第8話 覚醒、「見習い賢者」
オーディンに言われて目を閉じてから暫くすると、頭の中で「声」が聞こえた。
「君は何を求めているの?」
「声」が出してきた質問に、春風は答えた。
「俺は、『力』と『強さ』を求めている」
「どんな『力』と『強さ』を求めているの?」
「大切なものを守り、自分も生き残る為の『力』と、どんな状況下でも、自分の『意思』と『覚悟』を貫き通す『強さ』だ。あ、でも……」
「でも?」
「いきなり大きいものだと扱いに困るから、最初は小さいもので、俺と一緒に成長していく方がいいな」
「ふむふむ。じゃあ、次の質問。もし、今すぐなれる『自分』があるとしたら、どんな『自分』になりたい?」
「勿論、世界にただ1人の、俺だからこそなれる、俺にしかなれない『自分』がいい!」
「具体的に言うと?」
「うーん。『常識』を完璧に理解してても、それに囚われないだけじゃなくって、目的の為にはその『常識』さえも利用するどころか、逆にこっちから新しく『常識』を作る事だってできる……ってな感じの『自分』かな?」
「随分とぶっ飛んでるね」
「ハハ、不本意だけど、よく言われるよ」
春風は苦笑いしながら答えた。
「うん。これで質問は終わりだよ。お疲れ様」
「声」にそう言われた後、春風は意識を失った。
その瞬間、体が光の粒子になっていく感覚に囚われたが、すぐに再構築されていくのがわかった。
その時、機械の様な「声」が聞こえた気がしたが、それを聞き取る事は出来なかった。
「『神』ニヨル肉体改造ヲ完了シマシタ」
「現在ノ『エルード』ノ情報ヲモトニ、新タナル肉体ヲ構築シマシタ」
「『ステータス』ヲ表示出来ル様ニナリマシタ」
「『職能』ガ覚醒サレマシタ」
「本人ノ『意思』ト強イ『魂の輝き』ヲ確認。固有職能『見習い賢者』ニ覚醒シマシタ」
「専用スキル[魔術作成]、[魔石生成]、[魔導具錬成]ヲ入手シマシタ」
「魔力属性[風]ノ覚醒ヲ確認シマシタ」
「地球ノ神[オーディン]トノ契約ニヨリ、魔力属性ニ[火]、[水]、[土]、[光]、[闇]、[無]ガ加ワリマシタ」
「右腕ニ異質ナ『力』ヲ確認。『ステータス』ヘノ組ミ込ミヲ開始シマス」
「状態異常[呪い(彼岸花の呪い)]ガ発現サレマシタ」
「称号[異世界(地球)人]、[神(地球)と契約を結びし者]、[固有職保持者]、[呪われし者]ヲ入手シマシタ」
「称号[異世界(地球)人]ノ入手ニ伴イ、特殊スキル[異世界言語理解]ヲ入手シマシタ]
「はい、出来上がり」
オーディンにそう言われて、春風はハッと目を覚ました。周りを見回すと、オーディンを含む多くの神々に囲まれていた。
「気分はどうだい?」
「……何か、変な感じです」
優しく話しかけてきたオーディンに、春風は困った様な笑顔で答えた。
「まぁ、そうだろうね……っと、それじゃあ早速だけど、現在の『エルード』について説明するよ」
「わかりました」
コクリと頷く春風を見て、オーディンは説明を開始した。
「現在の『エルード』について調べた結果、その世界の『概念』は僕らが知っていたものとは大きく変わっていて、ゲームに出てくる『レベル』や『ステータス』が存在している事がわかったんだ」
「『レベル』や『ステータス』って……」
その瞬間、春風は肉体改造されていた時に、そんな事を言っていた「声」を聞いたのを思い出して、春風はオーディンに質問した。
「それって、今の俺にもあるって事ですよね?」
「うん、あるよ」
「どうやって見る事が出来るのですか?」
「意識を集中して、『ステータスオープン』と唱えるんだ。それで見える様になる」
そう言われると、春風はすぐに意識を集中して、
「ステータスオープン」
と唱えた。
すると、春風の目の前にゲームのウインドウの様なものが現れて、そこにはこう記されていた。
幸村春風(人間・男・17歳) 職能:見習い賢者
レベル:1
ボーナスポイント:0
体力:70/70
魔力:100/100
攻撃:7
防御:19(7+10+2)
知力:10
精神:10
器用:10
敏捷:9
運勢:5
魔力属性:風、火、水、土、光、闇、無
状態異常:呪い(彼岸花の呪い)
スキル:なし
専用スキル:魔術作成、魔石生成、魔導具錬成
特殊スキル:異世界言語理解
称号:異世界(地球)人、神(地球)と契約を結びし者、固有職保持者、呪われし者
装備:学生服、上履き、伊達眼鏡、師匠のお守り、封呪の包帯
「これが、俺の『ステータス』……」
自身のステータスを確認した春風は、色々と突っ込みたい気持ちを抑えながら、取り敢えず最初に気になった部分を調べる事にした。
(何だよ『職能:見習い賢者』って!?)
心の中でそう突っ込んだ春風は、取り敢えず調べてみようと「職能:見習い賢者」の部分に触れた。
すると、先程のステータスウインドウとは別に、2つのウインドウが現れた。
春風は何だろうと思い、その2つのウインドウを見てみると、そこにはこう書かれてた。
職能……その人の持つ『才能』が、『神』の加護によって職業という形になって現れたもの。戦闘に特化した「戦闘職能」と、生産に特化した「生産職能」に分けられている。
見習い賢者(固有職能)……「力」に目覚めたばかりの未熟な賢者。様々な魔術、魔導具(魔力を持った武器や道具)を生み出し、意のままに操る事によって戦闘から生産まで幅広く活躍する事が出来る。ただし、未熟故に低いレベルのものしか生み出せない。
(成程ね)
春風は説明を読み終えると、
「俺好みじゃねぇか」
と言って、ニヤリと邪悪な笑みを浮かべた。
今作では、主人公の契約&肉体改造の部分を少し改良しました。
改造後のアナウンス風のセリフを、ちょっと機械っぽく漢字とカタカナで表記しました。
また、初期ステータスも大幅に改良しました。主人公の職業はそのままに、初期値の部分につきましては、「HP」と「MP」にあたる「体力」と「魔力」の数値を最大100、その他の能力値を最大10として表記しました。
さらに初期スキルの方も名前を少し変えて、前作では主人公は「魔術だけじゃなく魔法も作れる」という設定でしたが、今作ではシンプルに「魔術のみ」という設定にしました。勿論、それ以外は変わっていませんが。
最後に称号ですが、前作と同じ称号に、「呪われし者」という新たな称号をプラスし、これにより「呪いを持った状態」という形でスタートとさせていただきました。因みに称号「異世界人」につきましては、特性として「言語理解」のスキルを入手という形とさせていただきました。
変更点が多すぎて後書きがちょっと長くなりましたが、今後ともこの物語をどうぞよろしくお願いします。