第505話 説教からの……
「まったく、お前という奴は!」
「あうぅ……」
それから春風は、ウィルフレッド達の救出中(?)にも関わらず、小夜子に思いっきり説教をくらってしまった。
「少しは反省しろ!」
「はい、すみませんでした」
と、そんなやり取りをする2人を見て、仲間達は皆、「ハハハ……」と頬を引き攣らせていた。
そんな時、
「あのー、ところでウィルフレッド陛下」
と、水音が「ハイ」と手を上げたので、
「ム、何かな水音殿?」
と、ウィルフレッドがそう返事すると、
「クラリッサ様とイブリーヌ様が見当たりませんけど、お二人はどうしたのですか?」
と、水音はウィルフレッドに向かってそう質問した。
言われてみると、確かにこの場には春風達を除いて、ウィルフレッド、マーガレット、ウォーレンの3人がいるが、娘であるクラリッサとイブリーヌだけが見当たらなかったので、春風達は「あ、そういえば!」と一斉にウィルフレッドを見た。
すると、ウィルフレッドとマーガレットは悲しそうに表情を暗くして、
「……脱出の最中に兵士や騎士達に聞いてはみたが、既に2人はモーゼスの手中にあるそうだ。本当はすぐにでも2人を助けたかったが……」
と答えると、
「その前にまた捕まっては意味がないからな、故に一旦城の外に出て、お前達と合流しようということになった」
と、その先はウィルフレッドの代わりにウォーレンがそう説明した。
その後、ウォーレンはルークやギャレット達の方を向いて、
「お前達、心配かけてすまなかった」
と、頭を下げて謝罪した。その謝罪にルーク達は、
「いえ、こうして大隊長……父上と再び会うことが出来て、本当によかったです」
「ああ、『処刑される』って聞いた時は、流石にハラハラしたぜ旦那」
「私も、同じくです」
「ええ、大隊長は私達にとって必要な存在ですよ」
と、皆、「よかった」と言わんばかりの嬉しそうな表情でそう言った。
そんな彼らの様子を、春風の仲間達がほっこりした表情で見つめる中、肝心の春風だけはというと、
(イブリーヌ様……)
と、自身の胸を掴みながら、辛そうな表情をしていたので、
「ハル……」
と、それに気づいたリアナが、ポンと春風の肩に手を置いた。
春風は心配そうに自分を見つめてくるリアナに、
「……大丈夫。大丈夫だから」
と、笑顔でそう言ったが、どう見ても大丈夫じゃなさそうな春風の様子に、リアナは更に心配になった。
その後、
「みんな、まずはウィルフレッド陛下達を安全なところまで連れて行こう。ボヤボヤしていると……」
と、春風は仲間達にこの場から離れようと言おうとしていると、
「見つけたぞーっ!」
という怒号が聞こえたので、春風達は一斉にそれが聞こえた方へと振り向くと、こちらに向かって走ってくる大勢の兵士達の姿が見えた。よく見ると、全員目が血走っているように見えた。
そして、春風達のもとに着くと、
「幸村春風! やはり貴様の仕業だったかぁ!」
と、兵士の1人が春風に槍を向けながらそう怒鳴った。
その言葉に春風は、
「え、何で俺!?」
と、驚いてそう尋ねると、
「惚けるな! 貴様がウィルフレッド陛下を操って脱走させるように仕向けたんだろ!? でなかれば、陛下が堂々と『脱走する』なんて言う筈がない!」
と、別の兵士が怒鳴りながらそう答えて、それに続くように、
「そうだそうだ!」
「貴様の仕業だろ!?」
と、他の兵士も春風に向かってそう怒鳴った。
あまりにも怒り狂いまくってる兵士達を見て、
「え、これ俺が悪いの!?」
と、春風が頭上に幾つもの「?」を浮かべていると、
「ホラ見ろ! お前が変な方法で脱出なんかするから、ウィルフレッド陛下が真似しちゃったんじゃないか! そしてその所為で、彼らはあんなにも怒り狂ってるんじゃないか!」
と、小夜子は兵士達を指差しながら春風を叱った。そしてそんな小夜子に続くように、仲間達も「うんうん」と頷いた。
その言葉を聞いて春風は「えぇ?」と首を傾げた後、
「す、すみませんでした」
と、兵士達に向かって頭を下げて謝罪したが、
『謝ってもゆるさーん!』
と、更に兵士達の怒りに火をつけてしまい、
(で、ですよねぇ)
と、春風はダラダラと滝のように汗を流した。
その時、
「やはり来たな、賢者春風とその仲間達」
という声が聞こえたので、春風達は「え?」と一斉に声がした方へと向くと、
「モーゼス!」
「フッフッフ……」
そこには、大きな白い翼を羽ばたかせて宙に浮くモーゼスの姿があった。




