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ユニーク賢者の異世界大冒険  作者: ハヤテ
第14章 更なる「力」を求めて

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第433話 水音編29 そして、「真実」へ

 今回は、いつもより長めの話になります。


 白い水音の言葉に対して、怒鳴るように否定した中学時代の水音。


 全身から「鬼の闘気」と思われる青い炎のようなオーラを噴出させたそんな彼を見て、


 「お、オイ、落ち着けよ水音!」


 と、ループスは大慌てで宥めようとした。


 それに続くように、分身1号も、


 「そ、そうだよ水音君、落ち着いてよ!」


 と、全身を震わせながらも水音を宥めようとした。


 だが、


 「違う……僕がやった……僕がやったんだ」


 と、中学時代の水音は頑なにループス達の言葉を聞き入れなかった。そんな彼の様子を、


 (この様子、やはり何かあるのか?)


 と、白い水音は冷静な表情で見つめていた。


 そして、白い水音がそのことについて考えていた、まさにその時、


 「オイ、どうしたんだよ水音!?」


 というループスの声にハッとなった白い水音が、中学時代の水音の方へと振り向くと、


 「何だ? ()()ている?」


 中学時代の水音の体が、まるで壊れた映像のようにブレ始めていたのだ。


 「オイ、しっかりしろ!」


 「ど、どうしたの!? 水音君!」


 驚いたループスと分身1号が、必死になって中学時代の水音に声をかけたが、


 「違う……僕が、やった。何を? 決まってる……母さんを……傷つけた。ホントに? そうだ…‥僕が……どうして?」


 と、本人の方もかなり様子がおかしくなっていた。


 「ど、どうなってんだこりゃあ?」


 と、ループス戸惑いながらそう言うと、


 「恐らく、彼自身もよくわかっていないんだと思います。あの時、本当は何が起きていたのか? 本当に自分は、『力』を暴走させてしまったのか? そして、自分は本当に、母上殿を傷つけたのか? と」


 と、白い水音は冷静な口調でそう答えたので、それを聞いたループスは「マジかよ」と冷や汗をかいた。そして側で聞いていた分身1号も、ループスと同じように冷や汗をかいた。


 しかし、そんなループス達をよそに、


 「しかし、不味いですね」


 「「?」」


 「早く水音君をどうにかしないと、このままだといずれ彼自身が崩壊してしまう」


 と、白い水音がそう付け加えると、


 「ええ、そんな! どうしよう!」


 と、分身1号はショックであたふたしだした。


 すると、


 「それなら、ここは俺の出番だな」


 と、ループスが何故か自信満々に一歩前に出た。


 「ループス様、どうする気ですか?」


 と、白い水音が尋ねると、


 「こうするのさ!」


 と、ループスはダッシュで中学時代の水音に突進した。


 そして、中学時代の水音の側まで近づくと、


 「くらえ水音ぉ!」


 ループスは勢いよく前にジャンプして、


 「必殺、『ゴッド肉球』!」


 中学時代の水音の頬を、右前足の肉球でビンタした。


 ーーペシン!


 「あ……柔らかいぃ」


 と、中学時代の水音が気持ちよさそうにそう言った瞬間、全身から出ていた青いオーラが、一瞬で消え去り、それと同時にブレていた中学時代の水音の体も元に戻った。


 「フゥ。この技を使ったのは、リアナへのお仕置き以来だぜ。さてと……」


 と、スタッとその場に着地したループスがそう言うと、呆けている様子の中学時代の水音に向かって、


 「おーい、大丈夫かぁ?」


 と、尋ねた。


 その瞬間、中学時代の水音はハッと我に返って、


 「す、すみません、ループス様」


 と、ループスに向かって謝罪した。


 そんな中学時代の水音に、ループスが再び尋ねる。


 「で、俺達に何か言わなきゃいけないこと、あるんじゃないか?」


 「それは……」


 中学時代の水音は答えるのを躊躇ったが、やがて意を決したように口を開く。


 「3年前のことは、確かに、まだみんなに言ってない部分はあります。あの途切れた記憶の先で何が起きたのか、本当は覚えてないんです。突然目の前が真っ暗になって、気がついたらあんな状況になってて。ですが、確かにあの時、僕は『鬼の闘気』を発動させた記憶はあるんです。とても大き過ぎて、制御が上手く出来ない、あの力を。だから……」


 「自分が力を暴走させて、あの状況を作り出したと?」


 「……はい」


 表情を暗くしながらそう話した中学時代の水音。そんな彼に向かって、今度は白い水音が尋ねる。


 「水音君、君は、『本当のことを知りたい』とは思わなかったかい?」


 その問いに対して、水音はゆっくりと口を開く。


 「……正直に言うと、『知りたい』って思ったことはあるよ。だけど……」


 『?』


 「だけど、凄く怖いんだ。もしも自分が、本当に航士達と母さんを傷つけてしまったらとか、実は別のことが起きて、それがあの状況を作ったのだとか、それが自分にとって、もの凄く残酷なものだとしたらとか。そう考えたら、とても、怖くて……」


 そう話すと、中学時代の水音は頭を抱えて、その場に膝から崩れ落ちた。


 すると、そんな彼の側に、分身1号が近づいて、


 「だったら、僕と一緒に見ようよ」


 と、優しく話しかけた。


 「……え?」


 「あ、いや、だからね、水音君1人で知るのが怖いなら、僕と一緒ならどうかな……って意味なんだけど、駄目かな?」


 と、「アハハ」とぎこちなく笑いながら、分身1号がそう提案すると、


 「それなら、僕も付き合わせてほしいな」


 と、白い水音が中学時代の水音の隣にしゃがんでそう言った。


 「……いいの?」


 と、中学時代の水音が尋ねると、


 「ああ、僕だって『桜庭水音』なんだから、僕も何が起きたのか凄く知りたいんだ。そして、知った先で君が苦しい思いをするというなら、その時は僕も一緒に苦しむよ」


 と、白い水音は真剣な表情でそう答えたので、


 「オイオイ、俺を仲間外れにすんなよな」


 と、ループスも話に入ってきた。


 その時、


 「あ……」


 目の前に青黒い人型の「何か」が現れた。


 その姿を見て、中学時代の水音は静かに立ち上がると、ループス達と共に青黒い「何か」に近づいて、


 「僕は、もう逃げないよ。だから、僕達に『真実』を見せてくれ」


 と言って、スッと右手を差し出した。


 それに対して、青黒い「何か」はその手に触れると、小さく呟く。


 「ーーーーー」


 その後、中学時代の水音達は「真実」を見る。


 「止めろ、陽菜ーーーー!」


 それは水音のこの言葉から始まった。


 「止めろ、陽菜を、()()()()()()()()ぁあああああっ!」

 


 

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