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ユニーク賢者の異世界大冒険  作者: ハヤテ
第15章 激闘、セイクリア王国

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第529話 春風の「想い」と……


 「そうさ、どうせ地球もこの世界も終わる。それを見届けたら、僕達は神々と共に『新しい世界』へと旅立つよ」


 そう言い放った切嗣に、リアナ、水音、翔輝は「許さん!」と言わんばかりに戦闘態勢に入った。当然、凛依冴、歩夢もリアナ達に続くように武器を構えて、ループスとヘリアテスは戦闘不能状態のモーゼスの側で、キッと切嗣達を睨んだ。


 しかし、春風はというと、リアナ達と同じように彼岸花・神ウチを構えているのだが、


 (……覚悟は、していたんだけどなぁ)


 と、天使となった切嗣達を見て、怒りと悲しみ、そして、後悔が入り混じったような表情を浮かべていた。


 確かに、春風は故郷である地球を救う為にこの世界に来た。


 しかし、その為に彼は召喚を行った側であるウィルフレッドら王族達だけじゃなく、教師の小夜子とクラスメイト達にまで暴言や嘘をついただけじゃなく、切り掛かってきた騎士達を相手に大暴れというとんでもないことをしでかしたのだ。

 

 それだけでも許されないというのに、その後はハンターとして活動しながらこの世界のことを見ていくうちに、やがて「この世界も救う」という想いに目覚め、様々な出来事を経て、しまいには「勇者」である小夜子とクラスメイト達以上の大活躍をしてしまったのだから。


 故に、この世界の人々、特にクラスメイトの中から、それを良く思わない者が現れるかもしれないと、春風は考えていた。


 そして現在、春風の目の前にその良く思わない者が5人も現れて、その中の1人から激しい怒りをぶつけられたのだ。


 (『裏切り者』か。そう罵られても仕方ないことをしたってわかってても、実際に言われるとしんどいなぁ)


 と、心の中でそう呟くと、


 「やんなっちゃうよ」


 と、ボソッとそう言って、「ハァ」と溜め息を吐いた。


 それが聞こえたのか、


 「な、何だ、そのセリフと溜め息は!? さてはお前、僕達を馬鹿にしてるのか!?」


 と、切嗣は顔を真っ赤にして怒鳴った。よく見ると、切嗣だけじゃなく他の天使になったクラスメイト4人も、怒りで顔を真っ赤にしていた。


 春風はそんな彼らを見て、


 (あ、しまった。つい口に出しちゃった)


 と、ハッとなると、


 「……ごめんなさい」


 頭を下げて謝罪した。


 『ふざけるなぁあああああっ!』


 それが、切嗣ら天使達の怒りに火をつけた。


 (あれぇ? なんかスゲェ理不尽なんだけど)


 と、春風が頭上に「?」を浮かべていると、


 「春風様……」


 と、彼岸花・神ウチからジゼルが小声で話しかけてきたので、


 「何? ジゼルさん」


 と、春風がそれに答えると、


 「あなたが何を考えているのかは、私にもわかります」


 と、ジゼルがそう返して来たので、春風は「あ……」と小さく呟いた。


 そんな春風に、ジゼルは更に話を続ける。


 「確かに、春風様は許されないことをしたかもしれません。そのことで、責任と後悔を感じてしまう気持ちもわかります。ですが、あなたには『大切なものを守る』という強い想いがあることも、私はわかっています」


 ジゼルのその言葉を聞いて、春風は「それは……」と小さく呟くと、


 「彼女の言う通りよ」


 と、今度は凛依冴が話しかけてきた。


 「師匠?」


 「春風。あなたは故郷を、大事なもの守る為に立ち上がった。でも、()()()()は違う。あいつらが考えているのは、自分のことだけ。特にあの裏部って子から感じるのは、醜く歪んだ『欲望』、それだけよ。あなたとは、根本的に違いすぎるわ!」


 と、目の前の切嗣を見ながらそう言った凛依冴に、


 「……そう、ですよね」


 と、春風が苦笑いしながら答えると、未だに顔を真っ赤にして怒っている切嗣が、


 「あ、ああ! あったまにきた! みんな、()()をやるぞ!」


 と、礼司達に向かって叫んだので、


 「()()か……」


 「お、やる気だね」


 「いいねいいね!」


 と、礼司、仁、月詠はやる気に満ち溢れ出したが、


 「……本気でやるの?」


 と、永恋だけはちょっと躊躇っている様子だったので、それを聞い切嗣は、


 「ああ、本気だ! さっきも言ったが、どうせいずれはこの世界も地球も消えてなくなるんだ! それが少し早くなるだけだ!」


 と、春風達に視線を向けたまま言い切った。


 その言葉に永恋は、


 「ハァ。わかったわ」


 と、溜め息を吐きながら言った。


 その後、切嗣は4人がいる空中へと浮かぶと、全員手を繋いで、ゆっくりと目を閉じて、


 『ハァアアアアア……』


 と、意識を集中させた。


 次の瞬間、切嗣達が出していた白いオーラが、彼らの頭上に昇ると、それらが1つなって、次第に白い輪になった。


 そして、その輪の中に別の輪が現れて、その輪と輪の間に何やら紋様のようなものが1つずつ描かれた。


 その奇妙な光景に、


 「な、何、アレ?」


 「何だ? 何かの攻撃魔術的なものか?」


 と、リアナと水音は頭上に幾つもの「?」を浮かべた。


 すると、


 「る、ループス、()()は……」


 「あ、ああ、まさか……!」


 と、ヘリアテスとループスが尋常じゃないくらいに震え出した。


 いや、正確には()()()()()と言ってもいいくらいだろう。


 とにかくそんな状態の2柱に、


 「お、お母さん、お父さん、どうしたの!?」


 と、ギョッとなったリアナが尋ねると、


 「止めろ! すぐに止めるんだ! ()()は……()()は攻撃じゃない!」


 と、ループスは怒鳴るようにそう叫んだ。


 その叫びを聞いて、春風達はすぐに切嗣達のもとへと駆け出し、


 「やめろぉおおおおおおおっ!」

 

 「やめてぇえええええええっ!」


 と、ループスとヘリアテスは悲鳴をあげた。


 だが、一歩遅かったのか、切嗣はチラッと春風達を見てニヤリと笑うと、すぐに前を向いて、礼司達と共に叫ぶ。


 『()()()()、発動!』


 


 


 

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