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第40装 危険と隣り合わせなこと(※)

今回のメインは着物回。

そして超危険人物登場です。

【???】


 ユズカ達が住むノウムベリアーノから大分離れた森の中を一台の馬車が走る。

 中に乗っているのは中年女性とシスター衣装の若い女性。

 不意に、馬車の前に人が躍り出て馬が驚き脚を止める。

 その隙に茂みから飛び出してきた粗暴そうな男達によってあっという間に馬車は囲まれてしまう。


 街の治安はある程度維持されるようになったこの時代でもまだ街道は山賊やモンスターに襲われる恐れがあるなど危険と隣り合わせであった。


「お頭、若い女が乗ってますぜ!!」


 部下の言葉に山賊のかしらフォージが下卑た笑みを浮かべた。


「君達、こういうことしちゃダメだよ?いつか罰が当たっちゃうよ?きちんとまっとうに働かないと……」


「お、お母様。ダメでございまですわ……」


 シスターはどうやら中年女性の娘らしい。

 フォージが嘲笑しながら返した。


「まっとうにとかだるいっての。そんな事よりお前ら娼館に売りさばいた方が楽に稼げるっての。ババァは黙ってな!!」


 彼らは知っておくべきだった。

 山賊行為もまた、『危険と隣り合わせ』という事に。



【リンシア視点】


 ひなまつりという名を冠する『猛者たちの祭典』の翌週。

 リビングの方で女の子達がきゃっきゃっと騒いでいた。

 

 見ればナギさんが着物みたいな衣装をマリィちゃんに着付けしていた。


「えーと、それは……」


 着物だけどそれを言うと転生者って疑われちゃうしなぁ。

 ナギさんはそれを察してくれた様で答えてくれた。


「異世界の衣装をこっち風にアレンジしたもので『キーモノ』っていうんだよ?本当は春のお祭りで着るんだけどウチの子達はあそこで着ると間違いなく汚すからねー」


 その意見には同意します。

 だって格闘技大会だったり大食い大会だったりするからなぁ。


「アレンジしてるから着せやすいんだよねー、これ。流石に元ネタに近いものだったら無理だったけど」


挿絵(By みてみん)


「うはぁ、かわいいー。えへへ……」


 マリィちゃんは飾ってあるバレッタさんの写真の前まで行くとくるくる回って見せる。


「ママ、見て見て。かわいい?」


 マリィちゃん……バレッタさんの件を知ってある後だとちょっと涙出そうになるんだけどなぁ。

 大丈夫、お母さんはちゃんとあなたを見守ってくれているからね?


「ナギママ、ボクはパスだよ。だって動きにくいし女のっ子ぽい服装だから嫌なり」


「ベル、あなた女の子だから……」


 クリスさんが額に手を当てて呆れていた。


「仕方ないなぁ……」


 クリスさんはマリィちゃんを見てほわわーんとした表情をしている旦那さんの方をチラッと見て呟いた。


「あーあ、お父さんがベルのキーモノ姿見たいって言ってたんだけどなぁ。ねぇ、あなた?」


「お、お母さんそれは……」


 慌てるベルちゃんだが既に反応して目が光っている旦那さん。


「見たい!可愛い娘のキーモノ姿が見たいぞ!!!」


「うぇぇ……」


 仕方ないといった様子で観念したのかベルちゃんは大人しくキーモノを着せてもらうことになった。


「うぅ、この状態で攻撃されたら避けにくいしお肉つまめないんだけど」


 挿絵(By みてみん)


「いや、お肉をおやつにするのは止めなさい」


 ごもっともな母親からツッコミを受けつつベルちゃんは『どう?』とほほ笑む。

 うん、もう素直に可愛いわ!!お父さんもメロメロになってるよ。

 何だかこの人、凄く子ども達大好きなパパなんだよね。羨ましい。

 

「ふふっ、それじゃあパパ。これも見てくれないかな?」


 すると今度はカノンちゃんがやって来るが他の2人とはまた違った服装をしていた。

挿絵(By みてみん)

  

「カノン、そ、それは……」


 ナギさんが目を見開いて戸惑っていた。


「どう?パパの居た世界の衣装でママのお古。『ミコフク』とかいうらしいわね。興味深い事に男性に対しクリティカルヒットを出す効果が付与されているらしいの。その効果の程はどうなのかな?」


 カノンちゃんが来ていたのは巫女風の衣装。

 本当にこの世界色々入って来てるなぁ。

 ただ、思いっきり肩が出ていたりしてちょっと叡智な雰囲気だったりする。

 待って。『ママのお古』ってナギさん何着てたの!?


「ま、待ちなさいカノン!それはお前にはまだ早い!!」


 流石に父親としては娘がこんな格好してたらねぇ。


「ママに着てもらいなさい!!」


 いやそっちかい!!


「ふふっ、これはどういう時に着ていたのかな?これをママに返すと何が起きるだろう?そう、例えば弟か妹が増えるみたいな?私の希望はね……」


「はい、カノンそこまでだ」


 後ろからフリーダさんが軽く拳骨してカノンちゃんのあおりを止めた。


「お前の父親はあおりに乗って本当にやりかねないからな?」


「待てフリーダ。幾ら俺でもナギに無理をさせたりはしないぞ?」


 そうだよね。もうナギさんってアラフィフだからね。

 流石にここから新しく子どもは……


「断言できるか?」


「…………多分」


 即答しようよ!

 そして『多分』ってこの人本当にスケベなんだ!!


