第14装 予想通りの学園生活でした
ユズカ達の学園生活が少しだけ描写されますがいつもだいたいこれで平常運転です。
【リンシア視点】
「気になって思わず来てしまった……」
道行く人に尋ねながら何とかベルちゃん達の居る学校へたどり着くことが出来た。
ベリアーノ校。『リンシア』の記憶によると国内でも結構な進学校だ。
レム家の子達だとユズカちゃん、ベルちゃん、弟君、マリィちゃんの4人が通っているらしい。
この国の学校は6歳くらいから通えて日本で言う小・中・高一貫となっているのが普通だ。
その関係上、様々な年齢の生徒が学内に居た。制服もあるもけど着用義務はないので紛れ込むのは容易い。
ゆっくりと慎重に、動くとしよう。怪しまれない様に……
「あっ、リンシアさんだ。やっほー」
ユズカちゃんの声がする。
即見つかったよ。まあ、彼女で良かった。
何処にいるのかと思い辺りを見渡すがどこにも姿はない。
「上だよ、上!!」
上?
視線を上にあげるとそこには3階の壁に張り付いて猫を抱えるバディの姿があった。
えっと……何やってるのあの子?
壁、張り付いてるよね……いや、もう何やっても驚かないよ。
あれだろうな。多分木に登って降りられなくなっちゃった猫ちゃんを助けに行ったんだろうな。
そういう娘だもん。間違いないよ。
「ミス・レム!あなたはまたしてもそんな所に登って!!」
4階の教室から顔をのぞかせた女教師が叫ぶ。
「やっば!!」
「本当にあなたの一族は昔から無茶苦茶ばかりして!そこから降りたら生徒指導室まで来なさい!!」
「はーい……」
いやぁ、予想通りの学園生活を送ってますなぁ。
だってグラウンドで彼氏をダブルアームスープレックスでノックアウトしてフラれる娘だもんね。
「あはは、見つかっちゃったなぁ。反省文とお説教かぁ。お母様呼ばれなければいいんだけどね」
苦笑しながらユズカちゃんは壁から飛んで軽やかに地面へと降りると猫を離してあげた。
あれ、人間ってあの高さから飛んでも普通に大丈夫だっけ?
いや、彼女にそれは愚問だよね。大丈夫に決まってる。
「あの先生、伯母さん達が在学中から居るんだって。何か色々と凄い事があったんだって。その時代は『最悪の3姉妹』って呼ばれてて、あたし達が入学した時も結構な騒ぎになったの」
あれかな。レム家の子が冒険者養成コースとやらを『出禁』になった理由と関係ありそう。
どんなエピソードがあるのか個人的にすごく興味があります。
「入学拒否はされなかったんだね……」
「うん。器が広い学校だよね。あたしも8歳の頃から通ってるけど楽しいんだよね」
うん、この子って学校生活を全力でエンジョイするタイプなんだな。
私は学生時代とか割とボッチで友達も少なかった。正反対なんだね……
「あれ、ユズカちゃん。8歳から通ってるって……」
義務教育は無いものの就学可能年齢は6歳から。
見た感じユズカちゃんの家って結構裕福だから子どもを学校に通わせるのも別に苦労はしないはずだけど。
「色々あって学校へ入るの2年遅れたんだ。おじい様やバレッタママが亡くなったりもあったしさ」
「バレッタさんってマリィちゃんのお母さんだよね?」
「うん。元々はお父様の上司だった人なんだ」
お父さんったら上司に手を出しちゃったよ。
やっぱりとんでもない人かも……
「まあ、ナギママなんて昔の上司の娘なわけだし大したことじゃないよ」
大したことじゃないんだよな、この家の子にとっては。
やっぱり他人からしたら結構ヤバい人だよ。
「ねぇ、バレッタさんが亡くなったのってさ。その……ベルちゃんが関わっているってチラッと聞いたんだけど本当?」
私の言葉にユズカちゃんは表情を曇らせた。
「そう……だね。確かに関係はあるよ」
ユズカちゃんによるととある敵と戦った際、幼いベルちゃんを庇ってバレッタさんがかなりの深手を負ったらしい。
「でも、あれが無かったとしてもバレッタママはそんな長生き出来なかったかもしれない。あの戦いであの人は命を削って戦っていたから」
「命を……」
「あの人は『英雄』。そしてあたしの憧れ」
ユズカちゃんは目を瞑り少しの間黙る。
「『力持つ者、かくあるべし』。あの人の姿こそ私の目指すヒーローだから」
だからこの子は見ず知らずの人でも全力で助けようとするんだ。
でも、それは一歩間違えれば……
「ベルはね。あの人からマリィの事を託されていたんだよ。だからお姉ちゃんとして誰よりも頑張ってきた。だけど心に抱いている罪悪感は消えてないんだ。それで『あんな事』があってマリィはそんなベルに『怒ってる』んだ」
「怒ってる……」
それに『あんな事』って……
「色々と複雑なんだけど………」
「ミス・レムッッ!今すぐ生徒指導室まで!!」
校庭に立つ柱の先につけられた球体から教師の怒声が響く。
「あー、これはすぐにいかないとダメなやつだぁ。ごめん、リンシアさん。また後で!!」
ユズカちゃんは両手を合わせて謝ると壁を登りながら教室へ入っていく。
うん。多分あれが近道なんだろうけどあれで怒られているわけだからね?
