第51話 とてもダメそうな場所に来ちゃいました(※)
【リンシア視点】
ユズカちゃん、タイガ君と共に私は郊外のある場所を訪れることに。
最初、フリーダさんが『タイガをあそこに行かせるのはなぁ……』と苦い顔をしていたけどどうもユズカちゃんだけに任せるのはまずいという判断らしくタイガ君も同行してくれることとなった。
「ねぇ、タイガ君。それでここって……」
案内されたのは古びた教会。
何かあちこち崩れていてちょっとした遺跡っぽいんだけど……
「はい。ここは『愛の夢』っていう名前の施設です」
うん。何かそこはかとなくイケナイお店の雰囲気漂ってるんだけどな。
いやだってさ、敷地の入口に『料金表』の看板置いてあったよ?
しかもその料金表がさぁ……
・30分:4,500ゴルト
・60分:9,000ゴルト
・120分:16,000ゴルト
・180分:24,000ゴルト
・それ以上:要相談
とか書いてあるんですけど!?
これってもしかしてじゃなくてあれだよね?
12歳のタイガ君連れて来ていい場所なのかな?
「あ、あのぉ……タイガ君。そ、その……ここは子どもが入ってもいい場所なの?」
「うーん、あまりいい顔はされないですね」
でしょうね!!だってどう考えてもアレなお店だもん!!
いや、詳しくは知らないんだよ?本当だよ?
タイガ君もそうだけどユズカちゃんだって連れて来ていい場所じゃないよ!?
「時々立ち入り調査とか入るらしいです」
アウト―ッ!!
完全にアウト―ッ!!
私、立場上ここを摘発する側だと思うの。
「ただ、この施設は綺麗なお姉さんが多いんです。お金を払うと個室に通されてそこでサービスを受けられますから、それ目当てで来る人が多いんですよ」
だからアウトだって!!
後、タイガ君何で知ってるのよ!?
まさかこの国ではそういうのOKなの!?
「おっ、誰かと思えばレム・ユズカじゃねぇか」
声をかけてきたのは右眼にアイパッチをして左側はメガネ。
海賊の船長みたいな恰好をした中年男性だった。
その顔を見たユズカちゃんの顔に緊張が走る。
凄い。あの無邪気極まりないユズカちゃんが緊張するなんて。
「タイガ君、あの人知ってる?」
「ええ。知り合いです。通称『赤槍のエイヴリー』…………」
ヤバイよ。何か別ジャンルの話にシフトし始めてるよ。
何その二つ名。見た目からしても懸賞金とか掛けられてるアウトローそのものじゃん。
「おおいおい、ここはお前みたいな子どもが来ていい所じゃないんだぜ?」
「うっ……」
「とっとと帰って宿題でも終わらせな。へへっ」
「も、もうやりました」
するとエイヴリーはぎろっとユズカちゃんを睨みつけた。まるで蛇に睨まれた蛙だ。
「……そうかい。そりゃあ偉いこった」
言いながらエイヴリーはポンッとユズカちゃんの頭に手を置く。
そして……
「優秀!先生は感動した!!」
「えへへー」
は?
何か雰囲気変わったんですけど?無茶苦茶嬉しそうなんですけど?
「彼はウチの学校の教師なんです」
先生だった―!?
「数術の担当で赤ペンで凄まじい速度で採点する様子からついたあだ名が『赤槍のエイヴリー』……」
いや、異名の意味そっち!?
ていうか先生がこんな所に来て大丈夫なの!?
教育上よろしくないよね?
親とかにバレたら首になったりしないの。
「そっちの娘は友達かい?ウチの生徒じゃないよな?」
「あっ、紹介しますね、先生。彼女はリンシアさん。ウチに住んでて警備隊で働いているんです」
「警備隊?」
エイヴリー先生の表情が険しくなる。
やっぱりこういう所に居るのはまずい立場なんだよね。
彼はわたしの手を取り真っすぐ見つめ言った。
「結婚を前提にお付き合いしてください」
「断ります」
意味わからん!!
「先生ー、そういうことするからモテないんだよ?男の人から告白とかマジでダサいんだから」
「ううっ、し、しかしだなぁ」
エイヴリー先生はがくりと肩を落としていた。
そう、この国では男性から告白するのは非常にダサい行為として見られている。
恋愛において主導権を握るのは女性。レム家に置いてある女性誌にも『イケてる告白特集』とかあるくらいだ。
「タイガ君、私なんか頭痛くなってきたよ……」
「だ、大丈夫ですか。あの、その……」
何かタイガ君が慌てふためている。
ああ、なるほど。私が先生に告白されちゃったから心配してくれたんだね。
「ありがとう。大丈夫、自分から告白して来る人とか無いからさ」
とりあえずこの国の文化に合わせて言っておこう。
「そ、そうですよね。うん、そう……」
何やら複雑そうな表情だ。どうしたんだろう?
「とりあえずここはダメだと思うの。だって、その……イケナイお店、だよね?タイガ君の教育にも良くないと思うわ」
「え?いえ、占い店ですけど?」
時間が停止した。
「え?」
「占い店です」
お姉さんったらなんて早とちりをしたのよ!?
顔が真っ赤になっていくのが分かるわ! 恥ずかしいぃぃぃっっ!!
「べ、別に私、そういうの詳しいわけじゃ無いのよ!?ホントだからね!?」
「は、はい……」
いや、私は何を言い訳しているの!?
恥ずかし過ぎる!穴があったら入りたいッッ!!!
「こほんっ。そ、そっかぁ。占いかぁ。占い、ねぇ……」
「あ、はい。ほら……」
タイガ君が指差したのは、廃教会の壁にぶっ刺さった『占い』と書かれた看板だった。
そうよね。やっぱり占いよね。物凄く罰当たりな設置のされ方している看板だけど『占い』だわ。間違いないわ。
ああ、何て紛らわしいのよ!!
そんなやり取りをしていると10人ほどの警備隊員が敷地内に踏み込んで来た。
「警備隊だ。立ち入り調査を行う!!!」
摘発してるよ?やっぱりイケナイお店だよね!!?
きっと占い店に偽装したイケナイお店だったんだよ!!!
警備隊の中でひときわ目を引いたのは警備隊を率いるマッチョな男性。
青い兜にセパレートタイプのこれまた青い鎧。
えーと、これ大丈夫?穴に落ちたりトゲにあたったら即死しちゃいそうな人出てきたんですけど!?
「あっ、リ、リトリーバー隊長……」
ユズカちゃんがつばを飲み込むのがはっきりと分かった。
「おや、確か君は長官殿の……」
「ユ、ユズカです。レム・ユズカ!!」
「ああ、ユズカちゃんか。大きくなったね」
「は、はいっ!お仕事、ですか!!?」
「うむ。どうもこの店に逃亡犯が潜伏しているという情報があってな」
摘発じゃないのかよ!!
いや、摘発だったらそれはそれでダメだけどさ!!!
「あ、あの。頑張ってください!!」
「ああ、ありがとう」
何だろう。ユズカちゃんの反応がいつもとなんか違う。
微妙に頬が赤い気がするし……
「ねぇタイガ君……」
タイガ君がものすごく気まずそうな顔をしている。
そしてリトリーバー隊長さんが立ち去った後、その後ろ姿をじっと見ていたユズカちゃんの肩をタイガ君が叩く。
「警備隊関係は止めといた方が良い。父さんが怒るから」
「な、何よ。うるさいわね!!」
えっ?まさか?
嘘でしょ?




