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聖装のヴァルキュリア~鍵の聖女と観察転生者のドタバディ~  作者: HOT-T
第3章 好きになったんだから仕方ない
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第26装 キリンは恐ろしい生物です

知ってますか?

キリンってこういう生物で……って違う!!!

【リンシア視点】


 魔人相手に背後からドロップキックを決めたのは私のバディ、ユズカちゃんだった。

 だが魔人の身体は動かず逆にユズカちゃんの脚を掴むとそのままジャイアントスイングで私達の方へ投げつける。

 だがユズカちゃんは空中で回転し姿勢を整えると綺麗に着地した。


「え?この状況、今回はオージェ君が宿主だったの!?」


 魔人の傍で倒れるオージェ君を見てユズカちゃんが驚きの声をあげる。

 潜伏型って近くに居てもどうもギリギリまで分かんないらしい。

 ベルちゃんなんて元聖女の親達と一緒に暮らしてて宿主化しているのに気づかれなかったくらいだもんね。

 

「とりあえずオージェ君と魔人を離さないと!!」


 確かに。あんな近くに敵が居たら私が深層世界に入れないんだよね。

 ユズカちゃんは魔人目掛けて掴みかかりに行った。 


「それにしてもなんだよあの見た目。首が長いけど、ドラゴン族なのか?」

 

「うーん、あれはドラゴンというか何か名前からすると………キリンぽい」


 あんな青いキリンは居ないけどね。


「キリン?おい、何だそれは!?」


 あれ?もしかしてこっちの世界にはキリンとかいないのかな?

 いや、それでもあれはキリンじゃないし……


「えーと、異世界に居る黄色いウシの仲間なんだけど、首が長いの」


「黄色いウシだと!?異世界には首が長いウシがいるってのか!?狂ってるなぁ」


「まあ、ちょっと驚くよね。でもキリンっていうのは本当にウシの仲間なの。だから鳴き声も『モー』ってウシみたいな鳴き声で……」


「キーリンキリン……この私相手に真正面から突っ込んで来るとは面白い奴め」


 魔人は笑いながらユズカちゃんのパンチを捌いていく。


「いや、『キリン』って鳴いてるぞ?」


「何でだよ!そこはキリンに寄せてよ!!!」


 思わずツッコんでしまったじゃない。

 

「というか、あいつ5つも角があるぞ?何なんだあれは」


「そうね。キリンは『オシコーン』と呼ばれる5本の角を持っているの。でも実際の所あれは特に役に立ってないわ」


 あいつの角は2本だけどね。


「何だそりゃ。酔狂な奴だな!!」


「フハハハ、どうやらこの角が只の飾りと思っているようですね。実に短絡的。この角が持つ恐ろしい機能を目に焼き付けるがいい!!」


 嘘、その辺もキリンに寄せてないの!?というか笑い声、一貫してないのかよ!!


「ゆくぞっ!ハァァァッ!!!」


 キリン魔人の角から綺麗な水柱が吹き出し地面へと振り注いでいく。


「ユズカちゃん、一度距離を取って!何かしてくる!!」


 ユズカちゃんはまだ『聖装』していないわけだし離れるのが得策。

 私の指示を受けユズカちゃんが距離を取り警戒態勢を取る……が。


「おい、何も起こらないぞ?」


「いや、恐らくあの液体に何かしら特殊な効果があるはず」


「フハハハ、見たか、我が水芸を!!」


「ただの宴会芸かよ!!」


 何なのこいつ。

 調子が、調子が狂う。

 もうオージェ君が奴の足元で倒れているという危機的状況との落差が酷い!!


「えーとリンシアさん。これって殴りに行っていいのかな?」


「そ、そうだね……」


 呆れながら本を取り出し魔道具を彼女に手渡す。


「行くよ、『聖装』!!」


 ユズカちゃんが聖装し魔人へ向かっていくと同時に私の本が光り出す。

 これはまさか!新しい力!!

 ページをめくっていくと新しいページに宝箱の絵が。

 撫でると緑色の小型宝箱が出現。私はユズカちゃん目掛けてそれを投げた。


「ユズカちゃん、新しい宝箱出たよ!!」


 私から新しい宝箱を受け取ったユズカちゃんが鍵穴を押して開けると何やら緑色の長方形をしたアイテムが出てくる。

 あれ、何か見た事ある形だな。しかもあの色、私の記憶に引っかかるんだけど?

