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第55装 力ある者の宿命(※)

タイガが新しく手にした守る為の力。だけどそれを最初に向けた相手は……

【タイガ視点】

 

 時は朝までさかのぼる。

 その日の朝早く、俺は母さんに呼ばれた。

 母さんはいつになく真剣な表情で俺に座るよう促してきた。


「えーと……俺、何かしちゃったかな?」


「何だよそれ。身に覚えでもあるのか?」


 いや、ないけどさ……。


「じゃあ、どうして呼び出されたのかなって」


「渡しておくものがある」


 言うと母さんは一振りの剣を俺に差し出した。


「剣?」


「災禍獣との戦いに巻き込まれることが多いからな」


「いや、でも……災禍獣には……」


 あいつらには『聖女の力』でないと対抗できない。

 普通の攻撃なんか殆ど効果はない。


「だから、自分には無理だと指をくわえているのか?」


「え?」


「守りたいものがある時、お前は指をくわえて見ているだけなのか?いや、それもひとつの道だと思う。だけど、あんたはわたしと父さんの息子。誰かの為に振るうべき力を持っているんだ。だからこそ、これを用意した」


 母さんは剣を指さす。


「こいつはな、『聖鉄』と呼ばれる特殊な金属を使っている剣だ。わたしが父さんと冒険者をしてた時に使っていた『サンダージャベリン』、そして父さんがその時に持っていた『ナイトサーベル』を潰して混ぜ込んだ」


「なっ!?それって母さん達にとって大切なものじゃないか!!?」


「ああ。大切な想い出だ。だから使ったんだ。もっと大切なお前という宝を守る為にな」


「あっ……えーと……」


 正面切ってそんな台詞吐かれると何というか……


「その、言ってて恥ずかしく……」


「ないっ!いいか、今の台詞を恥ずかしいと思っているならそれはお前がまだまだガキだって証拠だ」


「うっ!!」


 こ、これは言い返せない。


「大切なものを守りたい。その想いに恥ずかしいも何もない!必要なのは強い想いと『力』だ。だからその剣、『ノヴァ』にわたし達の想いを託した」


「『ノヴァ』……」


「そうだ。『ノヴァ』。えーと確かあの、あれだ。凄いあれを意味する言葉でその……」


 母さんは苦い顔をしている。


「『新しい星』って意味だよ。フィリー」


 横からナギママが助け舟を出してくれる。


「それだ!!」


「…………」


 きちんと決まらないなぁ。


「……ありがとう、母さん」


 俺の新しい力、『ノヴァ』を手に取る。

 驚いた。まるでずっと扱っていた様なそんな風に手に馴染む。

 これで俺にもリンシアさんを守る事が出来る。


 そしてその日、俺は姉さん、そしてリンシアさんと共におじさんを訪ねるのだった。


【ユズカ視点】


 マズイ、『聖装』出来ないのに災禍魔人2体だなんて!!

 というかこの髑髏魔人、何処から出てきたの!?


「ちょっと待って!2対1は流石に」


「問答無用!」


 災禍魔人ブージャは角で貫かんと突進を繰り出す。

 攻撃を何とか避けるがそこへ髑髏の魔人が仕掛けて来たラリアットを避けられずモロに喰らってしまった。


「あうっ!?」


 そのまま地面に叩きつけられる。


「欠陥品……」


 髑髏の魔人が呟く。


「え?」


「生まれて来た本来の目的も果たせず……もはや欠陥品に任せてはおけぬ。私が……私があの子を……ああっ!!」


 髑髏魔人は頭を押さえながら苦しそうに叫ぶ。


「苦しんでる?こいつ一体……」


「よそ見をするな!!」


 振り返ると背後から魔人ブージャがローリングソバットを仕掛けて来る。


「しまっ……」


 避けられないと思った瞬間、目の前に結界が張られ蹴りが弾かれる。


「これは!?」


「やれやれ、随分とマゾいプレイをしている様だね、我が姉は」


 上を見上げると空中に結界で作った足場をゆっくり歩くカノンの姿があった。


「カノン!」

 

 カノンは私の前に飛び降りると微笑む。


「無事で何よりだよ、ユズ姉。ところで……リンシアさんはどうしたのかな?」


「それがわからないの。はぐれちゃったみたいで」


 ふむ、とカノンは未だ苦しむ髑髏魔人の方に目をやる。


「……まさか、な」


「え?」


「推測の域を出ない事は話さないよ。それよりユズ姉、今のままでは戦えないだろう?これを」


 カノンは中央のバックルに青い宝玉がついたベルトを差し出す。


「何これ?」


「パパのやママの力を参考に作った疑似聖装装置。まあ、負荷は強いがこの際仕方ない」


 この子は何でも作るなぁ。

 でも……


「わかった、ありがとう!!」


 ベルトを受け取ると腰に巻く。

 瞬間、身体が沸騰しそうなくらい熱くなる。


「うぐっ!?……こ、これは!?」


 まるで身体の中を何かが這いずり回る様な感覚に襲われる。

 でも負けない!あたしがここで立ち止まったら零れ落ちる命がある。

 だからっ!!