「そんでもってナギもまんざらじゃない顔するな」


「あははー、バレたかー」


 この家族、本当に楽しそうだな。

 私も選択を間違えなければこんな幸せな人生を送っていたのかも……


『そうやって目を背けて蓋をするんだね。まあ、それがあなたの『役目』だけどね』


 不意に声がした。

 え?今のは……ナギさんの声とかじゃない。

 何か聞いた事ある声だけど……


「ねぇねぇ、リンシアさん見て見て!!」


 はしゃぎながらユズカちゃんがやってくる。


挿絵(By みてみん)


「どう?」


 神よ。ここは乙女が集う桃源郷ですか?

 もう本当に元ミドサーにとって眼福なのよ。

 オッサン臭いと言われようが可愛い女の子が着物ではしゃぐなんて尊すぎるでしょ。


「よし、それじゃあ記念にみんなで1戦しようか!!」


 待って。

 何で着物から一戦という発想が生まれるの?


「ユズカッッッ!!!」


 そしてセシルさんに怒られるまでが一連の流れなんだよな。

 だんだんわかって来たよ、このパターン。


「リンシア、今度はあんただぞ?」


「へ?」


 フリーダさんが手招きしていた。


「ちゃんとあんたの分も用意してるんだよ。年齢だってユズカと同じなんだしお洒落したらいいじゃんか」


「いや、でも私居候だし」


 中身はミドサーですよ?


「いいんだよ。来いって!!」


 半ば強引に着替えタイム。

 そして……


挿絵(By みてみん)


「うわぁ……」


 馬子にも衣装。

 見事に化けた中身アラサーが鏡の中にいるじゃありませんか。

 これが私かぁ……


「すいません。居候なのに……」


「あんたは元々ウチの子になるかもしれなかったんだ。それがこうやってウチで居候してんだしいいじゃないか」


「えっ?リンシアさんそうなの?」


 そう言えば長男君がそんな事言ってたなぁ。クリスさんの養子になる話が出てたとか。

 私は苦笑しながら頷くことに。


「実に興味深い。その場合、年齢的にはあなたが長姉という事になり私達の肩書も変わっていたわけだよね」


 まあ、その辺ややこしかったのリンシアが養子縁組を断った理由なのかな?

 何を考えていたかは記憶同期が上手く言ってないから謎のままなんだよね。


「おーい、手紙が届いて……おおっ!?」


 長男君、次男君、弟君、そしてオージェ君が入って来て着飾った女子達に目を見張る。


「へへっ、全員見事に化けやがったな」


 次男君の叩いた軽口に女子全員の視線が集中。

 彼は『やっべ』と肩をすくめた。


「お前は馬鹿だなぁ。そこはとりあえず褒めときゃいんだよ」


「口に出しちゃってる君も大概だけどね、アル」


 私もそう思う。

 マリィちゃんが思いっきり睨んでるもん。

 オージェ君は私を見ると優しく微笑み言った。


「リンシア、よく似合ってるね」


「え?あ、ああ。どうも」

 

 すると彼の隣にいて何やら祈りを捧げていた弟君が慌てて被せる。


「リンシアさん!凄く似合ってますよ!!もう何というか、凄いです」


 弟君の語彙が死んでいます。


「ああ、そうだ。アリス伯母さんから手紙が……」


 言い終わる前に素早く動いたお父さんが手紙を奪い取り丁寧に封を開け中身を読み始める。

 今の動き……正に歴戦の猛者といった感じだった!流石は長官。


「何て事だ……アリス姉さんが墓参りに帰って来るそうだぞ!こうはしておれん、有給申請をして姉さんをもてなす準備をせねば!!フリーダッ!!」


「はいはい。わかってるって」


 流石夫婦だなぁ。全て言わずとも……か。

 それにしてもこの人、とことん家族想いなんだなぁ。


「ああ、それと姉さんと一緒に『シフォン』ちゃんも来るらしいぞ」


 彼の言葉に男の子たちが固まる。

 お父さんはそんな彼らを放って何処かへ行ってしまった。


「ア、アル。それじゃあ俺、帰るね……」


 逃げる様に帰っていくオージェ君。

 一方の3兄弟は明らかに狼狽えていた。


「なぁ、ホクト、タイガ。旅行でも行かねぇか?久々にイリス王国へ行って『あいつ』に会ってやるのもいいと俺は思うんだが」


「ああ、すげぇいいアイデアだな兄貴」


「そ、そうだね。あはは……」


 何だろう?

 明らかに『シフォン』って名前に怯えている。

 女の子達を見るとカノンちゃんが苦笑しながら教えてくれた。


「シフォンっていうのは私達の従姉さ。とても元気な娘でね。そうだね、彼女を一言で表現するならば……」


 3兄弟が口をそろえて言った。


「「「蛮族だ!!!」」」


□□

【????】


「う、嘘だろ。何だよ、こ、こいつは、化け物かっ!?」


 フォージは地面に倒れる血まみれの部下たちを見て恐怖した。


(20人は居たのに!!それがたったひとりに。こんなバカな事……)


 目の前にトゲトゲの金棒が突きつけられる。

 金棒の持ち主はあろうことかシスター服を着ている女性。


「テメェよぉ。誰の母親捕まえて『ババァ』ってほざいてんだ?んなもん万死に値するよなぁ!!」


「ひぃぃぃぃぃぃ!!?」


 金棒が振り下ろされる。

 シスターは笑いながら空を見上げ叫んだ。


「よーし、今日からこの辺はアタイのシマだぜ!テメェら伸びてねぇでとっとと起きやがれ!!!」


 レーギュラン・レム・シフォン

 ユズカ達の従姉。20歳

 異名『超シフォン主義蛮族』『最凶生物』


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