第60装 頼もしき増援達
こういう展開って興奮しますよね。
【ユズカ視点】
真っ赤な蝶の羽ばたきに導かれ、あたしは突き進む。
この先は、確かフィリーママの故郷、オンデッタ村の跡地。
なるほど、タイガらしいね。
「そしてやっぱり……こうなるよね……」
腰から翼が生えた奇妙な形の髑髏怪物の群れが立ちふさがっていた。
軽く見ても20体は居るか。
更にはクマほどもある大きさの髑髏怪物も数体いる。
「この先にタイガたちが居るって事で間違いないよね?」
「その通りだがお前の道はここで終わりだ。この美しいワタシが阻むのだからな」
槍を手にした災禍魔人も立ちふさがっていた。
「我が名は美しき災禍、名をフーティエッッ!!」
「災禍魔人……フーティエ!!」
フーティエは自身の筋肉を眺めながら言う。
「この先に居る者の邪魔はさせぬ。絶望に苛まれ続けるあの女はあやつにとって最高の餌場なのだからな」
「あやつ?リンシアさんの事?いや、リンシアさんに憑いている災禍魔人?」
「そうだ。やつは災禍魔人の中で特別な存在。絶望や後悔、悲しみを糧とし新たな災禍を生み出す災禍司祭。その名はネメシス!!!」
何かとんでもないの憑いてない!?
「元々ネメシスはあの女の中で眠っていた。だがとあるきかっけで最高の餌が供給される事となり目覚めたわけよ」
「ある出来事……カニガサカ・リンカの転生」
「絶える事の無い絶望を抱えた異世界人の魂によりネメシスは力をつけていった。そして完全復活も間近となっている。最後の絶望によってな」
「最後の、絶望?」
「あやつは女に言った。災禍を生み出す自分の力を以てすれば死した幼子に再会できると。だからなるべく死した子に似た者との間に子を成せと」
まさかそれがタイガ。
彼女はタイガとの間に子どもを!?
はっきり言って犯罪なんですけど!?
いや、この際そこは触れないでおこう。
「でも本当にそんな事が」
ククク、とフーティエは心底面白そうに笑った。
「出来るわけが無かろう。だがあの女は信じた。そしてあのガキを連れ去ったわけだ。ああ、実に愉快だな。実は成功しないと知った時の絶望はどれほどのものだろうか?」
「あんたッッ!!!」
怒りが沸き上がってきた。
僅かな縋りつく彼女の心を弄んで……
「お前達と交流していたあの『欠陥品』と呼ばれていた女。あれは『欠陥品』ながら良い働きをした。あの少年を惚れさせ連れ出すのを容易にしたのだからな。さて、それでは美しい終わりへの序曲を奏でようとするか」
髑髏怪物たちがあたしを取り囲むように動く。
「さぁ、行け!髑髏獣どもよ!!」
号令をかけるフーティエ。
怪物の1体が飛びかかろうとした瞬間、飛んで来たナイフが獣の額を貫き撃ち落した。
「なっ!!?」
今のは……
「うんうん。随分と可愛くない連中だね」
ナイフを空中で弄びながらやってくる水色の髪をしたあの人は……
「オージェ君!?」
兄の親友、オージェ君だ。
「やっほー、ユズカちゃん。アルに頼まれて俺も手伝いに来たんだよね。リンシアには世話になっちゃったしね」
「でも、こいつら災禍獣なのに何でナイフなんかで」
「まー、色々あってね。俺のナイフはこいつらを穿つ刃となるよ?だからほら、ここは俺『達』に任せて先に行きなって」
ウインクしながらオージェ君が微笑んだ
「え?俺『達』!?」
「てやぁぁぁっ!!!」
空中で回転しながらかかと落としで髑髏獣を粉砕したのは……
「ベル!?」
『折神』の異名を持つあたしの妹。
「リンシアさんが居なかったらボク、大変な事になってたからね。マリィとまた笑いあえているのもあの人のおかげ。だからきちんとお礼しなきゃね。欲を言えばついでにお義姉ちゃんになってもらおうかな」
大型髑髏獣に金棒がぶっ刺さり飛び込んで来たシフォンちゃんが力任せに髑髏獣を粉砕した。
ちなみに血縁二人は純粋な『物理』で敵を倒している。
「だらしねぇ!そんなザマならあたいがタイガを貰っちまってもいいんだよなぁ、リンシア!!」
「シフォンちゃん、タイガの事好きだったんだね。ボクは君が義理の姉なのは嫌だよ?」
「バ、バッカ!あれは子分としてというか……」
何かシフォンちゃんが顔を真っ赤にしてる。
「何やってやがるユズカ!さっさと先に行ってやれっての」
「み、みんな!ありがとう!!!」
皆に礼を言い駆け出すがフーティエが立ちふさがる。
「先には行かさん!!」
