第38装 巨大戦と言えば合体です (※)
【リンシア視点】
新しい力を手に入れたユズカちゃんの大技で魔人の身体が砂のように崩れていく。
「チッ、まさかオーバーキルかよ……こうなったら!」
何か奥の方に居る悪そうなやつが胸に手を当てると光の球が飛び出してきた。
「こんなものはもういらねぇ。これでも喰らっとけ!!」
男が手から離した光の球は無茶苦茶に飛び回り弟君に飛び込んでいった。
「があっ!?」
「弟君!!?」
「そいつは災禍の素だ。本来なら俺の中を食い荒らしてエネルギーを魔人に供給していくところだがもうシエーロはいねぇからな。テメェらにやるよ!!」
「あなた何てこと!!」
ユズカちゃんが殴りかかりに行くが男は煙幕を出し姿を消してしまった。
「ぐっ……ああぁ……」
苦しむ弟君。
何が起こるかwからないけど放っておくわけにはいかない。
「待っててね、弟君」
聖装した私は弟君の深層世界へとダイブして行った。
□
「大丈夫ですか!?」
深層世界では弟君がよろめいた女性の手を掴んで倒れないようにしていた。
「すみません。考え事してて。あの……何か土まみれだけど大丈夫ですか?」
「あー、大丈夫ですよ、私の方こそごめんなさい」
あれ?
あの土塗れの人って……こっちに転生してきたばっかりのリンシア、つまり私じゃん!!!
弟君の強い想い出って私!?
あー、まあ土塗れの女がふらふら歩いてたら気になるかぁ。
何かごめんね。こんなのが想い出で……
やがて静止画みたいに動きが止まると同時に空の一部が割れてコウモリ型の怪物が出現した。
こっちも空中型か……
同時に本が輝きだし、新しい力が脳裏に浮かぶ。
「スパイダービークル、発進ッッ!!」
巨大化した蜘蛛型メカに乗り込んだ私は相変わらずのAT操作で地上を駆け回りながらビームを発射して敵を攻撃していく。
それでも空中に居る敵には相性が悪い。絶対これ選択ミスでしょ!?
すると本が再び輝きを放つ。
「これは……ええっ!?ちょっとこんな事出来るの!?」
いやいや、これは流石に……興奮しちゃうじゃない!!
「スタッグビークル、テイクオフ!モモタロウ、お願い!!」
クワガタメカ、モモタロウを次々と召喚していく。
複数召喚で巨大戦と来たら流れはこれしかないよね?
「コンバインオペレーションッッ!!」
そう、『合体』しかない。
クワガタメカと生身の犬、そして蜘蛛型メカで何が起きるか不安だけど出来るならやるしかない。
スパイダービークルをスタッグビークルが背後から挟みその上にモモタロウが乗り変形していく。
そして……何という事でしょう。匠もびっくりの巨大ロボが誕生したのです。
「何でだぁぁぁぁぁ!!?」
どう考えてもおかしいって。
このパーツ何処から来たとかカラーリングどうしたとか、クワガタ要素は!?犬要素は!?とかもうツッコミしかない!!!
質量もおかしいし、流石異世界ッッ!!
もう全部異世界のせいという事で納得するしかない。
「完成ッ……えーと、えーと……リンシアオーッッッ!!!」
いやぁぁぁ、私って咄嗟にとは言え何でこんなダサい名前つけてるの!!?
というか自己主張激し過ぎでしょ!?
ヤバイ、絶対子どもにキラキラネーム付けるタイプだ、私……子ども……あぁ、何か頭が痛くなってきたから考えるのは止め!!
「弟君の想い出、荒したりなんかさせない!!!」
リンシアオーで飛び上がり空中の災禍獣へ攻撃を開始する。
うぉっ!? 空飛べるんだこれ!! しかも自由自在に動き回れる。
「こりゃ良いわ~ッ!!」
『キシャァア!!』
災禍獣の攻撃を避けながらすれ違い様に攻撃を加えていく。
でも決定打に欠けるな……何か武器が……
そうだ、こういう時は本を開く!
「あった!」
剣が描かれたページがしれっと追加されている。説明には『魔導具:聖装剣』とある。
これはあれか、所謂必殺技的なものを放てるやつだよね?
「聖装剣ッ!!」
唱えるとリンシアオーが剣を取り出し構えた。
おおぅ、凄いっ!剣を装備したロボだぁ!!
「喰らえぇぇ!聖装剣ッ!」
掛け声と共に剣を振り下ろす。
すると斬撃波が発生して災禍獣を襲う。
『ギャアアアアッッ!!』
よし、効いてる!! この調子でどんどん行くよ!!
