第533話 光の神(偽物)の登場
「『北の大地』ぶりだな、悪魔共」
と、突如現れた長い金髪の青年は、春風達に向かってそう言った。
その言葉を聞いて、春風を除いた面々(主にリアナや水音達)はすぐさま身構えたが、春風だけは落ち着いた表情で、
「何となくわかるけど、敢えて聞くよ。あんたも『神様』の1人かい?」
と、金髪の青年に尋ね返した。
その質問に、天使となった切嗣達は「お前!」と言わんばかりの表情で春風を睨みつけたが、金髪の青年はスッと右手を上げて「よせ」と言うと、
「キチンと名乗るのはこれが初めてだったな。如何にも、私は『光』を司りし神、ラディウスという者だ」
と、金髪の青年ーーラディウスはそう自己紹介した。
その偉そうな態度に、リアナをはじめとした春風の仲間達は、ギュッと武器を握る力を強め、ループスとヘリアテスは歯をギリッとさせてラディウスを睨んだ。
しかし、春風だけは落ち着いた表情を崩さず、
「フーン、そうかい。じゃ、早速だけど……」
と言うと、鋭い眼差しをラディウスに向けて、
「ループス様とヘリアテス様の力、返してよ」
と言った。
それに対してラディウスは、
「『断る』と言ったら?」
と、春風と同じように鋭い目つきで尋ねると、
「ボコった後で奪う。で、『世界』と俺の幸せの為に、お仲間共々この世から退場してもらう」
と、春風は鋭い目つきのまま彼岸花・神ウチの切先をラディウスに向けながら答えた。
それを見て戦闘態勢に入ろうとする切嗣達。
しかし、ラディウスは「フ……」と小さく笑うと、
「ほう。コレを見ても、まだそんなセリフが吐けるかな?」
と言って、静かに両腕を広げた。
次の瞬間、ラディウスの全身が白いオーラに包まれた。
それは、先ほど切嗣達が見せたものとは格段に大きく、そして、神々しかった。
しかし、
(ん? 何だろう。あいつのオーラから、変な音が聞こえる……)
と怪しんだ春風は、耳を澄ましてオーラから聞こえてきたその音を聞こうとすると、
(これは……沢山の、呻き声?)
それは、どうやら誰かの呻き声のようで、しかもかなりの多さだった。
その呻き声を聞いた時、
(……あ! もしかして!)
と、春風は何かに気づいたかのような表情になって、
「あんた。それ、今まで奪ってきた『神々』の力か?」
と、ラディウスに尋ねた。
その瞬間、
「クックック、ご名答。これは我々が今まで集めてきた、あらゆる世界の神々の力だ。で、もう一度聞くが、コレを見てもまだ同じセリフが吐けるかな?」
と、ラディウスは笑いながらそう答えた。
その答えを聞いて、春風は更に鋭い視線をラディウスに向けると、
「安心しろ、今この場でお前達と戦う気はないのでな、悪いが舞台を用意させてもらう」
と、ラディウスは真面目な表情でそう言った後、右腕をスッと上げて、パチンと指を鳴らした。
すると、ゴゴゴと辺りが揺れ出して、
「うわ! 何だ!?」
『キャア!』
と、春風達は驚いて思わず膝から崩れ落ちた。
「お、お前ぇ! 何しやがった!」
と、地面に突っ伏した状態のループスが、怒鳴るようにラディウスに尋ねると、
「言った筈だ。舞台を用意させてもらう、とな」
と、ラディウスはニヤリと笑いながら答えた。
そして、その答えの後、揺れがだんだん大きくなっていったので、
「コレは……まずい!」
と、春風はすぐにフライング・カーペットを広げて、
「みんな、ここは危険だ! 乗って!」
と言って、仲間達を全員乗せた後、フライング・カーペットに魔力を流して空に浮かせた。
それを見て、
「ま、待て幸村!」
と、切嗣が口を開くと、
「ごめん! 仲間達が心配なんで!」
と、春風は切嗣達に向かって謝罪した。
その言葉に切嗣達が「なっ!」と驚きの声を上げたが、その後すぐに春風は続けて、
「でも安心して……テメェらは全員ぶちのめすの決定だからな。せいぜい首でも洗って待ってろや」
と、「怒り」を込めた鋭い目つきで睨みながら言った。
その睨みを受けて、切嗣達はその場から動けなくなり、ラディウスは「フン」と余裕のある笑みを浮かべた。
そんな彼らの様子を見た後、春風は仲間達を乗せたフライング・カーペットを操作して、その場から飛び去った。
それを見て漸く動けるようになった切嗣達は、すぐに春風を追いかけようとしたが、
「よせ、追う必要はない」
と、ラディウスは切嗣達に向かってそう命令した。
切嗣達はその命令を受けて、皆悔しそうな表情になったが、ラディウスはというと、
ーーテメェらは全員ぶちのめすの決定だからな。
という春風の言葉を思い出して、
「フフフ、楽しみにしているぞ」
と、再び余裕のある笑みを浮かべた。




