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ユニーク賢者の異世界大冒険  作者: ハヤテ
第5章 対決、断罪官

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第60話 全てを聞き終えて


 「これが、私の『生前』の話です」


 そう言い終えたジゼルの声は、微かに震えていた。


 すると、それまで黙っていた春風が口を開く。


 「ジゼルさん」


 「はい」


 「今見た断罪官達の中に、ジゼルさんと、ジゼルさんの大切な人達を殺した人はいました?」


 「……いいえ。あの中にはいませんでした」


 「そうですか」


 話が終わると、2人のいる場が沈黙に包まれた。


 暫くすると、再び春風が口を開いた。


 「ジゼルさん」


 「はい」


 「俺は、アイツらを許すことが出来ません」


 「……」


 「許されるなら、今すぐにでもアイツらをぶっ潰したいところですけど、ジゼルさんは、それを望みませんよね?」


 「……ええ。その様な事をしても、私と、私の大切な人達は生き返りません。それに……」


 「それに?」


 「共にヘリアテス様の下を旅立ってから、今日までハンターとして活躍する貴方を見て、わかったのです」


 「……何をですか?」


 すると、左腕のガントレットに装着された零号からジゼルが出てきて、春風の手にそっと触れた。といっても、幽霊なので本当に触れることは出来ないが。


 「春風様、貴方は、人を『幸せ』にする為に頑張ることが出来る方です。そんな貴方のこの手を、あの連中の血で汚して欲しくありません」


 「!」


 ジゼルの言葉を聞いて、春風は泣きそうになりながら俯いた。そんな春風に、ジゼルは優しく話しかける。


 「今はあの連中に関わる事よりも、貴方の大切な目的の為に、力をつける事を優先しましょう。それでもし、その目的達成の途中で、あの連中が邪魔をしてきたら、その時は思いっきり潰してしましょう、ね?」


 穏やかな笑みでサラリと物騒なことを言うジゼルに、春風はゆっくりと顔を上げると、


 「……はい」


 と、苦笑いしながら頷いた。


 それを見て、ジゼルはニコリとすると、


 「さあ、それでは仕事を受けに行きましょう?」


 と言って、再び零号の中へと戻った。


 「……それじゃあ、お仕事頑張りますか」


 と、小さな声でそう言うと、春風はスッキリした足並みでその場を後にし、受け付けに向かった。


 だが、


 「うーん」


 仕事の掲示板の前で、春風は悩ましそうに唸っていた。


 何故なら、いつもより仕事の依頼が少ない上に、特に「これをやりたい」と言える依頼が無かったからだ。


 「なんか全然無いな。オマケに……」


 と、春風がチラリと後ろを振り向くと、今日は来ているハンターの数が少なかった。


 (やっぱり、表にいる断罪官の連中の所為かなぁ?)


 そんな事を考えていると、春風は手持ちのお金を確認した。


 ハンターになってからは、普通の依頼と一緒に魔物の討伐も行っていたので、幸いな事に暫くの間過ごすだけの余裕はあるのだが、だからといって、やはり仕事をしないわけにはいかないと思い、仕方ないなと適当な依頼をこなす事にした。


 その時、


 「あ、ハル君!」


 と、不意に名前を呼ばれたので、誰だろうと声がした方を向くと、そこには受け付け職員のメイベルがいた。


 「あ、メイベルさん。こんにちは」


 春風はメイベルに軽く挨拶すると、メイベルが側まで駆け寄ってきて、


 「こんにちは。今日は何か仕事を受けるのかな?」


 「ええ、まあ適当に……」


 メイベルの問いに対し、春風は何処となく気まずそうに答えた。


 すると、メイベルが何かを察したのか、


 「あ、もしかしてこれといったものが無かったのかな?」


 なんて事を聞いてきたので、春風は思わず「うっ!」となった。


 メイベルはそんな春風を見てクスクスと笑うと、

 

 「じゃあさ、今日一緒にランチでも食べにいかない?」


 と、顔を近づけながら言った。


 それを聞いて、春風は少し固まった後、


 「……はい?」


 と、首を傾げながらなんとも間抜けな声で返事をするのだった。


 


 

 


 

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― 新着の感想 ―
[一言] ジゼルさんが新しい体を手に入れ、元気を取り戻して美しい女性になってくれることを願っています。
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