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第61装 伸ばした手の先、運命の瞬間

タイガ、男を見せる時!


 あたしは災禍司祭ネメシスとガッツリ組み合った


「身の程を知らぬ小娘め! この私の力を思い知るがいい!」


「くっ、力が強い!?」


「骨だから非力と思うたか?甘いわ?」


「あうっ!?」


 力比べで押し負け、蹴りを喰らい後退するがそのまま地を蹴りローリングソバットを放つ。

 しかしネメシスはあたしの蹴り足を掴むと、組み付いてきた。


「ぬうりゃあああ!!」


「くあっ……!?」


 そのまま力任せに地面に叩き付けられ、バウンドするもすぐさま体勢を立て直す。

 そこにネメシスの拳が迫った。


「こんなもの!」


 ネメシスの腕を取るとアームロックを極める。だが……


「ふん、小賢しい」


「なっ!?」


 あっさりとロックから抜け出し、逆にヘッドロックを仕掛けてきた。

 そしてそのまま左右にあたしの身体を荒々しく振り回して投げ飛ばす。 

 こいつ、やっぱり特別な奴だけって強い!!


 地面を転がりながらも立ち上がるがネメシスは両刃の鎌を取り出すと、それを構えながら突撃してきた。ちょっ、武器って反則じゃない!?

 鎌の一撃をもろに食らい装甲を切り裂かれながらのけ反り倒れる。

 何とか立ち上がろうとするがダメージが大きく膝を突いてしまう。

 そこへさらに追撃してくるネメシス。


「どうした、人間!さっきの威勢は何処へ行った?」


 叫びながら大上段から振り下ろされる鎌。

 腕をクロスして受け止めるがその衝撃は凄まじく、地面が陥没し亀裂が走る。


「……まだだ!あたしがリンシアさんを救うんだ。暗闇から助け出して見せる!!」


「なにぃ!?」


 あたしは全身の力を振り絞り、受け止めたままの鎌を押し返すとタックルして抱き着く。

 そして空中へ放り投げると追いかけ自分の肩の上に魔人を仰向けに乗せ、聖女バックブリーカーの態勢に極める。


「これでっ!!」


「ふふっ、その技は『欠陥品』の目を通して観察済み。私には効かぬ!!」


 言った瞬間、ネメシスの身体が燃え上がり赤熱化した。


「あううっ!!?」


 あまりの熱さに手を離してしまい技が解ける。


「すべては無駄!カニガサカ・リンカの絶える事の無い絶望は私の糧となり無限の力を与える。さぁ、貴様も絶望しろ!!!」


 ネメシスは逆さ状態で今度はあたしを聖女バックブリーカーの態勢に極めるとそのまま落下していく。


「止めろ、止めてくれリンシアさんッッ!このままじゃ姉さんがっっ!!!」


 地上で拘束されているタイガが叫ぶ。

 ダメだ!逃げられない!!!


「奈落の墓標堕とし!!!」


【タイガ視点】


 災禍魔人ネメシスの技、『奈落の墓標堕とし』が炸裂し姉さんの変身が解けていく。


「あぐっ、ぐっ……がはっ!!」


 姉さんが血を吐き、白目をむきながら力なく横たわる。

 その目は焦点が定まっておらず、口や鼻から血を流し、ビクビクと痙攣していた。

 姉さんが……負けた!?


「ふふっ、これが災禍司祭である私と貴様の実力差というわけだ。無謀な戦いだったとあの世で悔やむがいい!!」


「嘘だ!姉さんが、姉さんが負けるわけ。死ぬわけがない!!」


「タイガ。元はと言えばお前の浅はかな行動が全ての原因よ。惚れた女の誘惑にホイホイついてきた挙句、姉が命を散らす。あぁ、何て不孝ものな弟だろうなぁ」


「リンシアさん、お願いだ。元に戻ってくれ。あなたは……」


 魔人は嘲笑する。


「いい加減、夢を見るのは止めろ。お前が惚れたリンシアは男を誘惑して子を成す為だけに作られたが目的すら果たせなかった『欠陥品』の人格。圧倒的な絶望の前に奴という人格は既にチリと消えている」


