第501話 王城内の「騒動」
お待たせしました、本日2本目の投稿にして、本編新章の始まりです。
そして、いつもより短めの話です。
セイクリア王国王都。
その中心にある王城内で、とある「騒動」が起きた。
「おい、見つかったか!?」
と、そこで働く兵士の1人が、かなり焦っている様子でもう1人兵士にそう尋ねると、
「そ、それが、そのぉ……」
と、もう1人の兵士は顔を真っ青にしながら、歯切れが悪そうに答えた。
そんな態度に苛立った兵士は、
「どうした! 一体何があったんだ!?」
と、怒鳴りながら再び尋ねると、
「だ、『脱走してるんだ』って言うもんだから、そのまま行かせてしまった」
と、もう1人の兵士は更に顔を真っ青にしてそう答えた。
その答えを聞いて、兵士は「な、なんだってぇ!?」ショックを受けると、
「ちょおっと待て! それは一体なんの冗談だ!? ていうか、なんでそのまま行かせたんだ!?」
と、もう1人の兵士の肩を掴んでゆっさゆっさと揺らしながらそう問い詰めた。
すると、
「だ、だって……」
もう1人の兵士は歯をギリッとさせて、
「だって仕方ないだろ! 堂々と目の前に現れて、『退屈だから、脱走してるんだ』って堂々と言われて、俺だって何がなんだかわかんねぇんだよ!」
と、怒鳴りながらそう答えた。
その様子に、兵士はギョッと驚いて肩から手を離すと、もう1人の兵士は膝から崩れ落ちて、
「ちくしょう! 何なんだよアレ!? あんなこと言う方じゃないのに! 『脱走』とは縁のない方だと思ってたのにぃ!」
と、床をドンドンと叩きながら、「うわぁん!」と泣き叫んだ。
そのあまりの様子に、
「な、何だ、この状況は!?」
と、兵士は戸惑いを隠せないでいたが、すぐに首を横に振るって正気に戻ると、まだ泣き叫んでるもう1人の兵士を置いてその場から駆け出した。
(く、何処だ! 一体何処にいる!?)
と、兵士は急いで「目的の人物」を探して王城内を走るが、目に映るのは、
「うえーん! うえーん!」
「うおおおおおおおん!」
と、もう1人の兵士と同じように床をドンドンと叩きながら泣き叫ぶ他の兵士の姿だった。しかも、よく見るとその中には騎士も混じっていた。
そんなあまりにもとんでもない状況に、
「な、何だこれは!? 一体、何がどうなってるんだ!?」
と、兵士はタラリ冷や汗を流して戦慄するのだった。
一方その頃、五神教会本部のとある一室では、
「……そうですか。そのようなことが……」
と、「天使」となったモーゼスが、配下の神官から報告を受けていた。
「いかがなさいましょうか?」
と、神官が尋ねると、
「放っておきなさい。彼らの目的はもうわかってますから」
と言って、モーゼスは神官を部屋から退出させた。
神官が出たのを確認すると、
「やれやれ、彼らは随分ととんでもないことをしますねぇ」
と、モーゼスは「ハァ」と溜め息を吐きながらそう呟いた。
その後、横の壁際に並んでいる者達を見て、
「君達にも、「ひと働き」してもらいますからね」
と、ニヤリと笑いながらそう言った。
そんなモーゼスに対して、壁際に並ぶ者達ーー10代後半くらいの少年少女達は、ただ無表情で黙っているだけだった。よく見ると、全員その瞳には光が一切宿ってなくて、ただ「闇」だけが広がっていた。
そんな彼らをよそに、モーゼスは窓の外を見て、
「さぁ、来るがいい『悪魔』達よ。ここで決着をつけようじゃないか」
と言うと、「アハハ」と狂ったように笑い出した。
どうも、ハヤテです。
というわけで、前書きにも書きましたが、今日から本編第15章の始まりです。
いよいよ終盤(?)に入ったこの物語、果たして主人公達に何が待ち受けてるのか?
彼らの活躍に、ご期待ください。