 リンシアじゃなくて『凛香』の方。


「ちょっ、リンシアさん。これ何!?何か古代文字っぽいの書いてる!ちょっと見て!!」


 ユズカちゃんが投げて返したものを受け取ってあらためる。

 あー、うん。これ知ってるよ。確かにユズカちゃん達からすれば古代文字に見えるよね

 これはね、『日本語』なんだよね。


「おい、それは何て書いてるんだ?読めるのか?」


「えーと……」


 私が手に持っているものは『元祖西遊記ウルトラモンチー大冒険』というレトロゲームソフトのカセットだった。

 うわぁ、懐かしいなぁ。子どもの頃ひとりでずっとやってたなぁ。難しいんだよねこれ……


「って何でだぁぁぁ!!?」


 何故にクソゲーと名高い伝説のゲームソフトが出てくるのよ!!

 この状況で何の役に立つの!?クソほどの役にも立たないわ!!


「おい、そんな凄いアイテムなのか!?」


 うん。ある意味凄いよ。

 ノーヒントで広大なマップを探索せられるけど中身スッカスカだし原作再現度はクソ低いし。


「あっ、リンシアさん。何かあたしの鎧にそれを挿し込めそうな溝がある!!」


「嘘ッ!?」


 見ればユズカちゃんが指さす左腕の一部にそれっぽい溝があるではないですか。

 これってつまり……あそこにインしろって事!?


「お願い!!」


 いやぁ、これ何の役にも立たないけどなぁ。

 そんな事を考えながら『元祖西遊記ウルトラモンチー大冒険』を投げる。 


「よっしゃ、行くよ!!」


 カセットを腕の溝にインするとユズカちゃんの身体が消え、魔人の背後に出現。


「なっ!?」


 腕を振り回し攻撃をするがこれもワープで回避。

 今度は頭上に現れてかかと落としが肩に叩き込まれる。

 あー、そういやワープするゲームだったなぁ。

 ユズカちゃんはワープを駆使して敵を翻弄。この適応っぷりは流石としか言いようがない。

 ワープで背後に移動するといわゆるジャーマンスープレックスの態勢で魔人を背後へ投げ飛ばす。

 おかげでオージェ君から魔人が離れた。


「今だよ、リンシアさん!!」


「わかった!」


 オージェ君へかけ寄ると自分の腕に腕輪を装着する。


「頼む、こいつを助けてやってくれ。俺の100倍はいい奴で大切な友達なんだ」


「わかってる。私が絶対に助けて見せるから……『聖装』ッ!!」


 聖装した私はオージェ君の深層世界へとダイブしていった。


【ユズカ視点】


 リンシアさんがオージェ君のなんたら世界に入っていった。

 ならばあたしは外に出ているこの『キリン』とかいう動物みたいな敵を倒すことに集中しないと。

 

 リンシアさんは凄いな。異世界の動物についても詳しいなんてきっと学校でも勉強熱心だったんだろう。あたしも見習わなきゃいけない。

 

 こいつのタフさは半端じゃない。

 あたしに投げられても即座に体勢を立て直して来るから中々厄介。


「ふふっ、キリンの底力を思い知りなさい」


 魔人の首が縦にゆっくり伸びていく。

 何、首って伸びるの?


「ネッキング……」


 首が大きくしなり……


「ハンマー!!」 


 凄まじいスピードで振り降ろされ地面にめり込んだ。

 こいつ、何て威力なの!?


「どうですか、この威力、スピード!これが異世界に生息する『キリン』という生き物。キリンはこの首をしならせる攻撃で獲物を仕留めて食べるのですよ」


「そ、そうだったんだ!何て恐ろしい生物!?」

 

 更に首は横にもしなり鞭の如き勢いでこちらを攻撃してくる。

 大振りだが侮れないほどの威力と射程を誇る攻撃。

 くっ、キリン、恐るべし!!!


□□


【????】


 災禍魔人が顕現した際に、特殊なフィールドが発生し周囲と隔絶された空間が誕生した。

 人々はその空間に対し無意識に近づけなくなり、認識も出来なくなる。

 だがひとり、その境界に立つと無理やり空間をこじ開け侵入する者が居た。


「やれやれ、災禍魔人が顕現した気配を感じて見に来てみればギラフェごときとは無駄足でしたわね」


 その人物、ドリエルは冷めた目でユズカと災禍魔人ギラフェの戦いを観察していた。


「つまらないですわね。帰るとしま……!?」


 そこで気づく。

 戦う二人から少し離れた所に倒れる自分の婚約者であるオージェ。

 そして彼に寄り添う友人であるアルの姿に。


「まさかあのバカ。オージェさんから……ッ!!」


 その顔に灯るのは怒りの炎。


「先ほど彼が苦しんでいたのはそういうことだったのですね……許さないッッ!!」


 ドリエルはインク壺の様なオブジェが刻まれているベルトを何処からか取り出すと腰に装着。

 真ん中に挿された万年筆を引き抜くと空中に何やら紋章を書き始めた。


「『魔装』ッッ!!」


 空中に書いた紋章が肥大化しドリエルに絡み付くと緑と黒の装甲を持つ邪悪な仮面戦士へと変身を果たす。


「お仕置きといきましょうか」


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