第50装 明日の昼は……
遂に50話突破!
末妹感を出す為、マリィの兄・姉達に対する呼び方を『~ちゃん』に統一します。
過去のものも順次修正していきます。
【マリィ視点】
私のおばあちゃん、レム・リゼットは『未来視』の能力を持っていたらしい。
それは『悪魔の呪い』と呼ばれる特殊な力。
ただ、自由自在に何でも知る事が出来るというワケでもない。
基本的にタイミングも何が視えるかもランダム、しかも必ずその未来が確定するわけではない。
複数に枝分かれした未来の一部を垣間見ることができるというもの。
だから視た未来に振り回される事もしばしばあったという。
実際、その事でおじいちゃんと関係が修復不可能な一歩手前まで行った事もあるとか。
おばあちゃんは晩年、ある程度発動を制御できるようになっていた。
だが、人間の未来とかそんな複雑なものではなく明日の天気だとか人の行動が殆ど関わらない様な事の確認にばかり使っていたらしい。悪魔涙目。
どういうわけかその未来視が私にもできるようになった。
ただ、これがおばあちゃんの者と同じかはわからない。
願う事である程度それに関係した未来が見えるが精度がよろしくないし何より消耗が激しい。
一度発動させたらしばらくは使えない上、かなり疲れる。
戦闘などでは使えないし実用的とは言えない。
でも、気になる。
リンシアさんが怪物に変身してユズカ姉ちゃんと戦う未来。
多分、あれはリンシアさんが魔人に取り憑かれた結果だとは思うけど何でそうなっちゃたのか。
そしてタイガ兄ちゃんとリンシアさんはこの先どうなるのか。
「…………よしっ!!」
私は意を決して未来視を発動させた。
知りたいのは『タイガ兄ちゃんとリンシアさんがどうなるのか?』
□
頭の中に浮かぶヴィジョン。
これは………私達が昔よく行った公園。
そこでアル兄ちゃん、そしてタイガ兄ちゃんが深刻そうな表情で話し合っていた。
二人共今より大人になった感じだ。特にタイガ兄ちゃんは今より30㎝以上も背が伸びていてカッコいい。
「なあ、タイガ」
「……うん」
「今回もまた、言えなかったのか?」
「……ああ、言えなかったよ」
タイガ兄ちゃんが顔を手で覆いながら言う。
「やっぱり、俺には無理なのかな……」
「そんな事はない! お前は立派な勇者だ!」
「ありがとう、兄さん。でもさ、俺はいつも肝心なところで勇気が出ないんだ。だから今回も……」
「大丈夫だ、きっとお前なら言える。だってお前は、俺の弟だぞ?」
タイガ兄ちゃん……もしかしてリンシアさんへ告白が出来ずに悩んでいるのかな?
私としても二人が結ばれたら素敵だとは思っているけど不安もあるしなぁ。
うーん……
「俺さ、明日の昼は……『麺オージャー』がいいんだ」
は?
それって確かリーゼ商会で開発中の簡易麺料理だよね?
鍋で茹でてスープを溶かせばあら不思議、美味しい『オソバー』が出来ちゃうよっていう……
えーとこれはそれが完成している未来?
「馬鹿野郎。俺に言ってどうするんだ。何の解決にもならねぇ。きちんと嫁さんに言え」
「うぅ、でもあの人いつも楽しそうに料理してくれてるし何か悪い気がして……じゃあ兄さんは言えたのか?奥さんに?」
物凄く深刻な雰囲気だけど言っているのはただのお昼メニューについてなんだよなぁ。
「……あぁ、言えたよ」
「っ!!?」
タイガ兄ちゃんが息を呑む。
アル兄ちゃんは思い出し幸せをかみしめる様な表情で言った。
「良かったよ。昨日の麺オージャー」
タイガ兄ちゃんは悔しげな表情でうつむいて………
□□
「ってなんじゃこれ!!?」
どんな未来だよ!?
というかウチの兄たちは何を深刻そうな表情で麺料理の話をしてるの!?
わかったのは二人共結婚はしていて麺オージャーが美味しいけどお昼ご飯にしたいって奥さんに言うかどうかで悩んでいるとかそんなんじゃないっ!!
アル兄ちゃんの奥さんはどうせヒイナちゃんだよ。本当は妹のミズキちゃんのこと好きだけどあんまり好かれて無いもん。
問題はタイガ兄ちゃんだよ!奥さんは誰?リンシアさんと結ばれたの!?
解釈次第ではリンシアさんを諦めて他の女性と結ばれた説もあるんだよ!!
きちんと二人が揃って未来視に出て来てくれないと安心できないじゃん!!!
肝心の所が判んないじゃん!!
「よぉ、どうしたマリィ。困ってることがあるならお兄ちゃんが聞くぜ?」
私が頭を抱えている所にアル兄ちゃんがやってきて声をかけた。
「うるさいバカ兄貴!麺でも好きに食べてたらいいじゃん!!」
「うおぉぉぉっ!?い、妹が反抗期だぁぁぁ!!?何で!?兄ちゃん何したんだ!?母さぁぁぁん!!」
何か泣きながら走っていったけど気にしないでおこう。
うぅっ、これで未来視のパワーが溜まるまでまたしばらくお預けじゃない。
というかタイガ兄ちゃんもヘタレすぎる!!
【リンシア視点】
「男の子の幽霊に悩まされている?」
私の相談にセシルさんが考え込んでいる。
「はい、そうです」
私は最近事あるごとに現れる男の子の幽霊について話す。
「その幽霊は、何か危害を加えてきたのですか?」
「いえ、ただ私を見ているだけです。でもそれが怖いんです。除霊とかそういう事業をリーゼ商会でやってませんか?或いは聖女の力で何とかならないでしょうか?」
「あー、そういうのはやってないですね。モンスター化しているなら聖女の力が行使できたりはしますが今のところ見えているのがあなただけですから」
一応、ユズカちゃんが塩を私の頭に盛ったりしてくれたが効果はない。
あの子、普通に手から塩出すんだよね。もう慣れたから『そういうもんか』って受け入れてるけど。
「セティ、それなら『あの人』を紹介してあげよーよ」
洗濯物を取り込んで来たナギさんの言葉にセシルさんは苦い顔をした。
「あの人、ですか。あたしはイマイチ苦手なんですけどね」
「セシルさん、『あの人』って?」
「夫の知り合いにそういう事が出来る人が居るんですがどうも胡散臭いというか……ダメだろそれは的な」
「しょ、紹介してください!!是非ッ!!!」
「そ、そこまで言うなら……仕方ありませんね」
セシルさんは渋々首を縦に振る。
こうして、私は除霊が出来る人とやらを紹介してもらうこととなった。