「リンシアオー!ダイナミックスラッシュ!ダイナミックスラッシュ!ダイナミックスラッシュゥウウッ!!!」
連続で技を放ちまくっていく。
その度に災禍獣の身体が切り刻まれていき、地面へ墜落。
「このまま一気に決める!ダイナミック・ハイパーストリームスラ――ッシュ!!」
最後の一撃を放つと災禍獣は大爆発を起こし跡形もなく消えていった。
「シャットダウン完了!」
勝利を宣言し、私は弟君の深層世界を立ち去るのだった。
□□
【タイガ視点】
今日ほど自分が情けないと思った日はなかった。
リンシアさんが母さんに強く頼んでくれたから大して怒られなかったけど……
俺、今日のでますますリンシアさんに子ども扱いされちゃっただろうなぁ。
手のかかるガキって思われてるだろうなぁ。
ああ、リンシアさんともう少し年齢が近かったら。
俺がもっと背も高くて大人びていたらなぁ。
15になったら結婚できるからそこを目指しているけどこんな状況じゃとてもじゃないけど……男として眼中にすらないだろうなぁ。
色々な思いが渦巻き、眠れず時間が過ぎていく。
少し眠気が出てきてうとうとし始めた頃、誰かが部屋に入って来る音がした。
こんな時間に一体誰が……
「ねぇ、起きてる?」
リンシアさん!?
え、何で?え?リンシアさんが俺の部屋に!?
薄目を開けてみるとそこには確かにリンシアさんが両腕を胸の前で組んで俺を見下ろしていた。
いつもだって魅力的だけど何というか、吸い込まれそうな美しさだ。
「……やっぱり寝てるか。起きてたらさっくり終わらせようと思ってたんだけど……まあ、でもまだ『早い』か。やっぱりもう少し実るのを待った方が無難だよね?」
えっ、『さっくり終わらせる』って……
待って。何か凄く起きたいんですけど!?
「ねぇ、『タイガ君』……」
なっ!!
今までずっと『弟君』だったのに名前で!?
「君はいい子だね。だからさ、君がもう少し大きくなったら、口説きにおいで?私は君を選ぶことにしたから。多分君が最適解」
選ぶ!?選ぶって……
「その時は、私の全てをあげるからね?」
えぇぇぇぇぇぇっ!!?
待って待って!何その急展開!?
もしかしてこれ、俺起きて反応してたらそのまま大人の階段上ってた!?
でもこの国の法律どうだっけ!?明日起きたら調べないと!!
「それじゃあね。おやすみ、『タイガ』君」
言葉と共に俺の頬に何か柔らかいものが触れる感触。
えぇぇぇぇぇぇっ!!?
ちょっ、今のってまさか、まさかキッス!!?
いやいや落ち着け。これは単なるおやすみのキッス!そうに違いない!!
「口の方はいずれ、ね?君の成長に期待してるから」
そう告げるとリンシアさんは部屋から出て行った。
…………マジですか。俺ちょっとだけ大人の階段登っちゃったよ。
しばらくベッドの上で起き上がると呆然としていた。
そしてリンシアさんの唇の感触を思い出し、悶々としながら夜を過ごした。
□□□
【リンシア視点】
「あれ?私なんでこんな所に……?」
気づけば廊下に立っていた。
丁度弟君の部屋の前。あれかな、寝ぼけ眼でトイレに起きたのかな。
参ったな……遂にこの家の中で迷ったりするようになったのか。
「弟君、大丈夫かな?」
随分と落ち込んでたけど……元気になってくれたらいいなぁ……
□□□□
「お、おはようございます。リンシアさん」
翌朝、いつも通りリンシアさんは料理をしていた。
俺は恥ずかしくてまともに彼女の顔を見れないでいる。
「ん?おはよう弟君。今日は随分早いんだね。昨日はよく眠れなかったのかな?」
早いというか寝れなかったんです。
ていうかやっぱ弟君なんだよなぁ……
あれは夢だったのかぁ。でももし、夢じゃ無いなら……
リンシアさんが俺を選んでくれて、それでその証に頬にだけどキ、キッス、キッスを……
うわぁぁぁぁ!!
「うん?どうかしたの弟君?」
「いえ、何でもないです!」
俺は慌てて首を横に振る。
危ない危ない。つい考え込んでしまった。
「弟君、大丈夫。顔が真っ赤だよ?」
「だ、大丈夫です!俺、俺頑張りますからッッ!!!」
「よくわからないけど……頑張るのはいい事だよね。応援してるからね」
そう言って優しく微笑むリンシアさん。
控えめに言って天使すぎます!!
そうだ。あれこれ考えずひたすら頑張るしかない。
やってみせるぞ、レム・タイガ!!!
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【ユズカ視点】
「お祖母様、あなたから受け継いだ力。みんなを守るため大切に使います」
霊廟で手を合わせ礼を伝える。
「あたしとリンシアさんが居れば大丈夫。きっと守ってみせるから。見守っててね」
そう、あたし達が揃えばきっと。
何だって乗り越えていける!!




