第488話 春風編49 「天使」モーゼス
突如、春風達の前に現れた、1人の純白の翼を生やした若い男性。
その男性を見て、春風は尋ねる。
「あなたは、モーゼス教主?」
その質問を聞いて、仲間達とフリードリヒは「え?」と頭上に「?」を浮かべていると、
「は、ハルッち、今、何て言ったの?」
と、恵樹が「何を言ってるんだ?」と言わんばかりの表情で、春風にそう尋ねてきた。
その質問に対して、春風も「何を言ってるんだ?」と言わんばかりの表情で答える。
「え、何ってケータ、この人、モーゼス・ビショップさんだよ」
その答えを聞いて、仲間達は皆、ポカンとしていると、
「お、おいおいハル、冗談やめろよ。こんな背中にデカい羽生やしたイケメン野郎が、モーゼス教主な訳ねーだろ」
と、鉄雄が「ハハハ」と笑いながらそう言ってきたので、それに続くように他の仲間達も、
『だよねー』
と、皆、笑いながらそう言った。
だが、
「……いえ、冗談なんかじゃないわ」
というセリフが飛んできたので、仲間達は頭上に「?」を浮かべながらそのセリフが飛んできた方向を見ると、
そこには真剣な表情で冷や汗を流すユリウスとアリシアがいた。
幾つもの「?」を浮かべる鉄雄達をよそに、ユリウスは口を開く。
「見た目はガラッと変わってしまっているけど、雰囲気でわかるわ。あの人は確かに、五神教会現教主モーゼスビショップよ」
と、タラリと汗を流しながら答えたユリウスに続くように、
「ええ、間違いありません」
と、アリシアもタラリと汗を流しながらそう言った。
その言葉を聞いて、仲間達は漸く理解出来たのか、
『エエエエエエエッ!』
と、皆、一斉に驚きの声をあげた。
すると、モーゼスと呼ばれた若い男性は、「クックック……」と笑って、
「流石は幸村春風。そして、断罪官小隊長ユリウスと、その部下にして裏切り者のアリシアよ。いかにも、私は五神教会教主モーゼス・ビショップである」
と、自己紹介した。
その言葉を聞いて、
「その姿、ウォーリス帝国を出てから、一体あんたに何が起きたんだ?」
と、春風が真剣な表情でそう尋ねると、若い男性……否、モーゼスも真剣な表情で答える。
「……帝国での一件の後、私はセイクリア王国に戻り、以降は誰にも会わないようにしていた。しかし、そこへ『あの方』が現れたのだ」
「あの方……て、『神』だろうな」
「ああ、そうとも。そして、『あの方』によって、私は人間から新たな存在へと生まれ変わったのだ。そう、神の僕たる『天使』にな。故に、今の私は五神教会教主であると同時に、『天使モーゼス』でもあるということなのだよ」
と、両腕を広げてそう言ったモーゼスに、春風達はゴクリと固唾を飲んだ。
そして、そんな春風達を前に、モーゼスは更に話を続ける。
「そして今、私がここへ来た目的は1つ。それは、幸村春風、貴様の抹殺だ」
「やっぱ、そうなりますよねぇ……」
「当然だ。しかし、その為にこのシャーサルに来てみれば……。フレデリック・レイクロフト……いや、フリードリヒ・ヴァイスハイト! まさか、ハンターギルドの総本部長の正体が、伝説の『始まりの悪魔』本人だったとはな!」
と、フリードリヒを睨みながらそう言ったモーゼスに、肝心のフリードリヒは落ち着いた表情で口を開く。
「その物言い、どうやら僕と春風君の戦いを知ってるみたいだね。ならば、僕がどういう存在か知ってるよね?」
そう尋ねると、モーゼスは再び「クックック……」と笑いながら答える。
「ああ、勿論知ってるとも。貴様が不老不死だという事実もな。ならば、まずは幸村春風とこの場にいる者達全員を皆殺しにした後、貴様を我が『神』に捧げるとしよう」
そう言い切ると、春風はムッとなったのか、
「……出来るものなら、やってみろよ」
と、未だに地面に座り込むフリードリヒの前に立つと、ポーチから先ほどまで振るっていた丸太を取り出して、それをモーゼスに向けて構えた。
モーゼスはそんな春風を見て、
「ほほう、『邪神』ヘリアテスの加護を受け、『始まりの悪魔』を倒した丸太か。いいだろう、ならばこちらも素晴らしき『武器』を振るうとしよう」
(『武器』……だと?)
と、心の中でそう呟いた春風を前に、モーゼスが指をパチンと鳴らすと、突然、モーゼスの目の前に光のゲートのようなものが現れて、そこから『とある人影』が複数出てきた。
その『人影』の一部を見て、ユリウスとアリシアは驚愕した。
「……え、ダリア!?」
「ルーク副隊長!?」
それは、ユリウスと同じ、断罪官の小隊長・ダリアと、大隊長ウォーレンの息子にして副隊長のルークだった。
更に、残った「人影」を見て、小夜子と鉄雄が驚愕した。
「な、愛島!? 深見!?」
「それに、近藤と遠山もいるぞ!」
それは、「勇者」として召喚されたクラスメイト達だった。
謝罪)
前回に続き、投稿後にすみません。
前回の後書きにも書きましたように、まことに勝手ながら、話を一部修正したり、文を少し追加させてもらいました。
本当にすみません。




