第71装 強烈!アルスター家(※)
冒頭でリンシアが強烈なやらかしをしています。
【リンシア視点】
「雨、か……」
雨が降ってきたので洗濯物を取り入れる。
途中でタイガ君が気づいて手伝ってくれたので殆ど濡れなかったので助かった。
何か、共同作業していたら色々と意識してしまい顔が熱くなるので部屋に引っ込みクールダウン。
落ち着こう。これはティアモちゃんに関する記憶が残っているせいだ。
つまり私は彼と……
「ま、まあ婚約者という立場になった以上それは仕方ないわけだし」
そう。それはいずれ来る未来。
でもあの子、一体私が何歳の時の子になるんだろう。
いや、それを想像するとまた悶えるから止めておこう。
記憶はだんだん薄れつつある。そうなればきっと平常運転。
「あっ、そうだ!」
もし忘れてしまうなら大事な事を書き留めておかないと。
そう、『ぴっぴ問題』だ。
どういうわけかあの子は私達の事を『ママぴっぴ』と呼んでいる。
いったいどんな教育の結果かはわからないけどこれはどうにかしないといけない。
とはいえ、これに関しても忘れてしまう。そこでメモの出番だ。
私は様々な事を書き留めておくメモに『子どもが出来たら』『ママぴっぴ』『教育する』と記しておく。
うん。これでティアモちゃんの存在を忘れたとしていずれ私が母親となった時にこれを見れば問題なく教育できるはず。
我ながら完璧!!
【ユズカ視点】
「はい、タオル」
「……ありがとう」
びしょ濡れになったあたしはオージェ君の家に招かれ雨を凌ぐことに。
タオルを渡され髪を拭く。
「風邪ひいたらマズいよね。お風呂の準備してるから入っといで」
「あっ、いやそんな!悪いよ」
流石によそのお宅でお風呂をいただくわけにはいかない。
「でも風邪ひいちゃうよ?」
「かぁぁぁぁぁぁあぁぁっ!!!」
全身を震わせると身体が温かくなっていき湯気が立ち上る。
その作用により濡れていた髪や衣服も乾いていった。
「えーと……『シバリング』だっけ?寒い時にアルがよくやってたけど……この熱量は何というか……」
オージェ君が苦笑していた
寒いとき、身体を震わせ体温を保とうとする『シバリング』という生理現象がある。
あたしはそれを闘気やら得意属性である『火』の作用で膨大な熱量を生めるほどにまで昇華していた。
「ほ、ほら大丈夫だよ。これでがっつり温かくなって……」
ぎゅるるるぅぅ……強烈なシバリングをした反動で急激にお腹が減ってきた。
「あぅ……」
「メイドさんもお風呂の用意をしてくれてるし入っといで。その間に何か摘まめるもの用意しておくからさ」
「で、でも……」
あたしの頭にポンッと手が置かれる。
「君は小さい頃からそうだよね。人には手を伸ばすけど自分から手を借りることはあまりしない」
「そ、そんな事は……」
「そうだね。彼女、リンシアの事は頼ってる感じあるよね。それじゃあ、俺の事も頼りなって。お兄さんの友達なんだしさ。ユズカちゃん、頼らない事ってのは強い事ってわけじゃないんだよ」
「うぅ……」
そんな事言われたって……
「はい、というわけで行ってらっしゃーい」
オージェ君に背中を押され、メイドさん達に風呂場まで連行されていった。
「待って!洗うとかは自分で出来るよ!?むしろそれは自分でしないとぉぉぉ!!?」
「ダメでございますです。ワタクシ達これでお給金いただいてますのです」
「えぇぇぇぇl!?」
□
「ちょっと待って!服はシバリングで乾いてたじゃん!!?」
「汚れてたので洗わせていただきましたです。はい」
笑顔でばっさり切り捨てるメイドさん。
というわけであたしは代わりの服を用意して貰ったわけだが……
「何かひらひらしてるよぉ……」
「でもユズカちゃん、小さい頃からパーティーとかでそういう服着慣れてるでしょ?」
