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聖装のヴァルキュリア~鍵の聖女と観察転生者のドタバディ~  作者: HOT-T
第3章 好きになったんだから仕方ない
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第25装 噴き出す災禍 (※)

オージェ君、実は結構周囲の環境に恵まれてはいる説。

【オージェ視点】


 まさかリンシアが俺とアルの事を応援してくれるなんて。

 今まで俺の事を奇異な目で見る人ばっかりだった。

 

 正直、自分でもおかしいんじゃないかって思う時はあった。

 でも…… 


 初めてアルと出会った時、俺は男の子の恰好をしていた。

 友達なんかは居なく、ペットのモンスター達だけが孤独を癒してくれていた。

 正直、振り返れば当時の俺は生意気だったし仕方ないとも思う。


 最初、アルは俺の事をウザがっていた。

 逃げ出したペット探しに巻き込まれ文句を言いつつも探してくれた。

 ペットが暴れて俺に攻撃してきたとき、彼は会ったばかりでウザがっていた俺を庇って火傷を負った。


 謝る俺に彼はこう言ったんだ。

 『『友達』を庇って出来た傷なんてカッコいいじゃんか』

 その時だった。俺の中にある『なんか違う』感覚が整ったのは。


 俺はアルに恋をした。

 だから必死にダイエットして『かわいい』を追求し、次に会った時は女の子の恰好をした。

 

 周囲の連中はそんな俺を気持ち悪がっけどアルはあの日と同じ様子で『マジかよ、可愛いじゃん』と褒めてくれた。

 変じゃないかと言われたら俺の周りをぐるぐるまわって『すげー着こなしだな』と感心していた。

 そういう男なんだ。アルは、見た目で人を判断しない。俺の王子様。


 家に帰ると父上が待っていた。

 母上は『恥ずかしい』と離縁してしまったが父上は俺が女装していることを特に咎めない。


「オージェよ。ドリエル嬢がお前に会いに来ているぞ」


「げっ……」


 ドリエルは一応俺の婚約者となっている女性。


「オージェよ。私はお前の恰好や性に対する嗜好を否定はしない。だがな、お前は将来この家を継ぐという責任もあるのだぞ?」


「だけど俺は……」


「レムの長男を好いているのはわかっている。だがな、相手はどうなのだ?お前を恋愛対象として見てくれているのか?」


「そ、それは……」


 アルは俺の好意に気づいていない。

 俺の恰好は普通として受け入れられているがあくまで彼の中で『女装する男友達』なのだ。

 あいつの恋愛対象は女性だし、今もある女性に恋をしている。


「人を想うのは自由だ。だが相手にその気が無いのなら、その気持ちを胸にしまって先に進むことも重要なのでは無いか?」


「うぐっ」


 アルが俺を恋愛対象として見てくれる可能性は限りなく低い。

 それはわかっている。わかっているけど……


「とりあえず、ドリエル嬢はお前の婚約者だ。しっかりと挨拶する様に」


□□

 

 応接間には1歳年下のご令嬢、ドリエルが待っていた。


「やぁ、ドリエル。久しぶり」


「ごきげんよう。オージェさん。相変わらずそんな恰好をなさっているのですね」


「そうだよ。おかしいと思うんだろ?嫌なら婚約は破棄してくれてもいい」


「構いませんわ。わたくしとしましてはあなたと婚約破棄をする方がデメリットが大きいので」


 素っ気なく彼女は答える。


「メリットとデメリットか」


「名家に生まれたからにはある程度責任があるのは仕方ない事です。わたくしの事情はご存じでしょう?」


 元侯爵家であるノルマンド家。

 彼女はそこの次女で家を継ぎはしないが家を大きくするため、有力な家の嫡子と結婚するよう言われていて今に至るらしい。


「別に名家なんか他にもあるだろう。そうだな、例えば『ミアガラッハ』とか。あそこなら血筋もしっかりしてるし」


 まあ、ヒイナちゃんの家なんだけどね。


「あそこの長男は『残念過ぎて』色々と『無理』です」

  

