第46装 炸裂!聖女バックブリーカー
完全に少年漫画のノリになっています。
【リンシア視点】
巨大災禍獣を倒し現実世界に戻って来る。
これで魔人は弱体化。ユズカちゃんも何とか対抗出来るはず……
「うおぉぉぉっ!」
空中からフライングボディシザースドロップを魔人ラーヤにかけて逆転に狙うユズカちゃん。
だけど魔人がヒレを開くと落下速度が落ちてしまい態勢を崩されてしまう。
それでもなんとか空中で体勢を整えて、今度は飛びつき腕十字で反撃に出るが……
「そんなくだらない攻撃で……!!」
腕十字も外されそのまま変形バックドロップを食らってしまう。
「ぐあぁっ!?」
攻撃を喰らった事でユズカちゃんがダウンする。
「そんな、力の源は断ったのに!!?」
「ふむ。確かに宿主とのリンクが外れておる。だが甘いな」
魔人は腕を組みユズカちゃんを見下ろす。
「そもそも正義の味方である我は宿主から力を吸い上げて戦うといった姑息な真似はしておらん。この戦い、最初から自身の実力のみで相対しておるわ!!」
そんなっ!!?
それじゃあ私が宿主とのリンクを外した所で弱体化しない!?
何度もすぐに立ち上がっていたユズカちゃんだが今度は立ち上がれず地面で呻いていた。
マズイ、ダメージの蓄積がかさんでるんだ。
「どうした小娘。それが貴様の限界とやらか?」
「ぐっ、あたしはまだ……」
ユズカちゃんはゆっくりと立ち上がる。
そうだ、シフォンちゃんは何を……
「え?」
見ればシフォンちゃんは雑兵を片付けてしまっているが加勢しようとはしない。
まさか、タイマン勝負を見守ろうとしている!?
でもこのままじゃ……
【ユズカ視点】
あれは10歳の頃だった。
強さを求めていたあたしはある人の下に数か月預けられていた。
お父様の妹でありあたしにとっては叔母様にあたる人、公爵夫人パレオログ・レム・ラメール。
限りなく最強の格闘家と謳われたお祖父様に近い女性。
あたしは彼女に鍛え上げられたがそれでも足りないのではないかと不安を感じていた。
そんなあたしに師である彼女は言った。
『あなたの身体に流れるその血。刻まれている遺伝子は間違いなく強者のそれだよ。磨けばどんどん強くなっていく。だけど、それだけであなたが目指す場所にはたどり着けない。埋めようのない男性との体格差、筋力量、かつてあたしもそこで悩んだ。でもそれは本当に些末な事と後に気づいたんだ。強くなるために必要なものそれは……』
彼女はあたしの胸を差し告げた。
『対戦相手への敬意だよ、ユズカ』
【リンシア視点】
どうしよう。
何とか立ち上がったユズカちゃんだけど力の差は明らか。
私に出来ることは……
「手ぇ出すなよ?」
いつの間にか私の背後に立つシフォンちゃんが私の手を掴む。
「え?でも……」
「何かがユズカの中で噛み合おうとしてるんだ。見守れや」
「か、噛み合う?」
「まあ、噛み合わなかったらそこまでだがな」
無責任な!?
「ほう、まだ立ち上がるというのか。だが我が正義の前に貴様は怯えてしり込みするばかりでは無いか」
「た、確かに怖かった。小さい頃、夜道で素っ裸の男に追いかけられたことがあって凄く怖かった。多分、あなたとその人を重ねたんだと思う」
小さい頃に!?
そりゃトラウマになるのも無理ないよ。
「だからかな、あなたという『対戦相手』をきちんと見ていなかった。あなたへの非礼を詫びると共に、ここからは互いの正義を真剣にぶつけ合うっ!!!」
ユズカちゃんは気迫を込めてそう叫ぶと、魔人に駆け寄るとその身体を担ぎ上げると背後に倒れ込みそのままの勢いで魔人の顔面を地面へと叩きつけた。
「くっ、こんな何の変哲もない技なのに、これは……」
立ち上がった魔人の顔面に、渾身の力を込めた拳が突き刺さり、ぐらつく。
「このパンチ、先ほどより遥かに重い!?だが!!」
魔人がヒレを巨大化させユズカちゃんを包み込み拘束、飛び上がると空中で反転した。
「覚醒が遅かったな!このまま地面へ頭を叩きつけて終わりだ!!」
「まーだーまーだぁぁぁぁっ!!」
気合と共にユズカちゃんはホールドから脱出すると自分の肩の上に魔人を仰向けに乗せ、顎と腿を掴み、自分の首を支点とし相手の背中を弓なりに反らせる。
「聖女バックブリーカーッッ!!!」
名前はともかく豪快なバックブリーカーを極めたままユズカちゃんは地面目掛け落下していく。
「なるほど、貴様の正義、確かに我に届いたぞ。この勝負……」
着地と共に魔人の背骨がへし折られる音が災禍空間に響き渡った。
ユズカちゃんが手を離すと魔人ラーヤは地面を転がり倒れる。
魔人は震えながら上体をわずかに起こし、告げた。
「そ、そなたの勝ち……だ。た、楽しかったぞ。強き、聖女……よ……」
そのまま再びダウン、動かなくなった。
これってまさか……
「よくやったユズカ、てめぇの勝利だ!!!」
ユズカちゃんは胸に手を当て魔人に一礼。
「ありがとう魔人ラーヤ。あなたのおかげであたしはひとつ壁を乗り越えられた。あなたに敬意を」




