第35装 リンシアの異変(※)
【リンシア視点】
強面のバルキンさんからの情報を元に受け子のひとりを更に特定。
そこからある倉庫を特定した警備隊は倉庫を強襲し、詐欺グループを一掃する作戦を開始した。
災禍獣が出る可能性も考慮してユズカちゃんと私も同行することになった。
更に現場にはユズカちゃんのお父さんも参戦していた。
詐欺グループと言えど所詮はチンピラ。
訓練を受けた警備隊の前にあっさり捕縛されていくのだが……
「はぁぁぁっ、情けねぇ連中だなオイ!!」
金髪で目つきが悪い男が頭を掻きながら掴まっていく仲間達を見て嘆いていた。
「手を頭の後ろにして地面に這いつくばれ!!」
警備隊の人がサーベルを向け命令するが男は嘲笑する。
何だろう。あの人、その辺のチンピラとは違う嫌な雰囲気を纏っている。
「アジトがバレて踏み込まれることくらいは予想済みなんだよな。だから、俺みてねぇなのがいるわけだ!!」
男が言うと身体からオーラが吹きあがり身体が変異していく。
やがて男の身体は屈強な魔人へと変化した。
「ドポドポ……」
青い体表、トカゲを彷彿とさせる下半身。
だが太い尻尾はどちらかというとトカゲというより……ワニ?
背中から生えているいものも何かワニっぽい。
というか……湯気みたいなのまで出てるし何で災禍魔人ってこんな濃いのよ!?
「ちょっと待って。魔人に変異した?」
「我らは全てを吸いつくされ抜け殻になった人間に成り代わる事が出来る。このカーソンという男は元々俺の宿主だったが絶望の末、俺が成り代わってやった。名乗るとしようか。俺の名は災禍魔人テムサフ!」
テムサフは斬りかかった警備隊員のサーベルを掴むとベキッとへし折り殴り飛ばした。
「馬鹿が。たかが人間如きが俺とやり合えると思ったか?」
ちょっと、災禍魔人に憑依されて手遅れになるとそんな事なっちゃうの!?
じゃあ、ベルちゃんとか結構ヤバかったんじゃない!?
「………そっか。その人は救えなかったんだね……ならせめて、あたしが倒す!!」
「ドボドボ、中々胆が据わった小娘だ。いい事を教えてやろう。俺の他にあと2名、災禍魔人が居るぜ?」
ちょっ、待って!?
あんな濃いのがあと2体も!?
「それならそいつらも全部倒して組織を壊滅させるだけ!リンシアさんッ!!」
「わ、わかった」
本から魔道具を取り出そうとする……が!
「あっ!!?」
急に割れそうくらい激しい頭痛が襲ってきて私の視界が点滅する。
えっ、何これ!?
「リンシアさん!?」
「頭が、頭が痛いッッ!!」
まさかこの魔人が何かしてきた?
特殊な電波みたいなものを放っているとか?
でも苦しんでるのって私だけ!?
「何だそっちの女どもは?やる気になったと思ったら頭抱えて忙しい奴らだな。それで、どっちが俺と戦うんだ?」
マズイ!
聖装しなきゃユズカちゃんは災禍魔人と戦えない。
私が何とかして魔道具を出さないと……でも、頭が……
視界の端に今朝見た男の子の幽霊が映る。
ちょっと待って。まさかあの子のせい!?
もしかして取り憑かれて祟りにあってるとか!?
あれかな、迷ってていつの間にか地縛霊を引っ張っちゃったのかな。
寂しいのかもしれないけど大事な時に邪魔しないで!!
「おいおい、随分と面白そうなやつがいるなぁ」
私達の後ろから声がした。
頭を押さえながら振り向くと次男君が首を鳴らしながら歩いてくるのが見えた。
「お兄様?」
「いいねぇ、その筋肉。下がってな。ここは兄ちゃんに任せてくれよ。な、いいだろ?」
「で、でも……」
「こんなすっげぇの前にして我慢しろってのが無理な話だぜ!!」
えっ、次男君って聖女じゃないよね?
聖女の攻撃でないと効果はいまひとつになっちゃうのに!?
【ホクト視点】
ああ、やっべぇな。
何ていい筋肉してやがんだよこの災禍魔人ってのは。
見ろよあのぶっとい尻尾。まるでこん棒みたいだ。
すげぇパワーなんだろうなぁ。喰らってみてぇ。
俺が合宿行ってる間にユズカは2体も相手したんだってなぁ。ベルも戦ったんだっけ?
羨ましい限りじゃねぇか。聖女以外の攻撃が通じにくい?
それってつまり……『ぶっ叩き放題』って事じゃねかよ!
やべぇ、よだれ出てきたわ。
「ほう、貴様中々の筋肉を持っている様だな。だがただの人間如きがこのテムサフとやり合えるなどと……」
走り出していた。
おふくろが見たら品が無いって怒るだろうけどさぁ、こんな相手滅多にいねぇんだ。
一族には強い連中がわんさかいる。でも女が多い一族だがら流石に本気でぶっ叩くわけにはいかねぇ。
ジョセリンなんか俺より遥かに力強いけど顔面に叩き込んだりした日にゃ伯母さんに毒を浴びせられちまう。
兄貴は殴り合いは嫌いなタイプだしまともに殴り合えるいとこのレオは外国だしよぉ。
もう滾っちまうんだよ!!
まずは一発、バキバキに割れた腹筋に攻撃を叩き込む。
「ぬぅっ!?」
そうだよ、この感触。
ああ、大当たりじゃねぇか。
「レム・ホクトだ。楽しく戦ろうぜ!!」
俺の言葉にテムサフもにかーっと口を広げ笑い返してくれる。
おーおー、わかってくれるのかよ!さてはお前、同類だな?
「面白いぞ、ホクト!存分に楽しもう!!」




