第67装 異世界の誕生日事情
【リンシア視点】
タイガ君の誕生日が近いとは……流石私、まったく知らなかったわ。
どうも5月の5日が彼の誕生日になるらしい。
なるほど、『ザ・男の子』だね。と言いたいところだけど『端午の節句』はあっちの文化だから関係ないよね。
それにしても誕生日……って何すればいいんだろう?
バレンタインの時もそうだったが下手な行動を起こせば異世界ギャップで大変なことになりかねない。
この世界の常識を順次覚えて行かないといけないけれど項目が多すぎるんだよね。
例えば食文化でひとつでも結構ギャップがある。
ナダ人は柑橘系、特にレモンが好きだったりする。
なので大抵の料理にはレモンスライスが添えてあって驚いたものだ。
多分、世界で最もレモンを消費する民族じゃないかな。
日本人がタコの消費世界1位と同じ様な感覚。
という事なので誕生日に関しても安易な行動は避けるべき。
「あの、ナギさん。ちょっと聞きたいことが」
「んー?うーん」
ナギさんはニコニコと笑顔だが何やら不満そうだ。
「あー、えーと……ナギ『ママ』」
「うんうん、何かなー?」
あっ、正解だった。
書類上の母親はクリスさんなんだけど彼女もまた、私にとっては『母親』になる。
異世界転生したら母親が4人になりました、とか凄いなぁ。
「あの、誕生日ってこの世界だとどんな風に祝うんですか?」
「たんじょーび……タイガのだよね。ふふっ、よくぞ聞いてくれましたー」
彼女は私と同じ世界からの転生者。
きっとこの世界に来て色々と苦労したことも多いだろう。
そういう経験はとても参考になる。
「えーとね、まずリボンと大きな箱を用意するんだよ」
「ほうほう、リボンを」
「それでちょっと露出の高い衣装を着た上で自分の身体にリボンを巻いて箱に入るの」
あれ?何かおかしくない?
「そしてタイガがそれを開けたらリンシアが出てきて『私がプレゼント―』って」
「あの、真面目にお願いします」
ナギさんは悪戯っぽく舌を出し、てへへと笑った。
「ごめんごめん。でも、カノンが出来た時はさ、誕生日じゃなかったけどそれやったんだよー」
ホマレさん!?娘の誕生秘話をバラされてますよ!?
何だろう。凄く想像がついてしまう。
「まー、マジレスするとこの国は誕生日は祝うけど誕生日プレゼントって概念はあまりないかな。そーゆーの関係なしに大切な人には好きな時に贈り物をする民族だし」
なるほど、『誕生日だから』にはこだわらないわけか。
「じゃあ誕生日って何するんですか?」
「ウチの場合はその子の好きなものが晩御飯のメニューになったりしてるね。マリィの時は羊肉の煮込み作ったげたし」
あれ、そう言えば2月ごろに、羊肉の煮込み料理が大量に出てきた日があったっけ。
まさか……
「もしかしてマリィちゃんって」
「あの子は2月が誕生日だよー。7の日がそう」
いやぁぁぁ!!!
やっちゃったよ。私ったらお世話になってる家の子の誕生日気づかなかったじゃん!!
しかも今は一応妹なわけだし薄情なお姉ちゃんだぁぁぁ!!
「ち、ちなみに私、他の子の誕生日とかスルーしてないですよね?」
「んー、『一応』はね。ベルが1月だけどリンシアが来る前に誕生日迎えたしね」
よし、ギリセーフ!!