だが槍はあたしに届くことはなく間に入ったフードを被った人物に受け止められた。
「何だ!?」
「ウォホッホッ、決戦の地へ向かう英雄を邪魔立てするとは美しくないなぁ、フーティエよ」
「な、何だ貴様はぁ!!?」
いきり立ったフーティエがフードを剥がす。
そこに居たのは……
「秩序の守り人ラーヤッッ!正義の為に助太刀させてもらう!!!」
以前あたしが倒したはずの魔人ラーヤがフーティエを蹴り飛ばす。
「へ、変態さんっ!?」
「何ッ!?おい、フーティエ。年頃のお嬢さん相手にその格好。貴様には恥という概念はないのか!!!」
「「「お前もだよ!!!」」」
後ろで3人が叫んだ。
「あの……何で……確かあなたは……」
「うむ。確かに我はそなたに敗れた。だが命は散らず警備隊に捕まり治療を受けていたのだ」
あっ、そう言えば消えてなかったけ。
何か担架に乗せられてた気がする。あんまり気にしてなかったから忘れてたけど。
「そして回復した我にそなたの父から取引が持ち掛けられたのだ。釈放する代わりにそなたらの力になれ、と」
「お父様が……」
「ラーヤ、貴様ぁ!人間などに味方をして、恥知らずが!!」
「恥だと?ふふっ、我はこの少女との戦いで自分の新たな可能性を感じる事が出来た。正義の為、友情の為、我は助太刀するのだ!!!」
ちょっと今、『キュンっ!』ってしたんだけど、あたしおかしいのかな?
「さぁ、行け!レム・ユズカよ。ここは我と+3人に任せるがいい!!!」
「「「誰が+3人だ!!?」」」
背後でツッコミが起こる。
「ありがとう。みんな、誰も死なないで!!」
あたしは4人にこの場を任せ村へと駆け出すのだった。
□
村の中央へ行くとタイガを黒い縄で縛っているリンシアさんが居た。
「見つけたよ、タイガ。それに、リンシアさん!」
「チッ、来たか。ユズカ」
舌打ちする彼女はあたしの知るリンシアさんじゃない。
「あなたがカニガサカ・リンカ、なのね。基本人格の」
「何だ、知っているのね。話が早いわ。あなた達が『リンシア』と呼んでいたのは『リン』。新たな子を授かる為にだけ作り上げた人格よ。まあ、とんだ『欠陥品』だったけどね」
欠陥品……
「違うよ。リンシアさんはわかっていたの。どんなことをしたって死んだ息子さんは戻ってこないって」
「戻って来るわ。新しい子にも『冬馬』って名をつけるの。そして今度は二度と失わない様に大切に大切に育てるのよ。あの子は戻って来る。お散歩をしたり、一緒にご飯を食べたり、また親子としての時間を過ごせるの」
「止めてくれ。姉さんの言う通りだ。俺だって生まれる前に死んだおばあちゃんに会いたいって何度も思ったさ。じいちゃんだってそうだ。だけど……」
「戻って来る!戻ってくるのよ!生意気言わないで、あなた達に何がわかるの!?あのクソ共みたいに私の心や息子の命を踏みにじって!加害者にも未来がある!?じゃあ、あの子はどうなるのよ!あの子は、あの子が失った未来はそんな言葉で片づけられるようにものじゃないのよ!!!」
怒りの形相でリンカが叫ぶ。
「あたしは子どもとかいないからあなたの気持ちはわからない」
「当然よ!この怒りも悲しみも私のもの!!安っぽい同情なんていらない!!誰にもわかりゃしないの!!!」
「そうだね。わかるとかは言えない。嘘になるもん。だけど、これだけは言える。あなたは『タイガを見ている』?」
「!?」
「あなたが息子さんを取り戻すために利用していようとしているあたしの弟を見ている?あなたが『欠陥品』と呼んだ女性を本気で好きになって守ろうとしてくれたタイガを、あなたは見ているの!?」
「あぅ……ううっ……」
あたしの言葉にリンカが頭を抑えうずくまる。
「ユズカちゃん……タイ……ガ君」
「リンシアさん?俺です。タイガです。俺、何も知らないガキだった。だけどあなたの事が本当に好きなんです。だから、戻って来てください!カッコ悪い事言ってるけど、本気なんです!!」
「ううっ……止めろ。『欠陥品』が、『欠陥品』が表に出てくるなぁぁぁぁ!!!」
絶叫しながらリンカが魔人へと変貌した。
「災禍司祭、ネメシス!」
「いかにも。私はネメシス。お前は眩しい。眩しくて実に不快だ。その輝き、この場で完全に消し去ってくれるわ!!」
疑似聖装して災禍司祭とがっちり組み合う。
「そうはさせない!あなたを倒して、リンシアさんを……あたしのバディを取り戻す!!」




