職場で気になるポーカーフェイスの彼女
自分が24才の時、大手スーパーの設備管理員でした。
当時、流通業界は大人気で、新卒の方は狭き門を潜り抜けた優秀な方ばかりで、晴れて店舗に配属される多くは女性でした。
彼女達は、とにかく頭が切れて美しい容姿でした。
ですが、学生時代に勉強ばかりしていたのか、それはそれは縁遠い方ばかりでした。
その中でも極めて美形なのですが、いつもポーカーフェイスの麻田美崎さんという方がいました。
我々の仕事は機器点検等の汚れ作業だったので、優秀な彼女達とは一線を画していました。
しかし、そんな生真面目で縁遠い彼女達を危惧した売り場MGの福沢一男さんが自分に声を掛けてきました。
「なあ、宗田君さ~、うちの売り場の子に声を掛けてくれない?自慢じゃないが今までこの部署で結婚した子は誰もいないんだよ」
最初は乗り気じゃなかったものの、MGから何度もそう言われた為、ある日退社時間がよく被る麻田さんに駅まで一緒に帰ろうと声を掛けてみました。
すると、麻田さんは目を丸くして口をあんぐり開いてフリーズしてしまいました。
マジか…、こんなにも手強いのかと思いましたが、ここは誤魔化して走って帰ったのです。
誘うにしても1対1だと無理めなので、今度は合コンを企画する事にしました。
男性メンバーは同僚の大山君と下村君でした。
そこで、売り場の女子達が休憩から戻って来る頃を見計らって、今度は話しやすそうな方に声を掛けてみました。
「ねえ、来月の店休日に合コンしない?こっちは3人なんだけど何人か集められない?」
すると、近くを通り掛かった女子が何人も集まってきました。
そこで、いくつか質問が飛びました。
「あの~、それって年齢制限とかあるんですか?」
想定外の質問に3人はたじたじでした。
いつの間にか、その中には珍しくにこやかな顔をした麻田さんもいました。
最初こそ盛り上がっていましたが、後ろでこんな声がしました。
「それってMGの差し金なんでしょ」
その一言で急に周りが静かになりました。
そこで、麻田さんが沈黙を破って言いました。
「私からも質問なんですけど、二次会はどこでやるんですか?」
「えっとそれは…、まだ合コンをやるかも決まっていないので…」
「何よ、みさきー、やる気満々ね」
「でも、あなた今迄の話聞いてたの?」
「それは…、いつもあんたは余計な事を言うから、よく母から黙っとけって言われています」
そう話すと、麻田さんはいつものポーカーフェイスに戻りました。