第362話 ひと騒動の後
結局、その後はもの凄くカオスな状況が続いてしまった為、国王、皇帝、女王の3人の命令によってどうにかその場は解散となった。
皆、それぞれ自分達の陣地内で一息入れる中、春風はというと、ウォーリス帝国の陣地内にある自分のテントの中で、疲れきった表情をしていた。当然、巫女(異国のもの)服姿のままだ。
「あのー、もう着替えたいんだけど……」
と、春風が恥ずかしそうにそう言うと、
『お願い、もう少しだけ!』
と、仲間達から「待った!」をかけられていた。特に、リアナ、歩夢、イブリーヌ、ジゼル、凛依冴、ルーシー、美羽、アデレードは着替えてほしくないのか必死な様子だった。
するとそこへ、
「よう」
と、ギルバート、ウィルフレッド、クローディアがテントの中に入ってきた。
春風は3人を見て、
「ギルバート陛下、そちらの方はもういいのですか?」
と、ギルバートに尋ねると、
「ああ、みんなだいぶ落ち着いてきたから、今はしっかり休ませたところだ」
と、ギルバートは親指を立ててそう答えた。それに続くように、ウィルフレッドとクローディアも、「同じく」と頷いていた。
それを聞いて、春風は「そうですか」と胸を撫で下ろすと、
「あのー、出来ればもう着替えたいので、陛下達から許可を頂きたいのですが……」
と、頼もうとしたが、
「オイオイ、ちょっと待てよ。俺らまだ見せてもらってないぞ」
と、ギルバートからも「待った!」をかけられた。
「え、何をですか?」
と、春風が再びギルバートに尋ねると、
「決まってるだろ、お前の『舞』だよ。『神に捧げる』っていう」
と、ギルバートはそう答えたので、
「……はい?」
と、春風は首を傾げた。
すると、それまで黙っていたウィルフレッドが、
「前に水音殿から聞いたぞ。其方は一度、その姿で『舞』を踊ったことがあるとな」
と、言ったので、
「ちょ、水音! 一体どこまで喋ったの!?」
と、驚いた表情で水音にそう尋ねると、水音は「あ、やべ!」と言わんばかりにそっぽを向きながら口笛を吹いた。
更に、
「あ、そういえば俺も聞いたことがあったわ」
と、ギルバートもそう言ったので、
「み、水音ぉ!」
と、春風はキッと水音を睨みつけた。当然、水音はそっぽを向いて口笛を吹いていた。
すると、
「おい」
「ん?」
と、春風が振り向くと、すぐ側にクローディアがいた。
クローディアは春風の肩を掴むと、
「聞かせろ」
と、女性とは思えないくらいの低い声でそう言ってきた。
「あ、あの、何をでしょうか?」
春風は滝のように汗を流しながら、恐る恐るそう尋ねると、
「決まってるだろ、今ウィルフレッドらが言ってたことだ! 何をどうしたらお前がその姿になってその『舞』とやらを踊ることになったのか、というか、何故、男のお前がそんな格好をしなければならなくなったのか、一字一句包み隠さず全部教えろぉ!」
と、クローディアは春風の肩を掴む力を強めて、ユッサユッサと揺すった。
「え、ちょっと、待って、ていうか、誰か、た、助けて……!」
と、春風は周囲に助けを求めたが、
『聞きたい!』
と、皆さんそう言わんばかりに目をキラキラと輝かせていたので、
「ええい、ちくしょう! わかった、わかりました! 教えますので、手を離してください!」
と、春風は観念して話すことにした。
それを聞いた瞬間、ギルバートらを含めた仲間達は、皆一斉に聞く態勢に入った。
何故か、小夜子とクラスメイト達、そして、大手2大レギオンのリーダーであるヴァレリーとハンクもいた。
それを見て春風は「ぐぬぬ、いつの間に」と小さく呟くと、気を落ち着かせようと深呼吸して、
「……これは、ある国の小さな村でのことなんですけど……」
と、説明を開始した。




