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第37装 空(※)

遂に新フォーム登場。

基本フォーム登場から32話は長かったなぁ……と思ったら父親は新フォームまで44話かかってました。

【アンジェラ視点】


「ねぇ、メイシー。この前ユズカやタイガが来た日の事だけど、覚えている?」


 あたしの問いに長年一緒に生活してきたパートナーが口を尖らせ応える。


「当然です。夕食は白身魚のハーブ蒸しでしたね」


「いや、そっちじゃなくて……」


 若い頃から食に関する関心が強い傾向はあったけど歳をとって更に進化してるなぁ。


「一緒に来てた若い子の事よ」


「ええ、覚えてますとも。ホマレの家に居候している子ですね?料理が得意だそうなので今度招いてみたいものです」


「そ、そうね……あたし何かあの子を見て妙に懐かしい気持ちになったの。それで何でだろうってずっと考えていたら『あの人』と似ているの。『ナナシさん』と」


 何年も前に亡くなったあたし達の夫の名を口にする。


「あの人と?」


「そう。あの人もそうだったけどあの子、『何か大切なものが抜け落ちている』。そんな感じがするの」


「それはつまり記憶が?」


「あの人も初めて出会った時、記憶を失くしていたでしょ?」


「むしろその後も記憶を失くしましたからね。もう記憶喪失が彼のお家芸みたいな感じでした」


 今だから笑い話で済むけどあの時は大変だったからなぁ。


「アンジェラは記憶喪失のどさくさに紛れて結婚かましましたもんね」  


「い、いやあれは……」


「冗談ですよ。おかげで今の私達があるわけですから。それであの子、リンシアでしたっけ?」


「うん。あの子、もしかしたら思った以上に『危険』な爆弾を抱えているのかもしれない」


 何か大きな闇を抱えている。

 そんな気がしてならない……


【タイガ視点】


 リンシアさんの様子がおかしい。

 やっぱりホクト兄さんの危険なすっぽ抜けに怒ってるのかな?

 この仕事が終わったら型破りなウチの一族に愛想尽かせて出て行っちゃったりしないよな?

 

 俺が心配する中、空中をジグザグ飛行しながら移動する魔人が姉さんにオーバヘッドキックを叩き込んでいた。


「ぐうっ!?」


「反応が遅ぇっ!空も飛べない、反応も遅い、低いっっ!!」


 スピードを載せて殴りに来るがこれをガードした姉さんは相手の腕の上から自分の腕で押さえ込む。

 そのまま相手の懐に入り込むと巻き込むように投げ……


「カウンターロールッッ!!!」


 空中で片足を極めて地面へと叩きつけた。


 あれってベル姉さんの得意ジャンルだよな。

 相手の力を利用して技をかける。

 どっちかというと打撃偏重型だったのにカウンターに手を出すなんて。


「吸収できるものは吸収する。なるほど、それが彼女の強さか……」


 リンシアさんは相変わらずの調子で分析している。

 何かクールビューティーって感じでいつもと違った魅力なんだけど……ちょっと怖い。


「おい、シエーロ!何を無様晒してやがるんだ!お前はそんな行儀いい戦いするのかよ!!」


 ユージーンに言われ魔人が嗤う。


「ああ、そうだったなぁ!」


 姉さんから離れた魔人は身を翻すとリンシアさん目掛け飛びかかる。


「呑気に見物してんじゃねぇぞ、外野がぁぁっ!!!!」


「しまった!リンシアさんッッ!!」


 だが魔人の攻撃が命中する直前、リンシアさんの姿が消えて俺の隣に立っていた。

 手には緑色の魔道具。


「モンチーワープ……外野を攻撃することくらい想定内」


 な、何て冷静で的確な判断なんだ!!


「それなら……こいつはどうだぁぁぁ!!!」


 大きく翼を広げた魔人から無数の羽弾が広範囲に降り注ぐ。


「風穴を開けてやるぜぇぇ!!」


「チッ!」


 リンシアさんが舌打ちして後退。


「え?」


 俺も慌ててついていき攻撃を回避。


「範囲が広すぎてワープ距離を押さえられている……連続使用も出来ないし面倒な」


 言いつつリンシアさんは盾を出して攻撃をガード。

 一方の俺は地面を転がりながら攻撃を避け続けるが限界があり数発の弾が直撃コースに入る。

 ああくそっ、せっかく助けに来たのに足引っ張てるだけだ!!

 リンシアさんも何か失望したような表情で俺を見てるし。カッコ悪すぎる!!


