第57話 思わぬ襲撃
(え!? なんだ!? 何で森の中から子供達が!?)
突然、森の中から現れた3人の子供達に、春風は驚きを隠せず混乱し、その場から動けなくなっていた。
そんな春風の心情を知らずに、子供達は春風に駆け寄った。
「ねぇねぇ、今の何!?」
「空、空飛んでたよね!?」
「すっごくカッコよかったぁ!」
固まったままの春風に、興奮した様子の子供達が声をかけてくる。
春風はどう答えれば良いのかわからず途方に暮れていた、まさにその時、
「その子達から離れろ!」
という怒鳴り声と共に、森の中から「何か」が飛び出してきて、春風に襲いかかってきた。
春風はすぐに子供達を自身の後ろに隠すと、左手を前に突き出して、
「求めるは“風”、旋風の障壁、『ウインド・ブロック』!」
と、目の前に風属性の魔力の壁を生み出す魔術を唱えて、襲ってきた「何か」を防いだ。
「く!」
攻撃を止められたと知った「何か」が、一旦春風から離れた。
春風は「一体何なんだ?」と思ってその「何か」の正体を見てみると、それは、小振りの剣を持った春風と同い年くらいの少年だった。
「オイ、危ないじゃないか!」
春風はギロリと睨みつけてくる少年にそう怒鳴ったが、
「黙れ! その子達から離れろって言ってるんだ!」
と、少年も負けじと怒鳴り返してきた。
話を聞いて、「そうか、この子達の保護者か」と考えた春風は、
「オーケイ、わかったよ。俺はこの子達に何かをする気は無いから、その武器を下ろしてくれないかな?」
と、両手を上げてそう言った後、少年を見ながら子供達の背後に移動した。
「ほら、あのお兄さんの所にお帰り」
春風がそう優しく言うと、子供達はションボリした表情で、目の前の少年のもとへと歩いていった。そして、3人とも少年の近くに着いたのを確認すると、
「うんうん。それじゃあ俺はこの辺で……」
と、春風はそう言ってその場から離れようとした。
だが、
「待て」
と、何故か少年が引き止めてきた。
「な、何でしょうか?」
引き止められた春風が、恐る恐る少年にそう尋ねると、
「一緒に来てもらう」
と、少年は春風を睨みつけながら答えた。
「な、何故に?」
「仲間を呼ばれたら面倒だからな。お前をこのまま帰すわけにはいかない」
(ええ?)
少年にそう言われて、春風はどうしようかと考えたその時、
「! オイ、危ない後ろ!」
と、春風は少年達の背後に向かって叫んだ。
「何!?」
少年達が背後の方に振り向くと、そこには何もいなかった。
「お前、何のつも……」
少年が春風に向き直った時、
「いない!?」
そこには、既に春風の姿は無かった。
「アイツ!」
騙されたと理解した少年が、怒って春風を追いかけようとしたその時、
「よせ」
と、背後から止める声がした。少年が再び背後を振り向くと、そこには長い茶髪の女性が立っていた。
「でも、アイツを追いかけないと!」
少年がそう言うと、女性は、
「今、私達の事を知られるわけにはいかない」
と、穏やかな口調で少年を諭した。
少年は少し考えた末、
「……わかった」
と、少年は手に持った剣を鞘に納めた。
そして、春風がいた場所を睨むと、子供達と共に女性の後を追って森に入った。
一方、少年達を欺いた春風は、
「ウオオオオオオオッ!」
と叫びながら、草原を全力で走っていた。当然、手に持っていたフライボードは既にポーチにしまっていた。
その後、シャーサルの近くに着くと、すぐに立ち止まって、
「ふぅ、危なかった」
と汗を拭いて、今度はシャーサルに向かって歩き出したのだった。
前作とは違うストーリー展開なので、文章的におかしな所があったら指摘してください。




