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聖装のヴァルキュリア~鍵の聖女と観察転生者のドタバディ~  作者: HOT-T
第3章 好きになったんだから仕方ない
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第20装 悪役令嬢の婚約者が登場です

この世界は全体的に女性の地位が高めで尚且つ強いです。

特にレム一族は女性が強くて濃い傾向にありますね。

【リンシア視点】


 長男君とオージェ君に出す紅茶をトレイに載せて運ぶ。

 ナギさんは『えー、別にいいよ―』とか言ってくれたが居候させてもらっている身。

 それにこれでもかつてはOLとしてお茶くみを経験したこともあるのだ。

 あの時は湯呑に入れたお茶だったが今はティーカップに注がれた紅茶。

 何だろう。おしゃれ度がレベルアップしている気がして何か嬉しい。

 

 一応結婚生活の中で『あいつ』にコーヒーを淹れていたがいつも無言で『ん』とだけ言い、毎回半分くらい残していた。嫌な想い出だ。


 二人の前にカップを置いているとユズカちゃんがランニングから戻って来た。

 だいたい1時間くらい走ってたけどよくやるなぁ。

 ランニングの平均時速とか軽く上回るんだろうなぁ。多分、マラソン選手並みの速度じゃないかな。 


「ただいまー、お兄様。『ヒイナちゃん』来たよー」


 長男君が露骨に顔を歪める。


「留守だと言え」


 即答だった。


「残念。もう傍まで来ているわ」


 腰まで伸びた長い銀髪の女性が立っていた。

 どうやら彼女がヒイナちゃんという人物で長男君は彼女が苦手そうなのが反応からわかった。


「俺は何も聞こえないし何も見えない」


「あら、恥ずかしがっている所も素敵じゃない」


「うぜぇ……」


 ユズカちゃんが私に寄って来て説明してくれた。


「彼女はミアガラッハ・レム・ヒイナ。ウチの学校の卒業生で第12代『筆頭悪役令嬢』。あたし達の従姉でお兄様の婚約者」


 何か色々と情報量が多い娘来たよ!!

 『筆頭悪役令嬢』って何よ。きっと私の知ってる『悪役令嬢』と違うんだろうなぁ。

 それにしてもまさかの婚約者登場。これはこれは……


「バカ、最後の部分が違う。俺はこいつと婚約したつもりは微塵も無い」


「大丈夫。私はきちんと婚約したわ。アル君が赤ん坊の時にね」


「勝手にするな。そんなの無効だ」


「それはつまり、今ここで求婚してくれると?でもダメよ。ナダ女にとって男性から求婚されるのはあまりカッコいいことではないわ」


「何処をどうしたらそうなるんだよ……」

 

 うん。この突き抜けた感じと割と人の話を聞かないところは紛れもなくユズカちゃんの従姉だわ。

 

「ヒイナちゃん、今はギルドの受付嬢をしているの」


 どこかで見た事あるかと思ったら冒険者ギルドだ。

 どうにか生活費を稼ごうと思って行った時に見たんだった。


「結構男の人から人気なんだよ」


 何か人気あるけど男の人にプロレス技をかけそうだよね。

 だって『ユズカちゃんの従姉』だもん!!


「異名は『関節技(サブミッション)マイスター』なの。あたしも戦ったことあるけど今の所2勝21敗4引き分けなんだ」


 ほらやっぱり!

 しかも無茶苦茶強いよ。ユズカちゃんに21回勝ってる!?


「ふふっ、それでもまだまだ母様には遠く及ばないわ」


 そうかぁ、この娘のお母さんはもっとすごいのかぁ。


「ヒイナちゃんのお母様はお父様のお姉さんなの。やっぱりウチの卒業生で初代『悪役令嬢』なんだ」


 起源だったよ!

 この一族が『悪役令嬢』の起源じゃん!!

 色々経験したから何があってもそうそう驚かないと思ってたけど……驚きだよ!驚きのビッグウェーブだよ!!!


「ヒイナちゃんは小さい頃からお兄様一筋なんだ。何か素敵だよね」


 まあ、考えようによっては素敵だけどさ。


 長男君が嫌がっているよね。恥ずかしさの裏返しとも取れるけどどうなのかなぁ。

 しかしまさかのオージェちゃんに強力なライバル登場かぁ。

 大丈夫、お姉さんは君推しだからね?

 

「オージェ、あなたはいつもアル君にくっついているわね」


 ヒイナちゃんに睨まれてオージェ君は不機嫌そうな顔になる。

 おっ、女のバトル勃発かぁ。


「何だよヒイナ。俺らガキの頃からの親友だぜ?つるんでてなんか問題あるかよ?」


 はいはい、長男君。男女の友情は成立しないんだよ?