何か『一応』が気になるけど聞くのが怖いから止めておこう。
君子危うきにというもんね。
「後は誕生日と言えばそうだなぁ。ガチ試合とかしてるよね、ウチの子達」
「それは日常的にやってますよね?」
ナギさんは『まーねー』と苦笑する。
「そうだなぁ。とりあえずタイガが喜びそうなことしてあげたらいいんじゃない?」
「えーと、例えば?」
「うーん、○○とか△△とか××とか」
すいません。ちょっと伏字にしないといけない様な単語が次々と繰り出されています。
絶対しちゃダメだと思う。
「ナギ、あなたは彼女に何を教えてるんですか?」
セシルさんがあきれ顔でキッチンへ来る。
良かった救いの手が差し伸べられたよ。
「困ってるじゃないですか」
「えへへー、ごめーん」
「ありがとうございます。セシル………『ママ』」
ママ呼びをするとセシルさんはにっこり上機嫌な様子になる。
ちなみにセシルさんは最初、私を養子にすることに難色を示していた。
その理由というのが私が養子になったら長女となりユズカちゃんが『3番目』でなくなるという脱力ものだった。
クリスさんが特別養子縁組なのであくまで扱いは『養子』。ユズカちゃんが3番目の娘であることに変わりないと説明すると『なら問題ないです』とあっさり認めたんだけどね。
ちなみにダメ押しでタイガ君が三男。つまり『三男の嫁』と言われるとセシルさんは『あたしの娘にします!!』と興奮していた。
ちょっとこの人、病院に連れて行った方が良いんじゃないかと思う時があるんだけどなぁ……
「タイガはまだ成人じゃないんですからそういう事をしちゃダメでしょう?」
「うーん、でも婚約者同士ならそういうことになっちゃっても、ねぇ?」
「まあ……それは確かにですけど」
ダメです!何か納得しないで!!!
「まー、冗談はこのくらいにしとこうか」
ナギさんが言うと冗談に聞こえないから怖い。
「デートしてあげるとかいいんじゃない?」
「ああ、そうですね。それいいかも」
デ、デートですとぉぉぉぉ!!?
デートと言えば一緒に色々な所回ったりご飯を食べたり………あれ?
いつもやってないかな、それ?
だって私が出歩く時ってタイガ君の存在は必須。
一応、職場までは何とかほぼ迷わず行けるようになったけどさ。
「とりあえずさー、いつもと違う服とか着てあげたらデート感あるよねー」
「そうですね。そうなるとやはり……」
ちょっと待って。何か怖いんですけど?
「特殊衣装だね」
「ええ、特殊衣装は間違いなくタイガの性癖にぶっ刺さります」
えぇぇぇぇぇっっ!?
「ちょっ、待ってください。どういうことですか!?」
「タイガってホマによく似てるからねー。メイド服とか好きだよねー」
つまりあれですか、コスプレ!?
「ええ。父親そっくりです。前に戯れでウサギスーツを着た時はジェス君が大喜びして危うくこの歳でもうひとり産むところでした」
ウサギスーツって要するにバニースーツだよね?
しかもこの歳で、だから最近って事だよね?
「その時、お姫様抱っこで連れていかれるあたしにタイガが食い入るような視線を向けていました。あの子は間違いなく父親と性癖が同じです」
タイガ君、意外にエロガキだったぁぁぁ!!!
というかそれはやっぱり危ないんじゃない!?間違い起きたらどうするの!!?
「とりあえずどの辺りから攻めます?」
「そーだね、やっぱメイド服とか?」
「それはありきたりすぎますよ。そうですね、あっ、警備隊の制服なんて意外と興奮するんじゃないですか?」
「猫耳とかいいかなぁ」
興奮させちゃダメです!!
彼が成人するまでは清い関係で居ないと!!!
ていうふと思ったけどもしかしてこの家、そういう衣装が普通に置いてある!?
結局、やってきたフリーダさんに2人が叱られる事で事態は一応の収拾をみせた。
「まったく、あんた達は悪ふざけが過ぎる!!」
良かった。フリーダさんはまともだったぁ。
「でも、確かにタイガはそういうの好きだな。間違いない。その辺は完全にホマレそっくりだ。ちなみにホマレは胸フェチだ。タイガは割と尻が好きかもしれないな」
悲報、タイガ君とお父さん、性癖を暴露されています。




