さんっ!?

 いやいや、まだそうと決まったわけじゃないからね。

 瞳の色が水色の男性なんて大勢いるもんね。落ち着け、落ち着くのよ、あたし。

 だけど可能性としてはあり得るよね?だってあたしとは結構長い付き合いなわけだし。

 お父様とお母様も幼馴染だったていうし……


 ちょっと待って。仮にオージェ君が未来の旦那だったとしましょう。つまりそれってあたし、オージェ君と、年上のお兄ちゃんとその、その……

 頭の中にベッド上で見つめ合い『きれいだよ』とか言われているあたし達の姿が思い浮かんだ。


「うえぇぇぇぇぇぇっ!!?」

「ど、どうしたの、ユズカちゃん?」


 変な声をあげてしまったあたしに戸惑うオージェ君。


「な、何でも無い!何でも無いからっっ!!!」


 言えない。まさかあなたと夜の営みをしている場面を妄想してたなんて絶対言えないよぉぉ~っ!

 うわぁぁぁ、はしたない意にも程があるぅぅぅ!!!


「まさかユズカちゃん……」

「えっ」


 ぎくぅ。まさか気づかれちゃった!?いや、違うわ。多分別の意味の言葉だわ、きっと。


「お代わりが食べたいのかい?構わないよ。僕に遠慮せず食べていいよ」


 良かったぁぁぁぁ、気づかれてない!!

 セーフよっ! セーフ!!こうしてあたしは再び激肉麺を堪能するのであった。

 ううっ、ヤバイ。

 ただでさえ変に意識しちゃってるのに更に意識するようになっちゃったじゃない!

 隣を歩くオージェ君をじっと見る。


 お兄様の親友。年上のお兄ちゃん。

 だけどもし、この人があたしの彼氏に、ひいては未来の旦那様になってしまったら……

 あれ?結構良いんじゃない? だってオージェ君、とても優しくて包容力があって紳士的だし。

 それに小さい頃から家族ぐるみ で親交があったんだもの。信頼関係はかなりのものだと思うんだよね。


 問題は彼があたしをどう思っているかって事だ。

 実はあたしが勝手に脳内で騒いでいるだけで彼からしたら親友の妹ってだけなのかもしれないもの。


「どうしたんだい、ユズカちゃん。僕の顔をじっと見つめて」

「え?いやその……あのさ、オージェ君ってその……」

 

 大事な事を忘れていた。

 そうだ。オージェ君はそもそも男の子ではあるけどお兄様の事が好きなんだ。

 それを忘れるところだった。

 危うく自爆する所だったわ。


「何だい?」

「あのさ、オージェ君ってお兄様の事、まだ諦めてない、よね?」


 凄くバカな質問だと思う。


「うーん、そうだなぁ。確かに俺はアルの事、今でも好きだよ。その気持ちは変わらない。あいつは俺にとって大切な親友で、初恋の人だからさ」

「そっか……」


 やはりそうなんだ。一途だなぁ。


「でもさ、この気持ちが叶わないのも何となくわかってはいる。ただ、例えアルが誰を好きになろうと、俺があいつの事を好きな気持ち、そして一番の親友である事実には変わりはないんだってね」


 カッコいいなぁ。

 あたしなんて告白してきた男子ととりあえず付き合ってみたけどすぐフラれちゃったりさ。

 初恋だった人に彼女が居て失恋しちゃったりしてね。

 そもそもあたしの方から特別アプローチもしてなかったんだから叶う筈もないのに……

 あたし、恋愛とか向いてないのかなぁ。


 憧れはあるんだよ?お父様とお母様なんて物凄く理想的な夫婦像だと思う。

 2人の馴れ初めとか思い出話を色々聞いてそんな燃えるような恋したいなぁって思うんだけどなぁ。

 あたしも将来はあんな風になりたいと思ってるんだけど、どうも上手くいくビジョンが視えないや

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