第81話 あれからの彼ら
お待たせしました。1日遅れの投稿です。
断罪官との戦いから数日後。
中立都市シャーサルの住宅区の片隅に、少し古いが立派な造りの大きな一軒家がある。
そして今、その一軒家の玄関の扉が開かれて、中から1人の少年が出てきた。
「よーしみんな、仕事に行くよ」
その少年、幸村春風がそう言った時、3人の少年少女が出てきた。
「オッケー、ハル!」
元気良く答えた少女、リアナ・フィアンマ。
「ああ、わかったよアニキ」
短い赤毛の少年、アデル・イグナイト。
「い、いつでもいけます、ハル兄さん」
眼鏡をかけた長いおさげの少女、ルーシー・トワイライト。
3人が春風のもとに集まると、今度は家の中から3人の幼い子供達が出てきて、
『いってらっしゃーい!』
と、元気良く言ったので、春風はニコリと笑って、
「イアン、ニコラ、マーク。3人共、良い子で待ってるんだよ」
と返した。
それを聞いて、元気いっぱいな少年イアン・アシュビー、同じく元気いっぱいな少女ニコラ・バーネット、ちょっと小太りな少年マーク・カーリングが『はーい!』と返事すると、今度は短い茶髪の女性と、また新たに3人の少年少女が出てきた。
春風は彼女達を見て、
「アリアさん、フィオナ。クレイグにケイト。俺達がいない間、留守をよろしくお願いします」
と、頭を下げて頼んだ。
「ああ、任せてくれ」
そう返事した短い茶髪の女性、アリア・フォード。
「体に気をつけてください」
アリアの妹、フィナ・フォード。
この2人、本名は「アリシア・ランフォード」と、「フィオナ・ランフォード」というのだが、事情があって今は偽名を名乗っている。
「……任された」
大柄の少年、クレイグ・ロックウッド。
「うん、任せてよ!」
元気いっぱいに答える少女、ケイト・シンプスン。
全員の返事を聞き終えると、春風は「うんうん」と頷いて、
「じゃあみんな、行ってきます!」
と言うと、リアナ、アデル、ルーシーを連れてギルド総本部に出発した。
その道中、
「ふう」
「? どうしたのハル?」
「いやぁ、未だに信じられなくてさ」
「何がだよ、アニキ?」
アデルの問いに、春風は周囲に聞こえない様に小声で言う。
「あの日から、まさかこうしてみんなと一緒にハンターをする事になるなんて思わなくてさ、しかもレギオンまで作る事になるとはね」
「あぁ、うん確かに。おまけにハルがリーダーなんだからね」
「そうなんだよ。俺みたいな人間がそんなもの務まるわけないのに」
そう言うと、春風は「ハァ」と溜め息を吐いた。
すると、それまで春風の後ろを歩いていたアデルが、
「そんな事ねぇよ! 俺は、アニキはリーダーに相応しいって思ってんだから!」
と、顔を赤くして言った。その後、それに続く様にルーシーも、
「う、うん。兄さんなら、きっと良いリーダーになれると思う。それに……」
「?」
「わ、私達がこうして生きているのも、兄さんのおかげだから」
と、恥ずかしそうに話すルーシーのその言葉を聞いて、
「あー、うん。ありがとう、2人とも」
と、春風は困った様な笑顔で答えた。
それを見て、リアナは少し寂しくなったのかムッとすると、
「ほら、ハル。早く総本部に行くよ!」
と、春風の手を引っ張りながら進んだ。
「あ、ちょっと、リアナ!」
急に手を引っ張られて焦る春風と、それを追いかけるアデルとルーシー。そんな彼らの様子を、左腕のガントレットに装着された零号の中から見たジゼルは、
「ふふ、若いって、本当に良いわねぇ」
と、笑いながら小声で言った。
そんなやり取りをしながら総本部を目指す春風は、
(ほんっとに、信じられないよなぁ)
と、心の中でそう呟きながら、断罪官を退けた後の、あの日の出来事を思い出していた。
今回は、新章プロローグその2をイメージしました。第5章で春風が助けた少年少女達のフルネームを考えていたら、遅くなってしまいました。
大変、申し訳ありませんでした。