 あれはダメで女装する男は大丈夫なのかよ。よくわからないなぁ。


「オージェさん、申し訳ありませんが本日は少しきつく言わせていただきます」


「な、何だよ」


「いい加減、脈の無い男性に好意を寄せるのは止めて自身の責務を果たしてくださいまし」


「でも……この国では同性婚は認められているんだよ?だからもしかしたら」


 そうだ。もしかしたら……


「それはあなたの勝手な押し付けです。今は奇跡的にあなたの好意に気が付いていないだけで知ればあなたを拒絶する」


「違う!アルはそんな事したりしない」


「オージェさん、あなたと付き合っている事で学校で彼が何て言われているか知ってますか?」


「え……」


「男好き、レム家にとってマイナスの存在、話をするのも気持ち悪い。そうやって彼は孤立しているんですよ?あなたのせいじゃないですか」


「俺のせい?」


 いや、でもアルはそんなの気にしない。

 俺の事を馬鹿にする連中を見ても『気にすんなって、小便行こうぜ』って普通に接してくれて。それで……


「人を好きになる気持ちを、わたくしも否定は致しません。でもあなたの身勝手な好意がどれだけ彼に影響を与えていると思うんですか?」   


「それは……」


「もし彼が好意に気づいてしまったら、あなた達の関係も元のままじゃない。あなたにとって耐えがたい結果になるかもしれませんのよ?」


 そんなの、そんなのわかっている。

 だけど俺は……


『気持ち悪いですよ、あなた』


 頭の中で声が響く。


『男のくせにそんな格好して。きっとアル君は隣にいるのも嫌なんじゃないですか?』


「な、何を言うんだよ。アルはそんな、俺といるのが気持ち悪いなんて」


「オージェさん?」


 声は響く。


『ああ、気持ち悪い。男が男を好きになるなんて。親不孝でどうしようもないダメ息子』


「何だよこの声、何だよこれ!?」


『ようやく『隙』が出来て揺らいでくれた。そこのお嬢さんには感謝ですね』


 止めろ。聞きたくない。

 こんなの。だってアルは……アルは俺の王子様……


「す、すいません。わたくしも言い過ぎました。ですがわたくしはあなたにこの婚約を前向きに考えていただきたくて」

 

 ダメだ。頭の中ぐちゃぐちゃで考えがまとまらない。

 アルは、アルならきっと……受け入れてくれる。助けてくれる。

 俺は立ち上がるとアルに会うべく走り出した。


「ちょっとオージェさん!?」


□□


 アルを探し回っている間もずっと頭の中の声が俺を非難し続けた。

 母上が出て行ったのは俺のせい。みんなを不幸にする存在だって。


 そしてようやくアルを見つけた時、彼はリンシアと一緒にいた。


「アル……俺、俺、おかしいの?」

 

「は?」


 その時、頭の中に『アルの声』が聞こえた。


『うわ、来たよあの女装野郎。気持ち悪いなぁ。正直隣にいるの嫌なんだよなぁ』


 嘘だ。そんなの……


「男なのにこんな格好して、気持ち悪いの?隣にいるのも嫌なの?ねぇ、アル。何で、何でそんな事言うの!?」


「は?お前何を……」


 アルだけはそうじゃないって信じていたのに。それなのに……


『あー、キモっ。隣にいる女の方がよほどいいわ』


 そんな。そんなのって……


「わかってたけどどうしようもないんだ。俺、アルの事が昔から……あぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」


 俺の中から何かがあふれ出していく。

 決して外に出ちゃいけない何かが……


□□

【リンシア視点】


 ベルちゃんの時と同じく噴き出したオーラは人型へと変化していく。

 つまり『災禍魔人』が顕現する!!


 顕現した災禍魔人は青い肌に馬の様な牛の様な何とも言えない頭骨の仮面をかぶっている変態チックな見た目であった。


挿絵(By みてみん)



「ようやく顕現出来たか……」


「おいおい、何か変なもんがオージェから出てきたぞ?お前、何者だよ!?俺のダチに何しやがった!!?」


「我が名はギラフェ。この気持ち悪い男は我がいくら語り掛けようが耳を貸しはしなかった。だが今日、婚約者とやらに非難されたことで心が揺らぎ付け入るスキが出来たわけだ。お前の声色を真似して奴を罵倒するのは楽しい遊びだったわ」


 さっき彼が『何でそんな事言うの』ってつまり長男君の声を真似して彼を否定する何かを囁いた?

 長男君の声なら彼へのダメージは計り知れない。本当のこの連中は!!


「要するにてめぇ、俺のダチを傷つけたわけか。そいつは……許せねぇな!落とし前、つけてもらうぜ!!」


 長男君が大きく口を開き叫ぶ。


「ボイスランチャー!!」


 魔人ギラフェの身体がわずかに震え、周囲の地面が砕けた。


「おいおい、何でだよ。弱いモンスターならミンチになるような『音技』だぞ?」


 いや、どう見ても『弱いモンスター』のカテゴリーには入らんでしょう。


「災禍獣は聖女系の攻撃以外は耐性が高いの。だから……」


 猛スピードでこちら目掛け走ってくる人影。

 その人物は勢いをつけて飛ぶとドロップキックを災禍魔人の背中に叩き込んだ。


「ここからは、あたしの出番だぁぁ!!!」

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