「違う!消えたりなんかしない!!」


「哀れな男だ。現実を直視しろ。奴はお前のような弱者を弄び悦に浸る下劣な女。そして、私の糧となり消えた。それが現実だ」


「黙れ!!例え、リンシアさんが何者であろうと俺にとって初恋の人なんだ!これ以上、俺の大切な人を侮辱するんじゃない!!」

 

「やれやれ、知能が低いサルはこれだから……」 


 そんな中、声が聞こえた。


「リ、リンシアさんを……あたしのバディを、侮辱……するなっ!!」


 見れば姉さんがゆっくりと起き上がろうとしている。


「馬鹿なっ!?さっきの技は完璧に決まった筈!なのに何故!?いや、待てよ。インパクトの瞬間僅かな違和感が……」


「技が炸裂する直前、あたしをホールドしていた腕が緩んだの。だから威力を出来る限り流す受け身が取れた」


「何故そんな事が………」


「リンシアさんが、彼女が力を貸してくれた力を振り絞って身体をコントロールしたのよ!!」


 姉さんが完全に立ち上がる。

 リンシアさん。やっぱりあなたは……


「馬鹿な!何故だ、お前達はまだ会って一年も経たない浅い関係に過ぎないんだぞ!?それなのに何で赤の他人ごときの為にそこまで出来る!!?」


「時間なんて関係ない。あたしが目標とする人は、バレッタママはほとんど赤の他人でしか無かったあたし達の為に命を懸けて戦ってくれた」


「そんな……理解できぬ。何故、そんな事が……何だ、身体に力が……」


 苦しむネメシス。

 ふと気づく。俺の拘束が弱まっている。

 今なら抜け出せそうだ。でもその後は……俺は……


「ふんっ!!!」


 拘束を力任せに外すと俺は地面を滑り母さんから貰った剣、『ノヴァ』を手にする。

 上手く行くかわからない。ほとんど勘のようなものだ。

 だが俺の想いが、リンシアさんへの想いが本物なら、奇跡だって!!!


「うおおおおおおっ!!」


 狙うは以前俺が知らずに傷つけてしまい完治していない右わき腹。頼むっっ!!!


「ぬおおおっ!!?」


 右わき腹から入った刃を斬り上げ、ネメシスの大きく身体を裂く。

 裂け目から見えたのは……


「リンシアさんッッ!!」


 俺は『ノヴァ』を投げ捨てネメシス内部に居るリンシアさんの腕を掴みとこちらに力一杯引き寄せる。


「タイガ君!?」


 よしっ!リンシアさんだ。

 俺の知っている、俺の大切なリンシアさんだ。


「離しません!絶対に戻って来てもらいます!リンシアさんが居ない世界なんて俺には耐えられない!」


「えっ、あっ……でも……」


「まだ何も始まってません!これからなんです!絶対に俺に惚れさせて見せる。絶対に!!!」


「返すものか!こいつの身体、返してなるものかぁぁぁ!!!」


 半分ほど出かかっていたリンシアさんをネメシスがすごい力で取り戻そうと吸い込み始める。


「タイガ君……」


「離しません。絶対に……」


 だけど引き寄せる力が強すぎる。

 このままじゃリンシアさんの手を離してしまう。

 ゆっくりと確実にリンシアさんの手がすり抜けようとしていく。

 ユズカ姉さんはまだきっちり動ける状態じゃない。

 ここまで来たのに。救えないのか!?

 こんなのって………あと少し、あと少しなのに!!


「お兄ちゃん、リンシアさんッッ!!」


 声と共に俺と共にリンシアさんの腕を掴むのは……末妹のマリィだった。


「マリィ!?無茶だ!!」


「無茶なんかじゃない。リンシアさんには帰って来てもらうの!私の名はレム・バレッタ・マチルダ!心に輝く光を以てみんなを守った勇敢な女性の娘なんだからぁぁぁぁッッ!!!」


 マリィを支え引っ張る腕が見えた。

 あれは……バレッタママ!!!

 リンシアさんの身体が少しずつこちら側に戻って来てそして……


「うわぁぁぁっ!?」


 魔人の身体から完全に分離してこちらに倒れ込んで来た。

 リンシアさんが涙を流しながら俺の胸に縋り付いていた。


「ごめんね。みんな……今まで騙してて……」


 俺はリンシアさんの頭を撫でた。


「おかえりなさい、リンシアさん」


 リンシアさんは泣きながら頷いた。



次回は色々やりたい放題です。

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