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第33装 必殺!聖女ボンバー

今回のバトルは割とドタバディしています。

リンシア、前世では既婚者だけどかなり鈍いです。いい加減気づいてあげて。

【リンシア視点】


 災禍獣の気配を察知しそちらへ向かうと空間に特殊な膜が見えた。

 多分あれが災禍獣が展開する特殊空間。一見すると外からは何も起きていない様に見えるし普通の人が入ろうとしても隔絶された空間なので気づきはしない。


「行くよ、弟君!!」


「えっ、リンシアさん!?」


 迷いなく膜に突っ込んでいく私の後ろから弟君がついてくる。

 幕を突き破り空間に入るとぬるぬるした身体を持つ二足歩行の怪物が粘液をまき散らしながら歩いていた。


「うわっ、こういう仕組みなんだぁっ……てあれって!?」


「うん。災禍獣だね。ユズカちゃんは……」


 先に飛び出したユズカちゃんはまだ来ていない?

 いや!!


「はいっ!あたし、参上!!」


 背後から膜を突き破ってユズカちゃんが弟君に激突しつつ登場した。

 ちなみに弟君は突き飛ばされて倒れている。かわいそうに


「えーと、大丈夫、弟君?」


「な、慣れていますから……」


 慣れてるんだ。

 まあ、ユズカちゃんの弟だもんね。

 弟君は高所恐怖症なんだけど聞いた話だと赤ちゃんの時にユズカちゃんが彼を背負って天井を這った結果らしい。

 うん。本当に何処から突っ込めばいいんだろう。頑張れ弟君。きっといいことがあるから。


「リンシアさん、行くよ!」


 ユズカちゃんの求めに応じ私は変身用の魔道具を取り出し渡す。

 聖装したユズカちゃんが飛びかかりパンチを放つが……ぬるんっ!!


「えっ!?」


 何と災禍獣が出している粘液で滑ってしまい攻撃が当たらない。


「あれっ?あれれぇっ!!?」

 

 連続攻撃を繰り出すが粘液で滑り空振り。

 遂にはバランスを崩し転倒して滑っていってしまっている。


「リンシアさん、ネコちゃん盾を!!」


 そうかユズカちゃん、何か思いついたんだね。

 私が宝箱型魔道具を投げるとユズカちゃんは発動させて盾を装着。


「シールドォォォ!シュート!!!」


 何の考えも無しに投擲しただけだったぁぁぁ!?

 当然の如く盾は粘液で滑ってあらぬ方向へ飛んでいってしまう。


「ああっ、上手く行くと思ったのに!!」


「いや姉さん、何で上手く行くと思ったんだよ!?」

 

 代わりにツッコミありがとう弟君。

 そうだよ、この娘ってバカじゃないけど脳筋なんだよ!!

 ということは私がこの粘液を攻略する方法を考えないと……

 本をめくって何か無いかと探る中、災禍獣が大量の粘液をこちら目掛け放つ。

 油断していたのでもろに粘液を被る羽目に。


「きゃああっ!?」


「リンシアさんっ!!」


 き、気持ち悪い!!何よこれ!?

 もうつるつる滑って本は落ちるは立ってらんないわで最悪すぎる。

 

「あっ、ちょっと滑って、ダメだって、いやぁぁぁ」


 立てずにもがいていると弟君がうずくまって動けなくなっていた。

 まさか弟君も粘液を浴びていた?もしかして今の粘液……


「弟君、大丈夫!?まさか状態異常!!?」


「えっと……あんま大丈夫じゃないっていうか、状態異常はそうかもしれないけど、その……」


 何てこと!やはり状態異常を引き起こす効果があったんだ。

 でも私は無事だし……まさか、私は転生者だから状態異常耐性があるとかそういうこと!?


「お、弟君待ってて。すぐそっちに行くか……やぁっ、滑って!!」


「だ、ダメだけど大丈夫です!状態異常も男特有のものというか」


 弟君は私から目を背けている。

 何てこと!異世界には男性特有の状態異常がある!?

 しかもそれをピンポイントで狙うなんて何て悪辣な災禍獣なの!?

 苦しんでいる姿を見せて私を心配させまいと我慢しているってことね。

 ちょっと男らしいじゃない!!

