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ユニーク賢者の異世界大冒険  作者: ハヤテ
第16章 決戦前

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第544話 最後の疑問


 固い握手をした後、春風と翔輝が仲間達がいるテントへと戻ると、


 「あれ? 水音」


 テントの前で、水音が1人もの想いに耽っていた。


 「どうしたの水音? なんだか凄い沈んだ表情をしているけど」


 と、春風が話しかけると、


 「……ああ、春風」


 と、水音が何やら元気のなさそうな声でそう返事した。


 その様子を見て、春風と翔輝が頭上に「?」を浮かべていると、


 「……安土博士の『記憶』、見たよ」


 と、何処か申し訳なさそうな表情で答えたので、春風は思わず頭上に「!」を浮かべた。


 どうやら休憩が始まった時に、クロエルに春風の『記憶』を見せてもらった(クロエル本人曰く、一度見たら他の人にも見せることが出来るという)ようで、その時に2年前の「あの日」の記憶も見たのだろうと理解した春風は、


 「あぁ、えっとぉ……」


 と、気まずそうにしていると、水音は顔を下に向けて、


 「……春風は、悪くない」


 と言った。


 「……それでも、俺は自分を許すことが出来ないよ」


 と、春風が悲しそうな表情でそう言うと、水音は春風に近づいて、


 「なら僕が、春風を許すよ。そして……」


 「?」


 「もしまた似たような出来事が起きたら、今度は僕も一緒に行くよ。もう、春風を1人でなんて行かせないから」


 と、まっすぐ春風を見つめながら言ったので、


 「……ありがとう」


 と、春風はお礼を言った。


 すると、水音は表情を変えて、


 「ところで春風、どうしても()()()()()()()があるんだけど……」


 「? 何?」


 「春風は確か、オーディン様と契約したんだよね?」


 「そうだけど」


 「何でオーディン様なんだい? 日本人なら日本の神様と契約するものだと思うんだけど」


 と、尋ねてきたので、春風は思わず「うぅっ!」と唸り、


 「そ、それは……その……」


 と、ダラダラと汗を流した。そして、ふと水音の後ろを見ると、そこには「自分達も聞きたい」と言わんばかりに仲間達がジィッと見つめていた。


 「は、春風、どうしたの?」


 と、春風のあまりにも答えにくそうな様子を見て、水音が再びそう尋ねると、


 「い……言えない」


 と、春風は水音から視線を外しながら答えたので、


 「え、何? まさか、変な理由じゃないよね?」


 と、水音は春風に疑いの眼差しを向けながら更に尋ねた。


 それに対して、春風は「アハハ……」と更に答えにくそうにしていると、


 「ハルッち君」


 「ん?」


 と、いつの間にか春風の側に立っていたクロエルが、


 「ちょっと失礼」


 と言って、春風の手をガシッと掴んだ。


 「あ、ちょっと……!」


 と、春風はすぐにクロエルから離れようとしたが、時既に遅く、次の瞬間、目の前の景色が変わった。


 『契約するのは俺(僕)達だーっ!』


 『いいえ! 契約するのは私達よーっ!』


 それは、勇者召喚が行われた日、何もない真っ白な空間で行われた、「春風との契約」をめぐって神々が口論していた時の記憶だった。


 「春風と契約するのは自分だ」と、激しく言い合っている神々を見て、苛立ちを募らせていった春風。


 そして、とうとうブチッとなって叫んだ。


 「ああ、もう! だったら、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ぁ!」


 その叫びを聞いた時、それまで激しく口論していた神々は、急にピタッと止まって、一斉に春風を見た。


 そして、「あ、やべ……」と言わんばかりに自分が言ったことを後悔している様子の春風に向かって、


 『いいね! それでいこう!』


 と、神々は口を揃えてそう言うと、お互い顔を見合わせて、


 『せーの! ジャーン、ケーン、ポンッ!』


 と、一斉にジャンケンをした。


 その結果、


 「よっしゃあああああああっ!」


 オーディンが1人勝ちをし、


 『ちっくしょおおおおおおおっ!』


 残りは見事に全員負けた。


 その後、


 「というわけで、春風君。早速『契約』といこうじゃないか。なぁに、心配はいらないよ、アマテラスが言ってたように、本当に痛い事なんてないからね」


 と、オーディンが春風にそう言うと、そこで景色が変わった。


 元の場所に戻って、先ほど以上にダラダラと汗を流す春風に、水音が話しかける。


 「……つまり、君は神様達にジャンケンをさせて、それで勝ったオーディン様契約した、と?」


 低い声でそう尋ねてきた水音に、春風は気まずそうな表情で、


 「う……うん」


 と頷くと、テントからもの凄い勢いで小夜子とクラスメイト達が出てきて、


 「ばっかもーーーーーーーんっ!」


 『バッカヤロォオオオオオオオッ!』


 『馬ぁ鹿ぁあああああああっ!』


 と、春風に向かって怒声を浴びせた。


 それを受けて、


 「す、すみませんでしたぁあああああああっ!」


 と、春風は全力で土下座しながら謝罪した。


 そんな春風達を見て、


 「いやぁ、流石僕達の弟だねぇ」

 

 「そうねぇ」


 「ウフフ」


 と、事情を知っていた冬夜、雪花、静流は穏やかな笑みを浮かべていた。

 


 


 

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