「とりあえずベルちゃんかマリィちゃんを探そう」
□
【タイガ視点】
「ユズカ姉さん、またやらかしたんだな……」
拡声スフィアから響いていた教師の怒声。
『ミス・レム』にはベルやマリィも該当するが正直あのふたりが呼び出しを喰らう事はまずない。
呼び出されるのは9割方ユズカ姉さんだ。
成績優秀でなければ今頃停学を喰らっていてもおかしくはない。
中庭のベンチで弁当を食べながら何気なく周りを見る。
「うむ。実に良い眺めですな、タイガ氏よ」
「何がだ、モーガス」
俺の隣で飯を食べる数少ない友人に返事をする。
「談笑をしながら小さなお弁当をつつく少女達。実に眼福」
警備員さん、ここに犯罪者予備軍が居ます。
「別に俺は……」
「わかっております。タイガ氏もようやく将来的に自身のハーレムに迎える少女を品定めする様になったのでしょう?」
「何でそうなる?」
「ふふ、レム家と言えばハーレムを作る事で大きく成長を遂げた一族ではありませぬか」
否定できないんだよなぁ。
元王国貴族の家柄でも何でもないレム家がここまで成長したのは3人の奥さんを貰ったのお祖父さんが始まりだ。
父さんも何やかんやで5人貰って前の世代で作った基盤を基にさらなる成長を遂げたのは事実。
何かレム家の男=奥さんを大勢貰うやつ=女たらしのイメージが定着してしまっている。
「俺はハーレムを作る気はないよ。そういうのはやりたけりゃ上の兄さんたちがやればいい」
「まあ、そう言わずに。例えばあちらの少女はルガナー家のご令嬢。可憐な花だとは思いませんか?」
「どう見てもウチのマリィより年下じゃねぇか」
「そこがいいのですよ。今からアプローチをかけておき自分好みの女性になるよう見守っていくのがまた!」
警備員さん、犯罪者予備軍ですよ。
「ガキに興味はないんだよな」
「なるほど。もう少し年上の成長しかけがいいと」
「誤解を生むから止めろ」
はっきり言ってリンシアさんに比べればみんなガキに見える。
あの素晴らしい肉体……じゃなくてあの気高さというか優しさというか器の大きさ。
しかも料理まで母さん達に劣らないレベル。否、上かもしれない。
あの人ともっと話がしたい。もっとあの人の事を知りたい。
おや、そんな事を考えていたからかな。
周囲をきょろきょろしながら歩くリンシアさんの幻覚まで見えてきたじゃないか。
「あっ、弟君だ」
ははっ、声まで聞こえているじゃないか。
これは中々に重症な………
「ってリンシアさん!?」
思わず声をあげていた。
「ウソだろ。俺、リンシアさんを召喚する能力なんていつ身につけたんだ……」
「えーと、何を言ってるのかな?」
いや冷静になれ。
とりあえず目の前に居る彼女は本物。
つまり……
「また迷ったんですか?」
「失礼ね。ちゃんと道行く人に尋ねながら2時間かけて辿り着いたわ」
いや、家から学校まで20分ほどなんですけど……
「タイガ氏。こちらの女性は……」
「えーと、ユズカ姉さんの知り合いでワケあってウチに住んでいるんだ」
「弟君のお友達かな?リンシアです。よろしく」
「ふむ……なるほど」
モーガスは何かを悟った様子で立ち上がる。
「某、急用を思い出した故に失礼しましょう」
そそくさと立ち去る友人の背中を目で追いながら心の中で礼を言う。
ありがとうよ。お前は変態だけどいい奴だよ。
「あの、それでリンシアさん。今の話だとわざわざ学校へ来たみたいですけど何かあったんですか?」
もしかして俺に会うために?
「ちょっとベルちゃんとマリィちゃんの様子が気になってね」
ですよねぇ。そんな俺に都合のいい展開があるわけない。
「確かにベル姉さんは調子悪そうだったな。保健室とかかな。あっ、でもマリィならどこにいるかわかりますよ?案内しましょうか?」
「本当?ありがとう」
リンシアさんを俺がエスコート。
やべぇ、髪型乱れてないか?息とか臭くない?
「それじゃあ、弟君。よろしくね」
ああ、天におわす女神様。ありがとうございます。
次回、マリィに焦点が当てられエグイ過去が明らかに。