 

 私が感心する中、ユズカちゃんが復帰して飛び上がる。


「あたし、閃いた!闘気変換、黒色火薬ッ!!!」


 ユズカちゃんは闘気と呼ばれるものの性質を変換させることができる。

 どうやら『聖女』の性質らしくセシルさんは身体を『刃』に、ナギさんは『声』に様々な効果を付与させることができるらしい。

 ユズカちゃんの場合、一番得意なのは料理好きなお母さんから着想を得た『塩』だけど他にも『火薬』に変化させることも出来る。

 災禍獣の周りを生成された火薬が漂っている。 


「火薬って姉さんあの危険技をするつもりか!?セシルママから絶対するなって言われてんだろ!!」


 弟君が慌てている。

 うん、何をするか私もわかっちゃったかも。

 となると弟君の位置は危険だよね。


「えーい、弟君。今行くからね、根性ぉぉぉっ!!」


 私は力を振り絞って滑りながら弟君に抱き着く。


「えっ、リンシアさん!?あたっ。当たって!!?」


 何か硬いものが当たっている感触があるけど武器とかかな?

 異世界の人って武器持ちがちだよね。外国人が拳銃持ち歩いている感じかな。

 とりあえず近くの壁を蹴ってふたりで滑り災禍獣から離れる。


「ユズカちゃん、やっちゃって!!」


「行くよぉぉぉっ!聖女ボンバー!!!」


 いや、ネーミング!!

 両腕の装甲を打ち合わせ火花を起こす事で火薬に引火、大爆発が巻き起こった。


「あがががががっ!!」


 爆発で粘液がはがれた災禍獣に組み付くとユズカちゃんは抱え上げて飛び上がりパワーボムで地面へと叩き付けた。

 鈍い音と共に災禍獣の身体が元の人間に戻っていく。


「よっしゃ、勝利ィィィィッ!!!」


 ユズカちゃんが腕を叩く掲げる中、私は弟君の異常に気付いた。

 真っ赤だ!弟君、どこからか出血している!!

 特に顔面が血まみれじゃない!!


「弟君!?ねぇ、しっかりして、弟君っ!!?」


「もう、死んでもいい……」


「ちょっ、そんなのダメだって。気をしっかり持ってぇぇぇ!!!?」



「ユズカッ!あなたという子はあれほど『聖女ボンバー』を使うなって言ったはずでしょうが!!!」


「うわぁぁぁん、ごめんなさぁぁぁいっ!!」


 結論、ユズカちゃんが無茶苦茶怒られました。

 弟君は結局鼻血だったらしくて大したケガはなかったみたいで安心。

 顔面を強打してたんだね。


「あの、セシルさん。私も彼女を止められなかったわけですしそんな怒らないであげてください」


「いいえ!そういうワケに行きません。ユズカ、あなたは力を持つ者なんです。だからこそ周囲の被害には気を配る必要があるんです」


「ううっ!わ、わかってるよぉ」


「あなたは真剣に人々を守ろうとしているんじゃありません。ただ自分がしたい様に遊んでいるだけです!お父様や亡きバレッタとは程遠い、身勝手な正義です!!」


「っ!!」


 ユズカちゃんは堪らずリビングから逃げ出し自分の部屋に駆け込んでしまった。

 恐らく今のは相当堪えたのだろう。


「ユズカっ!!」


 追いかけようとするセシルさんをフリーダさんが止めた。


「それくらいにしてやれ。今のは相当にキツかったんじゃないのか?」


「フリーダ、でも……」


「わかってる。あの子がやり過ぎなのも、あんたが心配するのもさ。あの子だってきっとわかってるって。それにさ、あんただって若い頃は派手にやってただろ?」


「そ、そんな事は……」


 するとクリスさんがニコニコしながら近づいて来た。


「孤児院で私の部屋の窓をぶち破りましたよね?」


「うっ、そ、それは……いや、確かにやったけど……あれ、あれって何ででしたっけ?」


「私も覚えてません。だけど窓は壊しましたよね」


「うぅ……た、確かにあたしの攻撃は威力あるし……でも、段々と制御できるようになって」


「そーゆーこと。ユズカだってこの失敗から学ぶから。ね?」


 奥から顔をのぞかせたナギさんが微笑む。


「てことで、怒り狂うのはここまでだ」


「わ、わかりました」


 ああ、何かいいなぁこの家族。

 こんな素敵なお母さん達に育てて貰えて、この家の子達は幸せだね。


 私も、本当は子どもが欲しかったなぁ。

 でもあいつの元でちゃんと育ててあげられたかは……

 絶対に『家事・育児はお前の仕事だ』って言っただろうなぁ。


「はぁ……だけど子ども、欲しかったなぁ」


 私が呟くと背後に寝ていた弟君が鼻血を噴き出していた。


「えっ、まさか傷口開いちゃった!?ナギさん、セシルさん。回復お願いします!!!」


 弟君、今日は色々と災難だなぁ。

 でもきっといいことあるからめげちゃダメだよ?

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