第381話 それぞれの占いへ
「それでは、早速準備を始めますので、皆さん、大変申し訳ありませんが、ちょっと手伝ってください」
と、エスターはそう言うと、春風達に指示を出しながら、占術師の専用スキルである「占術」の準備に取り組んだ。
といっても、そこまで大きなものではない。単純に、テントの中央に大きなテーブルを置き、その上にエルードの「世界地図」と、エスターが「占術」に使う道具を配置するというものだった。
そして、全ての準備が終わると、
「では、これより『占術』を始めます」
と、エスターが「占術」開始を宣言した。
世界地図と「占術」に使う道具、水晶玉と羽ペンが置かれたテーブルに、春風達を含めた大勢の人達が取り囲む。
そんな状況の中、エスターが最初に指名したのは、
「まずはあなたです、リアナさん」
リアナだった。因みに、春風達は既にエスターへの自己紹介は済ませてある。
エスターに指名されて、リアナは「はい」と一歩前に出ると、
「失礼します」
と、エスターはそう言って、左手でリアナの手を握った。
その後、
「目を閉じて、意識を集中してください」
と、エスターに指示されて、リアナはそれに従ってゆっくりと目を閉じた。
そして、エスターは残った右手で水晶玉に触れると、自身も目を閉じて、
「専用スキル、[占術]発動」
と小さく呟いた。
次の瞬間、エスターが触れた水晶玉が白く光り輝いた。
それを見て、周囲の人達が「オオ……」と声をあげると、光はスゥッと消えた。
そして光が消えた後、エスターはゆっくり目を開けると、リアナの方へ向いて、
「お答えしましょう。あなたがこれから向かうのは、既に滅びた小さな『村』。そこであなたは、とある『再会』を果たし、その後大きな『試練』に挑むことになります」
「再会と、試練?」
リアナはそう言って首を傾げると、エスターは水晶玉から手を離し、代わりに側に置いた羽ペンを手にとって魔力を込めた。
そして魔力を込めたその羽ペンで、
「『村』の場所は、ここです」
と、世界地図のとある箇所に印をつけた。
周囲の人達がその印がついた場所を食い入るように見つめる中、エスターはリアナから左手を話すと、
「次はあなたです、水音さん」
と、今度は水音を指名した。
水音は「はい」と返事をすると、リアナと同じようにエスターに左手で手を握られて、目を閉じるように指示された。
その後エスターは羽ペンを置いて、再び右手で水晶玉に触れると、目を閉じて「占術」を開始した。
すると、再び水晶玉が光り輝いた。今度は青い光だ。
やがて光が消えると、エスターはゆっくりと目を開いて水音の方へと向き、
「お答えしましょう。あなたが対峙するのは、深い悲しみや怒り、憎しみを宿した、黒い大きな『獣』。その獣と戦うことになった時、あなたは『最も向き合いたくないもの』とも対峙することになります」
「最も向き合いたくたくないもの?」
そう言って、水音が頭上に「?」を浮かべる中、エスターは再び水晶玉から手を話して羽ペンを手に取って魔力を込めた。
そして、
「『獣』がいる場所は、ここです」
と、エスターはリアナの時と同じように、地図のとある箇所に印をつけた。
それを見て、
「オイオイ、帝国の近くじゃねぇか」
と、ギルバートがそうぼやくと、
「最後はあなたです、春風さん」
と、エスターは最後に春風を指名した。
「……はい」
と、春風はそう返事すると、水音と交代する形でエスターに左手で手を握られた。
そしてゆっくりと目を閉じたのを見て、エスターは右手で水晶玉に触れた後、自身も目を閉じて、「占術」を開始した。
すると、水晶玉は今度は赤く光り輝いた。
やがて赤い光が消えると、またエスターはゆっくりと目を開けて、春風を見る。
「お答えしましょう。あなたが挑むことになるのは、『継承の試練』。その『試練』に挑む際、あなたはご自身の『力』の意味について知ることになるでしょう」
「力の、意味?」
と、春風が首を傾げると、エスターは三度羽ペンを手にとって魔力を込めて、
「『試練』の場所は、ここです」
と、地図の「とある場所」に印をつけた。
「……え、ここ!?」
そこは、春風が知っている場所だった。




