第29装 土より這い出るモノ
しばらく更新不安定が続くかも。
第3章は不穏な空気を残しつつ終了です。
【オージェ視点】
目を覚ますと星空が広がっていた。
ここは……公園のベンチ?
「よぉ、目が覚めたか?」
アルが隣に座っていた。
「アル、俺……」
少しずつ思い出してきた。
何かアルの事で無茶苦茶に病んじゃって、俺の中から変な奴が出てきてそれで……
「あのさ、アル。俺……」
「やべぇんだよなぁ」
「は?」
「弟だよ。タイガのやつの恋を後押ししてやろうとひと芝居打ってちょっと悪い男演じてやったんだがな。何というか冷静に考えたら母さんに知られたらかなりマズイんだよあれ。しかもユズカが見てて誤解してるだろうしさぁ」
あー、そういや昔ヒイナちゃんのスカートを降ろしてヤバイ事になったって言ってたっけ。
あのお母さんって普段はニコニコしてるから怒ったら本気で怖いんだよなぁ。
ていうか怒られるレベルの芝居を打ったのか……何というか、頑張れ。
「ねぇ、アル。俺ってさ。やっぱおかしいと思う?男なのに……」
「男とか女じゃなくて、お前はオージェだろ。ガキの頃からの親友だ」
「ははっ、そうだね。君はそういうやつだ」
自分に向けられる好意にはクソ鈍い癖に何ていうかイケメン過ぎなんだよな。
「ねぇ、アル。例えば好きな人がいるのに他の人も気になったりするの、君はどう思う?」
「普通にあるだろ?まあ、夫婦になっててそれはヤバいけどさ。そうなる前とかなら自由じゃね?え?何お前、恋とかしてんのかよ?」
「うーんそうだなぁ………」
うっすらと記憶の中、オオカミにまたがり俺の心を助けてくれた女性の姿が浮かぶ。
「俺もよくわからないんだけどさ。俺の中の『雄』がちょっと反応したコがね」
まあ、それでも俺の中の一番は君だよ、アル。
□
【リンシア視点】
長男君のおかげで私は転生者であることをまだ隠しておけることになった。
いつか皆にバレてしまうのかもしれない。その時は恐らく……
ふと、家の庭に土が盛られていて石が置かれていることに気づく。
そうか、あそこに『モモタロウ』が眠っているんだね。
私はモモタロウのお墓に近づくと静かに手を合わせる。
「えっ、リンシアさん?」
ごめんね。あなたをこの家に連れて来てくれたリンシアはもう居ないんだ。
私はあなたの事なんか知らず生活してきて、それなのに私に力を貸してくれた。
本当に、ありがとうね。
「あの、リンシアさん。何やってるの?」
「え?いや、お墓に手を合わせてるんだけど?」
私の答えにユズカちゃんは首を傾げる。
すると前世でもよく見た犬用の食器にドッグフードらしきものを盛ったマリィちゃんがやって来る。
「おーい、タロウ。そろそろでしょ?『起き』といで」
はい?
今、変な単語が聞こえた気がするんですけど?
もぞもぞと盛り土が動くと中から白と黒の毛色をした子犬が『バウッ』と元気よく飛び出してきた。
「うぎゃぁぁぁぁぁ!?ゾ、ゾンビ!?モモタロウが化けて出た!?」
「リンシアさん何で驚いてるの?この子は『ウラシマタロウ』。モモタロウの子どもだよ。タートルケーンとのミックスだから定期的に土の中に入って眠る癖があるんだよ」
ちょっと待って。異世界の犬って土に潜って眠るの!?
タートルケーンってもしかして亀みたいな犬?
「モモタロウはモテたからねー。色んなとこで子ども作ってウチで産むんだよね」
モモタロウったらメスだったよ!!
メスの犬に『タロウ』ってつけちゃダメでしょ!?
いや、その辺は異世界だからOKなのか?
前世でも『ノエル』って名前が海外だと男の名前なのに日本じゃ女の子の名前みたいにつけられるみたいな?
というか待って!リンシアってばこういう常識も同期してくれてないじゃん。
今思ったら彼女が同期してくれたのって一部の人間関係とよく通ってたお店とかそういうのばっかりじゃん!そこじゃなくてもっと同期すべき情報あったでしょうが!
そろそろ復活して記憶の同期再開してよ。
色々と問題起き始めててうっかり転生者バレしちゃうじゃない!!
本当にあの娘、どうしてるんだろう?
【????】
ここは和坂凛香がかつて生きていた世界。国の名前は日本。
人が寄り付かず灯りひとつない山奥の闇の中、歌が聞こえる。
それは誰もが知っている誕生を祝う歌。
木々の中をゆっくり歩きながらその歌を口ずさむものが居る。
女だった。
土塗れの黒い髪とボロボロになった衣類。
顔や頭には何やら赤黒いものが固まってこびりついていた。
「ハッピバースデー、ディア……」
般若の様に恨みのこもった形相で女は最後のフレーズを口ずさんだ。
「リンカ……」