 どこかで恋愛感情が芽生えてカタチが変わっちゃうんだ。

 君の横に居るオージェちゃんなんか正にそれだよ。


 実体験を思い出すと私を裏切った女は旦那と昔からの友人で『男女の友情』をほざいてたんだ。

 それに私もすっかり騙されたよ。私に隠れてレッツ!コンバインしてたんだよなぁあいつら。


 私が子ども欲しいって言っても『子どもなんて面倒だ』って言ってた癖にさ。

 私が転生する直前、あの女ったら多分『あいつ』の子どもを妊娠してたからね。


「あのねぇ……オージェ、あんたはそもそも」


「ヒイナちゃんってさ、そうやってアルを束縛するから嫌がられるんでしょ?そもそも強引すぎるんだよな」


「くっ、そ、それは……」


 おっ、オージェちゃんが少し優勢じゃん。頑張れー!!


「君って出会った時からそこは変わってないよね。『俺』が今まで何回アルから愚痴を聞いたと思ってるの?間違いなく君の欠点だよ。そんな事でアルと結婚出来るとかおかしいよね」

 

 あれ?今、妙な単語が聞こえたよね?

 オージェちゃん、自分の事を『俺』って言ったよね?

 でも自分の事を『俺』って呼ぶ女の子だっているわけだし。


「はぁ……俺ちょっとウンコしたくなっちゃった。トイレ借りるよ」


「おう、きちんと流せよ。」


「どうしよっかなーってあはは、流石によその家のは流すって」


 いや、自分の家でも流せよ!!

 待って!何か今物凄くあれだよ。

 男子高校生的なノリが出て来なかった?

 いや、男子高校生がこんなアホみたいな会話するかは定かでないけどさ。

 もう見た目から明らかに出て来ない単語出てきたよね!?

 あと、男子高校生の皆さんすいませんでした。


 オージェちゃんがトイレに立った後、ヒイナちゃんはため息をつきながら言った。


「あのさ、いい加減に『彼』に言ってあげた方が良いんじゃないの?『男』なんだから女の子の恰好するの止めたほうがいいって」


 男だったぁぁぁぁ!

 可愛い女の子と思ってたらオージェちゃんならぬオージェ君だったぁぁ!?

 股間にエクスカリバーを装備してたよ!!

 そういやナギさんがオージェ君って言ってたわ。そういうことだったのか!!


「あっ、言い忘れたけど。オージェ君はお兄様の『男友達』だから」


 うん。そうみたいだね。

 出来ればもっと早く教えて欲しかった。

 もう見た目は完全に女の子なんだけどね。


「別にあいつの性嗜好なんだからいいじゃねぇか。身体は男だけど心は女。それだけのことだ」


 長男君は理解があるなぁ。

 いや、でも…………ねぇ?


「初めて会った時はクソ生意気な小太りのお坊ちゃまだったのが次に会ったら美少女だもの……あれは腰抜かしかけたわ」

 

 そりゃそうだよ。

 テッポウウオがタコになるくらいの衝撃だよ。

 もう私、トレイ持ったまま固まっちゃったよ。


「というか居候。いつまで突っ立ってこっち見てんだよ」


「あ、ごめんなさい」


 だって色々と衝撃が大きすぎて。

 ていうか長男君は好きになれないなぁ。何か『あいつ』と似てる所あるもん。 


「アル兄さん、リンシアさんに雑い扱いするの止めてよ?兄さんのそういうトコ嫌い」


「ぐふっ!!」


 ふんぞり返っていた長男君だが2階から降りて来た妹の言葉で撃沈されていた。


「マリィ~、そんな事言うなよぉ。お兄ちゃん寂しいじゃないかぁ」


「ウザイ」


「ああ、なんてこった。かわいい妹が反抗期だなんて……でもそんなトコも可愛い」


 さっきまでの不遜な態度とのギャップに唖然としているとユズカちゃんが横で呟く。


「気づいたと思うけどお兄様、結構な『シスコン』なの。昔はそうでも無かったけど段々ね。お母様も年々お父様に似てきているって嘆いてた」


 確かになぁ。

 でもこんなシスコンぶりを見たらヒイナちゃんも流石に……


「はぁ、『シスコン』なアル君も素敵だわ。キュンキュンする」


 ヒイナちゃんは頬を染めて長男君に熱い視線を送っていた。

 うん。全く問題ありませんでした。

 うわぁ、やっぱ濃いなぁこの一族。

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