確かにお母様の仕事関係でドレスとかを着てパーティーに参加してたこともあるけどあんまり好きじゃない。
いつも何やかんやで怒られてたし。
「うんうん、似合うよ」
「そうかなぁ……ていうかこの服は」
「ああ、俺が昔着てたやつ。背が大きくなっちゃって入らなくなったんだよね。とっといて良かった」
そう。オージェ君はアル兄様にガチ恋しちゃった男の子。
だからか普段から女装していて綺麗な顔立ちも相まって下手な女子より女子してる時がある。
変わってるなぁと思いつつも好きだの惚れたって人それぞれだもんね。
「ほう、中々似合うね。やはり本当の女性が着るとひと味違うものだな」
そう言いながら応接間に入ってきた男性にあたしは絶句した。
立派なひげを蓄えたダンディなおじ様がメイドさんがする様なヘアバンドをつけてほほ笑んでいた。
「ア、アルスターさん……そ、その格好は?」
彼はオージェ君のお父様、政治家のアルスター卿だった。
アルスター家は先代、つまりオージェ君のおじいさまの代から我が家とは付き合いがある。
オージェ君がやれやれと額に手を置いてため息をついていた。
「うむ。家ではこれが基本フォームでね」
「え、えっと……」
「いや、息子の装いを見て自分もやってみようと色々試した結果、これが一番落ち着いてね」
お、落ち着いた……えーと。
「よ、よくお似合いですね」
「ふふっ、そうかね。実はこのモデルはリーゼ商会の最新モデル、ヘアバンド333なのだよ。ほら、この裏側に『333』と彫られているだろう?何でも『333』は賢者の数字らしくてね」
絶対お母様が関わっている!?
すいません、その『333』のくだりはきっと出鱈目です!お母様の創作!!
もう何やってんのよウチの母親はぁ。『3』が好きすぎるの本当に困ったわ。
昔から『3番を目指しなさい』って言うし……あたしが生まれた順番も『3番目』だし……
「まあ、ゆっくりしていき給え。それでは私は支援者と会ってくるよ」
「旦那様、ヘッドバンドは外してお出かけください」
「ハッハッハッ、忘れてたよ。ああ、ユズカ君。ホマレ君によろしく言っておいてくれ」
メイドさんに言われ仕方ないと笑いながらヘッドバンドを外しアルスター卿は出て行った。
あんな人だったんだ……
「変わった服装だな。こちらの世界の女戦士はそのような戦闘衣装を纏うのだな」
声をかけられソファに緑髪の男性が腰かけている事に気づく。
えーと、オージェ君の友達?なんかすごくいい筋肉……
「あ、初めまして。これはその……」
「初めまして?ウォホッホッ、面白い事を言うのだな、レム・ユズカ」
あたしを知ってる!?
それにこの声、何処かで……
「仕方ないだろう。『その姿』のお前を見るのは初めてなのだぞ?」
更にもうひとり、美しい顔立ちの男性……と思われる人が私の恰好を舐めるように見ていた。
「おおっ、実に『調和』した美しさだな。ワタシに負けずとも劣らない」
「えーと……」
「ふふっ、君とは一度会ったのだよ?ワタシの名は災禍魔人フーティエ」
フーティエ……フーティエ……………
「ええっ!!?あの槍持った災禍魔人!!?」
確かリンシアさんとタイガを助けに行く時、道を阻んだ災禍魔人だっけ?
すると頭の中で線が繋がってムキムキ緑髪さんに目が行く。
「ま、まさかそっちは………」
「改めて名乗らせてもらおうか。我が名はラーヤ、秩序の守り人だ!!!」
彼は名乗ると記憶に焼き付くあの強烈な仁王立ちポーズを見せる
「あ、あの変態さん!!?」
「何ッ!?おい、フーティエ。貴様、こんないたいけな少女に何を見せたというのだ。それはちょっと、世間は許してくれやしないぞ?」
「「いや、お前だろッッ!!!」」
オージェ君とフーティエのダブルツッコミが炸裂した。