「聖装ッッ!!」


 叫んだ瞬間、光が私を包み込む。

 その光の中で私は全身が鎧に包まれるのを感じた。

挿絵(By みてみん)

「これは……」


「パパの変身がこんな感じだね。そうだね、名付けて『光の戦士ヴァルキュリア』かな?」


「ヴァルキュリア……悪くないね」


「姿が変わった?ここからが本番というワケか!!!」


 魔人が角を突き立てようと突撃して来る。

 本当にこいつこればっかりするなぁ……。

 あたしは軽くジャンプするとすれ違いざまに胴へキックを放つ。


「ぐはっ!?」


 体勢を崩す魔人だがすぐパンチを繰り出して来る。

 あたしはその腕を取り引くと膝で顔面を打つ。


「ごぁっ!?」


 顔を押さえながら後ずさる魔人。


「おのれぇぇぇええええっ!!!!」


 怒り狂ったのか闇雲に殴りかかって来る。

 それを躱しながら反撃を叩き込む。

 段々と動きが読めて来たかも。それに『疑似聖装』のおかげで対応できるようにもなってきた。

 あたしは攻撃を避け背後に回るとスリーパーホールドで首を絞めながら持ち上げ背後へ反り投げ脳天を地面に叩きつける。


「ぬぅぅっ!?」


 激突の衝撃で魔人の角がへし折れた。

 最大の武器を失いつつ立ち上がった魔人はフラフラとおぼつかない足取りだ。今なら……!

 魔人に組み付くと抱え上げ方に仰向けに乗せ相手の背中を弓なりに反らせる。


「聖女バックブリーカーッッ!!!」


「!!!!?」


 魔人が声にならない叫びを上げながら血を吐く。


「な、何だこいつ。人間の癖に……」


 そのままがくりと動かなくなり、私はホールドを外し魔人の身体が地面に落ちた。

 これで後は髑髏魔人だけ!!そう思った瞬間、視界がぐらりと揺れる。


「マズイね、制限時間が来たか」


 カノンが指を鳴らすと疑似聖装が強制解除されあたしは元の姿に戻る。

 同時に力が抜けその場に膝をつく。


「カノン、あたしはまだやれるから」


「それは聞けないね。開発者として、何より妹として、ね」


 でも……

 髑髏魔人が手にエネルギーを集中させている。


「おや?」


 そんな髑髏魔人の背後からタイガが飛び込んで来て……


「『大巻波だいかんぱ』ッッ!!」


 すれ違いざまに剣を抜き髑髏魔人の右わき腹を斬った。


「グゥゥゥ!?」


 突然のダメージに呻く魔人。


「姉さん、リンシアさんは!?」


「えっ、途中に居なかったの!?」


 まさかガチで迷子に!?

 もしくはどこかで倒れてる?


「アァァァ……」


「早くこいつを倒してリンシアさんを探しに行かないと!!!」


 タイガが剣を構え髑髏魔人に斬りかかろうとする瞬間、横でカノンが叫んだ。


「タイガ、ダメだ!その魔人はもしかしたら!!」


「え!?」

 

 カノンの言葉でタイガは魔人から距離を取った。


「カノン、どうしたの!?」


「そ、それは……な、何でも無いよ」


 カノンは下唇を噛み黙り込んだ。


「ウゥゥ……欠陥品。欠陥品のせいで……」

 

 髑髏魔人はよろめきながらも煙幕を張り逃亡する。

 同時に災禍フィールドが解除された。


「逃げられたか……そうだ俺、リンシアさんを探して来る!!」


「私も行こう。確かめたいことがある」


 タイガとカノンに捜索を依頼したあたしは魔人に襲われていた同級生を探す。

 建物の陰で丸まって震えている彼を見つけると声をかけた。


「大丈夫だった?怪我はない?怪物はもう居ないから」


 近寄ろうとしたあたしの手を彼が振り払うと手の甲に鋭い痛みが走った。

 見ると手に一筋の切り傷が出来ていてそこから血が滴っている。

 どうやら爪か何かで引っ掛かれたらしい。


「こ、来ないでくれ!!化け物!」


「え?」


「あんなのと戦えるなんて、お前だって十分化け物じゃねぇか!!」


 恐怖で錯乱している彼にはあたしの声は届いていないようだ。


「化け物って……」


「近寄るな!お前らみたいなのが居るから、ああいう化け物が出てくるんじゃないのか!?」


「そんな事は……」


「普通じゃないんだよお前らの家って!元々平民上がりの成金一族の癖に……俺達みたいな普通の人間を巻き込むんじゃねぇ!!!」


「ッ!!」

「覚えてろよ、化け物め」


 捨て台詞を吐いた彼は立ち上がり走り去ってしまった。残されたあたしは呆然と立ち尽くすしかなかった。『普通じゃない』『平民上がりの成金』。その言葉が胸に突き刺さる。

 確かにうちは昔から続く由緒正しい名家なんかじゃない。それはおじい様やおばあさまが頑張って基礎を作ってくれて、お母様たちがそれを守ってきた結果だ。


「はは、『化け物』か……」


 流石に効くなぁ……


「だとしても、守らない理由にはならないから」


 わかってくれなくてもいい。

 それが力を持つ者の宿命というなら……


【カノン視点】


「リンシアさん!!?」


 タイガと共に探していたが彼女はすぐ見つかった。

 植え込みの近くで隠れるように倒れていた。

 

「姉さん、誰か呼んで来てくれ!酷いケガだ!!!」


 パニックに陥るタイガ。

 彼女は『右わき腹』に大けがを負い出血していた。つまりこれが意味するのは……


「やっぱりあなたは………」 


 どうすればいい?私はこの事実をどう……

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