間話51 リアナと「実の両親(幽霊)」
今日から本編はお休みです。
それは、リアナが「パワーアップ」を果たし、「天使」となったアッシュ達に勝利した、その日の夜のことだった。
戦いを終えて、リアナ達は勝利を祝う宴会を行なっていた。勿論、その間アッシュ達は動きを封じられた状態で、村にある倉庫の中に閉じ込められていた。
それぞれが酒を飲んだり美味しい料理を食べたりと、楽しいひと時を過ごしている中、リアナはというと、1人、村外れにある川辺に座り込んでいた。
「……」
無言で静かに流れる川をジィッと見ていると、
「リアナ」
と、背後で不意に名前を呼ばれたので、リアナは「ん?」と後ろを振り向いた。
「……母さん」
そこにいたのは、現在幽霊となっている実母のシルビアだった。シルビアはゆっくりリアナに近づきながら、
「どうしたの? 1人でこんなところに座り込んで」
と尋ねると、リアナは少し表情を暗くしながら答える。
「……ちょっとね、思い出したことがあるんだ。ハッキリか聞かれると、自信ないけど」
「? なぁに?」
首を傾げながら再び尋ねてきたシルビアに、
「ここだよね? 母さんが、私を逃した場所」
と、リアナが尋ね返すと、
「あ……」
と、シルビアはその時のことを思い出して、
「……ええ、そうよ。ここはね、私があなたを逃す為に訪れた場所。そして、私が最期を迎えた場所よ」
と、悲しそうな表情で答えた。
その答えを聞いて、リアナは「そっか……」と小さく呟くと、シルビアはリアナの隣に座って、
「ごめんね」
と謝罪した。
「え、どうして謝るの?」
と、リアナが尋ねると、
「だって、私もエルもあなたを置いて死んじゃったし、今のこの世界って『人間』ばっかりだから、その所為でリアナが嫌な思いしてるんじゃないかなって思って……」
と、シルビアは申し訳なさそうにそう答えたので、
「ああ、それなら大丈夫だよ! お父さんとお母さん……ああ、神様達ね、それと精霊の王様達や幽霊のジゼルおばあちゃんは、私のこと本気で愛してくれたし、私の正体を知っても、受け入れてくれた人間達もいたし……!」
と、必死になってシルビアを慰めた。その言葉を聞いて、
「り、リアナ……」
と、シルビアは泣きそうになったが、
「何より、ハルやアーデっていう大好きな人も出来たんだもん!」
という言葉に、シルビアはピキッとなって、
「ハル……幸村春風だったわね? 異世界から来た男の子の……」
と、表情を暗くしながらリアナ向かってそう尋ねた。
その質問……というより、シルビアのただならない雰囲気に、リアナはビクッとなって、
「あ、う、うん。そうだけど……」
と答えると、シルビアは更に表情を暗くして、
「確かもう、その男の子とキスしたんだよね?」
と再び尋ねてきたので、リアナは座り込んだ状態で後退りしながら、
「う、うん……」
と頷いた。
その答えを聞くと、シルビアは更に表情を暗くしながら尋ねる。
「で、その男の子って、あなたやアデレード姫以外にも、複数の女がいるんだよね?」
そう尋ねてきたシルビアのドス黒い雰囲気に、リアナは体をガタガタと震わせながら、
「う……うん」
と、恐る恐る頷くと、シルビアは「そう……」と呟いて、
「ゆるさぁん! 私の可愛いリアナというものがありながらぁ! 他にも女がいるなんてぇ!」
と、いきなり立ち上がってそう叫んだ。
それも、もの凄い怒りと憎しみを込めて。
そんなシルビアに驚いたリアナは、
「え、ちょ、母さん……!?」
と、声をかけると、
「……そうだね、許せないね」
というセリフが飛んできたので、リアナは「え?」とその方向へと振り向くと、
「と、父さん!?」
そこにはドス黒いオーラを纏わせた、実父のエルネストの幽霊がいた。
「え、ちょっと待って2人共! ハルをどうする気!?」
と、リアナがオロオロしながら尋ねると、2人は叫ぶように答える。
「決まってるでしょ!? その男の子が本当にあなたに相応しいかどうか見極めさせてもらうのよ!」
「そうだ! で、相応しくないとわかったら……!
「わ、わかったら?」
「「ただじゃおかねぇ! 幽霊の名にかけて、そいつを地獄の底へと叩き落としてやるんだぁあああああ!」」
と、ドス黒いオーラを全開にしてそう叫んだ両親の幽霊を見て、
「ちょ、父さんに母さん! お願いだから落ち着いてぇえええええっ!」
と、必死になって宥めようとしたが、
「「許さんぞぉ! 幸村春風ぁあああああああっ!」」
残念なことに、全く声が届いていなかったので、
「ああ、もう! 本当に落ち着いてぇえええええっ!」
と、リアナは頭を抱えてそう叫んだ。
どうも、ハヤテです。
というわけで、前書きにも書きましたが、今日から本編はお休みして、久しぶりの間章です。
こちらも本編に負けないくらいの面白い話を投稿していきますので、何卒よろしくお願いします。