「タイガッ!!?」


 その瞬間だった。

 興味なさげに俺を見ていたリンシアさんの表情が恐怖に塗りつぶされた。


「ダメッッ!!!」


 言うが早いかリンシアさんが地面を蹴って俺に飛びつきそのまま地面を一緒に転がり攻撃を回避した。


「リンシアさん!?」


 彼女は顔面蒼白で震えていた。

 まるでさっきまでとは別人といった様子でリンシアさんは俺の顔を両手で挟み泣きそうな顔で『大丈夫?』と何度も聞いてくる。


「あの、大丈夫です。ありがとうござい……ってリンシアさん血が!!?」


 リンシアさんの肩に羽弾が貫通したであろう穴が開き大量に出血していた。


「私はいいから!どこも怪我はない!?」


 狂ったように俺の身体を触り無事を確認する。

 そして急に……


「あれ?私なんで弟君を押し倒して……って痛ぁぁぁぁっ!?ええっ!?何か肩に穴開いてるんですけど!?」


 いつもの彼女に戻っていた。


【リンシア視点】


 ちょっとどういう事?

 気づいたら知らない所に居て弟君を押し倒してるし肩が無茶苦茶痛いし!!!

 

 まさか私、弟君に発情して変なとこに連れ込んでイケナイプレイしてるとか!?

 いやいや、おかしいって。何で12歳の男の子にそんな事するのよ!!?

 確かに普通の12歳よりは大人びてるしイケメンだけどまだ子どもだよ!?

 まさかショタコンだった!?当方元34歳、現在警備隊所属。普通に犯罪です!!


「リンシアさん、敵!敵!!」


 敵?何を言ってるの?私は今、自分に浮上したショタ好き疑惑に頭を悩ませているんだけど……

 ふと見ると空中に何かムキムキの鳥っぽい魔人が浮いていて……


「ちょっ、何あれぇぇぇ!!?え、ユズカちゃんが聖装してる!?」


 情報量多すぎて脳の処理が追い付かないんですけど!?


「えぇぇぇっ!?敵です!敵ですよリンシアさん!!!」


「何でぇぇぇ!!?」


「な、何だあの女?クールかと思ったら急に喚きだした!?」


 いやだって騒ぎだってするよ!?

 もう過去最高レベルで訳の分からない事になってるもん!!


「はぁぁぁぁっ!!!」


 ユズカちゃんが回し蹴りを放つが魔人は空へと飛んで回避。


「そうやって逃げてばかりで、戦ってるあたし以外を狙って」


「卑怯というか?だが戦いにおいて弱いものから狙うのは常套手段だ」


「そうだとしてもあたしはあなたの悪意を認めない!あたしの力は、誰かを守るためにある!心に抱いた剣はあなたなんかに負けないッッ!!」


 ユズカちゃんが叫んだ瞬間、私の本が光り出した。

 え?まさか新しいアイテム!?

 慌ててページをめくるとそこには青色のクローゼット型魔道具の絵が。

 これってもしかして……


「ユズカちゃん!!」


 私が投げた魔道具を受け取ったユズカちゃんは魔道具を起動。


「聖装ッ!!!」


 風が巻き起こりユズカちゃんが魔導士風の衣装へとチェンジした。


「これは……」


 来たぁぁぁ、フォームチェンジだよこれ!!


「ユズカちゃん、きっとそれは空に対応する能力だよ!!」


【ユズカ視点】


 空に対応する能力?

 まさかお祖母様の……


 風が吹きすさぶ中、一人の女性が微笑んでいた。


「お祖母様……」


『それは飛天の装衣。君に託すよ』


 そう言うとお祖母様の幻影はすっと消えていく。


「何だその姿は!?」


 魔人が空中からタックルをしかけてくる。

 使い方はわかっている。頭の中に、流れ込んできてるから。

 あたしは力強く地面を蹴った。


「うわわわ!?」

 

 敵のタックルを回避しそのまま一気に上空まで飛び上がった。


「しまった、飛び過ぎた!!?」

挿絵(By みてみん)

 敵を見下ろしつつ目に飛び込んでくる高空からの景色に圧倒された。

 これがあたしが住んでいた街。守るべき人達が住む場所。


「俺より高く飛ぶんじゃねぇぇぇぇっ!!!」


 叫びながら追いかけてくる魔人。

 空中を舞いながら攻撃を避けカウンターで打撃を与えていく。


「スピードは上がってるけどパワーが下がってる。でもそれなら……塩角(えんかく)ソーサー!!!」


 空中で4つの円盤を放つ。

 この姿にチェンジしたのに合わせ操作性、威力がアップした4つの刃が空中を飛び回り敵の翼を切り裂いた。

 真っ逆さまに落下していく魔人に追いつくと顎に足をかけ体重をかけながら落下。


「これがみんなを守るあたしの新たな力。喰らえ新技、スカイフォールフェイスクラッシャー

ッッッ!!!」


 魔人を頭から地面に叩きつけた。


「ガバァァァァッ!!?」


 身体を大きく痙攣させ、ゆっくりと崩れ落ちた。

 決着を確認し、大きくこぶしを空に掲げ、勝利を宣言した。


VS魔人シエーロ〇 (スカイフォールフェイスクラッシャー)

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