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ユニーク賢者の異世界大冒険  作者: ハヤテ
第5章 対決、断罪官

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第78話 終局


 「な、なに……が、起きた?」


 いきなり春風にぶっ飛ばされたウォーレン。周りがポカンとしている中、春風はウォーレンに近づいて、左手を傷口にかざした。


 「求めるは“水”、癒しの雫、『キュアドロップ』」


 春風がそう唱えると、左手が青く光って、そこから水が一雫、傷口にポタリと落ちた。


 すると、出血していた傷口が、次第に塞がっていった。


 (こ、これは、水の魔術! この少年、水属性の魔術も使えるのか!?)


 「うん、これでよし。あ、でもちょっと跡が残ったな。彼岸花で斬られた所為かな。ま、いっか」


 春風は驚くウォーレンの前でそう呟くと、


 「さて、ウォーレンさんだったな?」


 いきなりそう尋ねられたウォーレンは、ハッとするだけで何も答えられなかった。


 「あんたさぁ、今日まで何人の『異端者』を殺してきた?」


 「な……何?」


 4秒の沈黙後、


 「フン、答えられないか。ま、あんたら断罪官にとって、殺した人達の命の重さなんて、大したものじゃないんだろうなぁ。今みたいに答えられないのが、なによりの証拠じゃねぇか」


 「……」


 「で、その異端者達を何人も殺しておいて、何をあっさり死のうとしているのさ。あ、さては、自分が死ぬことで、『人を殺したという事実が無かったことになる』って思ってんのかな?」


 春風は笑ってそう尋ねると、次の瞬間、ウォーレンの髪を鷲掴みにして無理矢理起こすと、顔を近づけて、


 「お前ふざけんなよ。殺された大勢の人の命と、お前1人の命が釣り合うと思ってんの? もし本気でそう思ってんなら、とんだ自惚れ野郎の馬鹿野郎だわ」


 「な!?」


 「もしお前らがやってきたことが後の世で悪い事に変わって、その償いがお前1人の死でどうこう出来ると思ったら思いっきり大間違いだよ? そこにいる隊員達も一緒に死んでも全然足りないよ? わかってる? お前らがしてきたことってのは、それくらい重いことだってのが……」


 春風はウォーレンを鷲掴みにしていた手を離すと、その手をグッと握って、


 「わかんねぇのかぁ!?」


 と、渾身の右ストレートをかまして、ウォーレンを殴り飛ばした。


 「グハ!」


 殴られたウォーレンが地面に倒れたのを確認すると、春風は隊員達の方を向いて、叫んだ。


 「断罪官の隊員共ぉ!」


 『!?』


 「お前らの心に、魂に問いかける! 今! 俺の目の前で倒れているこのオッサンは! このぉ! 十代の若造にやられた情けないオッサンはぁ! お前らにとって、何なんだぁ!?」


 その叫びを聞いて、ルークは、断罪官の隊員達は、全員、力強く立ち上がり、叫んだ。


 『俺達のぉ、大隊長だぁあああああ!』


 ルークと隊員達はそう叫んだ後、一斉にウォーレンのもとに駆け寄った。そして、


 「総員、大隊長を守るぞ! 動ける者は前へ!」


 『ハッ!』


 ルークの命令に従い、隊員はすぐに陣形を組んだ。


 「おお! いいねいいね!」


 それを見て、春風は「凄い」と感心した。


 その後、陣形が組み終わると、ルーク春風をキッと睨みつけて叫んだ。


 「ハルといったな! 覚えたからな、貴様の名と顔は! この屈辱、絶対に忘れないぞ! 我ら断罪官の誇りにかけて、貴様は必ず殺してやる!」


 ルークのその叫びに、春風は不敵な笑みを浮かべて、


 「へっ! いいぜぇ、いつでもかかってきな! 何百回だって返り討ちにしてやるよ! だがな、だからって他の連中に手ェ出したら、テメーら全員生きたまま地獄に突き落としてやっからな!」


 と、挑発じみたセリフを言った。


 その後、ルークは懐から小さな宝石の様なものを取り出すと、


 「転移珠、展開! 教会本部へ!」


 と叫んだ。


 すると、宝石の様なものから光が発せられ、ウォーレン、ルーク、隊員達を包んだ。


 「覚えていろ」


 ルークがそう言ったのを最後に、光に包まれた断罪官達は、その場からスッと消えた。後に残っていたのは、折れた聖剣スパークルの切先だけだった。


 「フゥ」


 春風は、断罪官達が消えたのを見た後、アリシア達の方を向いて、


 「結界解除」


 と言って、アリシア達を守っていた結界を解除した。


 「これで……よしと……」


 そう言うと、春風はバタリとその場に倒れた。


 「あ!」


 『おねにーちゃん!』


 驚いたアリシア達は、すぐに春風に駆け寄った。


 「は、春風!」


 そして、漸く立ち上がったリアナも、春風に駆け寄った。


 「春風様! 春風様!」


 零号内からジゼルが春風に向かって必死に話しかける。


 「春風!」


 「しっかりして!」


 『おねにーちゃん!』


 集まってきたリアナやアリシア達も、必死に春風に話しかける。


 そんな彼女達に、春風は、


 「だ、大丈夫……と言いたいけど、かなりやばい」


 「そんな! どうして!?」


 春風は「うーん」と唸った後、


 「実は、朝ご飯、食べられなくって、ここに来るまでも、ほんの軽くしか食べれてなくて……」


 『……え?』


 グギュルルルゥウウウウウウウ!


 「お腹、すいたよぉおおおおおおお」


 と、先程まで激闘を繰り広げていた人物とは思えないくらいの、なんとも情けないセリフを吐いた。


 それを聞いたリアナ達は、


 『え、ええぇ?』


 と、その場でへなへなとへたり込むのだった。


 


 

 


 

 


 

 前回の最後のところですが、「右ストレート」から「アッパーカット」に変えて、それに合わせて文章を修正しました。真に申し訳ございません。


 そして、次回でこの章は終わります。

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