第27装 想い出を守る忠犬(※)
【ユズカ視点】
あたしのお父様は異世界からの転生者。
かつて生きていたのはこことは違う別の世界。
まさかその世界に棲んでいる『キリン』という生物がここまで狂暴だったとは!!
首が伸びる。首を叩きつけて獲物を倒して捕食する。
お父様、こんな化け物がいる世界でよく生きて来れたなぁって驚きしかない。
やっぱりその辺を歩いてたりするのかな?
恐るべし、異世界!!
とか考えているとキリン魔人の首がねじれていく。
「キリキリ……コークスクリュー!!!」
首が回転しながらあたし目掛け襲い掛かってくる。
速い!そして何より……
「怖っ!?」
どんな骨格構造になってるのよ!?
攻撃を避けつつ魔人にヘッドロックをかける。
「捕まえたよ!ここから一気に……」
「ジラッファイラプション!!!」
魔人の角から水が噴き出し目つぶしを喰らってしまいヘッドロックが外れてしまう。
なるほど、ヘッドロック対策も万全。キリンと言う生物、生まれついてのファイターとみた!!
「ネッキングハン……」
首がしなった瞬間、背後から魔法弾が撃ち込まれキリンが転倒した。
「え?今のってお兄様!?」
お兄様の方を見るが『違う』と首を横に振る。
確かに方向が違うしなんか普通の魔法弾とは違う感じ。
ならいったい誰が……
見れば茂みの方から緑色の鎧をまとった戦士がゆらりと現れる。
これって……
「まさか味方の増援!?」
「いや、どっちかっていうと敵っぽい感じだろ!!?」
お兄様、人を見た目で判断したらダメだよ?
お父様の知り合いにどう考えても何人も手にかけてそうな顔のお菓子職人さんがいるけど凄く優しい人だし作るお菓子も絶品だったりするじゃん。
つまりそういうことだよ
「あなたはナアマ……何故、何故私を攻撃す……」
驚くキリン魔人。それに対し……
「お黙りなさい。あなたのしたことは……万死に値する!!」
『ナアマ』と呼ばれた戦士はコウモリの羽を思わせる刃を両腕から出すと腕を振るいキリン魔人を斬り裂き始めた。
「ほら、やっぱり味方じゃん!今、加勢に行くからね!!」
やっぱり人は見た目で判断したらダメなんだって。
ナアマに加勢すべく飛び込んでいくのだが……
「邪魔をするなぁっ!!」
ナアマが大きく腕を広げると小さなコウモリ状の拡散魔法弾があたし目掛け放たれ着弾。
「な、何か攻撃してきた!?」
「ほら見ろ!やっぱり敵だった」
「いや、お兄様。あれはきっと……機嫌が悪いだけだよ!」
恐らくお腹が空いているとかそういった事情があるのだろう。
空腹だとイライラするもんね。
「少しは人を疑えぇぇl!!」
□
【リンシア視点】
私が降り立ったのは正にさっきまで居た都市公園。
「ここがオージェ君の……」
彼にとってとても大切な思い出の場所。
見渡すと今よりも幼い長男君がヒイナちゃんから逃げている。
「ねぇアル君、どうして私から逃げるのかしら?」
「自分の胸に聞け!心当たりが山ほどあるだろ!!」
ヒイナちゃんは胸に手を当てはっきりと答えた。
「ええ、そういうことね。恥ずかしがっている!」
「違うわボケ!!」
うわぁ。この二人昔から変わってないんだ。
いい子なんだけど危ない所もあるなぁ。
「やぁ、久しぶりだね」
そんな二人に声をかけたのは可愛らしい女の子。
二人が動きを止め、凝視している。
「ちょっとアル君、この可愛い子は誰よ!?」
微笑む女の子をじっと見た長男君は『あっ』と声をあげた。
「お前、もしかしてオージェか?あの小太り坊ちゃんの」
あ、そうか。この子がオージェ君なんだ。
それにしても長男君はよくわかったなぁ。
「ああ、アルスター家の……ってえぇぇぇぇぇっ!!?」
ヒイナちゃんが腰を抜かしていた。
いや、そりゃびっくりするよね。
「アル君、俺のことわかったんだ」
「そりゃそうだろ。あの時と同じ『音』がするし、何より俺ら『友達』じゃねぇか」
この子、普通の感じでこの殺し文句。
あー、こりゃオージェ君がときめいて惚れるよなぁ。
「お、俺の恰好変じゃない?」
「何で?ちょっとびっくりしたけどよく似あってるじゃん」
微笑ましい光景。
だけど静止画みたいに動きが止まると同時に空の一部が割れてキリンの怪物が公園に降り立ち首を振り回しながら空間を破壊し始めた。
何か私の知ってるキリンじゃない……大きさもなんか2倍くらいあるし何だかアヒルっぽい顔だし……
「これは彼にとって大切な想い出なの。それを土足で踏みにじって壊そうとするなんて……許せないlっ!!」
ベルちゃんの時みたいにメカを出そうとすると本が光り出す。
「これは……」
ページを開くとそこには新たな卵型魔道具。
「ニューマシンって事?いいじゃない!!」
卵を取り出して空中へ投げる。
殻が割れると光と共に巨大な狼が私の傍に降り立った。
えーと、メカじゃない?
「あれ、あなたってもしかして……『モモタロウ』?」
さっき長男君が言っていた本物のリンシアとの想い出。
確か去年亡くなったって言ってたけど……
「まさか私の力に転生したの?」
狼は『バウッ』と吠えて私の考えを肯定。
何をすればいいのか。どうすればいいのか、直感で理解した。
「……そうなんだね。わかった。私はあなたの知っているリンシアじゃないけど君のご主人様の大切な友達を守るために力を貸してね!!」
私は『モモタロウ』にまたがると声を張り上げた。
「行くよ、『モモタロウ』ッ!!」
「バウゥゥンッッ!!!」
咆哮をあげモモタロウが駆け出す。
凄い!ノリでまたがったけど振り落とされずに走れる!!
モモタロウはキリンモンスターが口から放つ水弾を華麗に避けながらすれ違いざまに脚を一本嚙みちぎる。
「トドメだよ。モモタロウ、バークアウト・デストラクションッッ!!!」
私の号礼を聞きモモタロウは大きく息を吸いこみひときわ大きな咆哮をあげる。
口から光るブレスが放たれキリンモンスターを飲み込み粉砕。
「シャットダウン完了!戻るよ、モモタロウ!!」
幼い3人に視線をやりながら私はモモタロウと共に精神世界から脱出した。




